まさに触らぬ神に祟りなし。
怪談めいた何かを求める者と、這い出てくる隙を窺っていたモノが合致して起きた、不思議だけど確実な惨状。
物語としても面白かったですが、断片的な情報を追っていくような入れ子構造も面白かったです。
すべてが伝聞で、その隙間に情報がこぼれ落ちている可能性もあるという余白が想像力をかきたてます。
最後まではっきりとしない形もホラーの結末として楽しめました。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
ちょっと自分の考えを全面に出しすぎたせいで、最後の音声記録でベラベラ喋りすぎた感もありますが…情報の空白と問いかけと自分なりの答えを、それなりにまとめられたと思います。
作品ページを最初に拝見した際、一事件のドキュメンタリーをあしらった短編としては章が多すぎるんでは、と勝手に判断したんですが w、通して読むととても緊密な構成で、終始緊張感にあふれていて、かつしっかり語るべきもののイメージへと肉薄していく、ナイスな展開だと思います。
呪いとか祟りの中身となるべきものがないのに怪異が起きる、というタイプの話は、実は私も書いたことがあるんですが(ネタバレを避けるためにタイトルは申し上げません……けど、消去法でバレるか w)、あの不条理感をまざまざと現出させるのは難しいですよね。本作の場合、その「存在のおかしさ」というのはよく出ていると想うんですが、私のように「そういう怪談もあるよね」といくらか免疫が出来ている者としては 笑、あとづけの説明がややくどいかなという気はします。「こんな怪異、起きるはずがないのに」というその一点だけを指摘したら、読み手にはただ余韻に浸ってもらうだけでええんではないかとも思います……けど、メタ的エンディングを入れたかったとのことですので、まあこんなものかな、とも。そこは単純に読み手の個人差でしょうね。
怪談としては充分に怖い話になっていると読みましたが、まだもっと怖くなりそうな感じは受けました。可能性があるとするなら、でっちあげを語って(結果的に)知人を自殺に追いやった大学生、彼の顛末はどうなったのか。やっぱり首を吊るしかないんじゃないかとも思いますけど……それか錯乱ぶりをじっくり描くとか……その周囲の人間もおかしくなっていってる様子を点描するとか? まあ長くなるのもあれなんで、以上をごく短い文にまとめて広がりを匂わせるだけにとどめる、とかですかね。
何はともあれ、作品として見ると、文章の作りが意欲的で、まとまりのよさもなかなかだと思います。本作はもうはっきり「怪談」でなく「短編小説」の領域ですね。また読ませてください。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
そうですね…目撃証言とか関連資料をまとめちゃえば目次はスッキリするんですが、このバラバラさ加減がなんというか「いかにも記録として作りかけで途中で終わってしまった感」が出ていいかなと思いました。
今改めて読み直してみると最後の音声記録はたしかにクドイかもしれませんね。「『幽霊ってなんだと思いますか』って問いかけておきながら、ベラベラ喋りすぎでは?」って感じもしますし…ただ情報がなさすぎると本当に「結局なんなんだこれ」ってなりそうで(そういう何も分からない気持ち悪さからくる怖さもあると思いますが)。仰られている通り、すごく難しかったです。
ご指摘ありがとうございます。
配信者が自殺してから、野口■■氏がおかしくなって音声記録を残すまでが少し駆け足気味な感じがしますので、また考えてみようと思います。
文章の構成は自分の好みに振り切った報告書(某財団)もので、ぶっちゃけ「ウケない」だろうなと思っていましたが、楽しんでくれた方がいて嬉しいです。
改めて丁寧なコメントを書いてくださり、ありがとうございます。
また、何かありましたらよろしくお願いいたします。
拝読。
最後に音声データを持ってくる構成はいいと思います。
このシチュだけでわりとゾクゾクできましたw
ふううむ。
まずよい点から先に書いておくと、「ホラー読者を狙い撃ったホラー」という着眼点はとてもいいですね。私はぶっちゃけホラーを楽しめるタイプの人間ではあまりない(特にこうやってチェックしながら読んでる時は)なんですが、双町さんの読者にはたまらないものがあると思われます。なかなかこういう作品は少ないんじゃないでしょうか。
形のない、恐怖の具現化というそれの正体も、まあ蝶の時点でそうだろうなと想像はしていましたが、最後の章の言及の仕方が素晴らしく、納得のいくものでした。得体の知れなさとのバランスもよかったと思います。
指摘点を上げるとすれば、まず恐怖体験としての踏み込みが足りないこと。
このネタはもっと掘り下げられるはずです。なんせ想像した恐怖像は全て具現化するんですから。
ここの部分をもっと深彫りできるとすれば、メモ②.txt(最終更新 2022/08/31)ですかね。ここで記者が見たものは、はっきりと言及されていませんが、記者が何を求めたのか、そして「それを見た」ということについては、一歩踏み込んで描写した方が恐怖の深みは増すはずです。例えば記者の考える「この事件の推理」を書いておいて、きっちりそのままに再現される。なんならその推理こそが最悪の事態を呼んでしまったことにしてもいいわけです。「増殖性」なんて情報はそこまで一切なかったんですから。誰かが「想像した」ことで「増殖してしまった」方が、筋が通るし怖いんじゃないかな、と。つまり、音声情報で確定した内容について、ここである程度触れておいた方が効果的かな、ということです。
もう一つは、インタビュー記録(一部抜粋):2022/08/11 ですかね。
ここの元住人の話は、もう一工夫できる気がします。「何も話したくない」という気持ちばかりでなく、それ以上の手掛かりを含めていいと思いますね。
その村の住人が虚形について知っていたなら、「それについて思う」ことさえタブーになっていても不思議ではありません。山が禁山になっていたとか、意図してもう一つの山を有名にしたとか、「そもそも当時は山に名前をつけなかった」なんて話があれば、よい伏線になるのでは、と感じました。「死んだ者に会える」というのも、外部の人間が勝手に侵入して流れた噂である方が地元民の感覚としては整合性が取れます。「死んだ者に会える場所」とか、逆に聖地くさいイメージですから。
あとは、村が消えた理由自体が、この虚形に起因してる(ように推察できる)感じがどこかにあれば、なおよしだったかな、とか。ちょっとすぐには思いつきませんが、これも語らせるならここかなと思われます。
総括としては、中盤まではともかく、終盤は独特の怖さがあって面白かったです。
ただ、もっと怖くも出来そうなので、ブラッシュアップを期待したいところですね。それでも星3は十分に出せます。構成も読みやすく、よかったと思いますよ。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
ぶっちゃけココの文章と「若干メタい描写(文中のセリフが急に自分に話かけてきたら怖いよね、みたいな)を書きたい」という思いつきから、この話はスタートしました。その分ふだんホラーをあまり読まない方からすると「これで終わり?なんか微妙」となるかもしれません。そのせいで舞台設定に悩みましたが、なんとか形になって良かったとホッとしています。この音声記録は一番魅せたい(?)ところですし、そう言っていただけて嬉しいです(というかココまでの印象が仮に良くても、ココでコケてたら多分凹んでました)。
色々とご指摘とご提案ありがとうございます。
ひとまずパッと思いついたものはちょろっと直しましたが、その他は話の設定を少し変える必要がありそうなので、また時間をかけて考えていこうと思います。特に旧■■村に関しては自分の中でも設定がまだフワフワしてますので…
丁寧なコメントを残してくださり、大変参考になりました。
改めて、ありがとうございます。