第4話 歓楽街
『アルク』
職業→剣士レベル4
破壊力→G
耐久力→G
敏捷力→D
技術力→F
魔法力→G
これが現在の俺の『ステイタス』だ。魔物を倒すと経験値を獲得して、冒険者カードに反映される。ゲームのシステムだったから、この世界にはないと思っていたけど、ここら辺も再現されているらしいな。
職業レベルが100まで上がると職業が『ランクアップ』するという。
剣士から剣豪とか、特殊条件を達成すると新しい職業に『ランクアップ』できる。過去には剣聖なども生まれており、その人は英雄と呼ばれるほど強いらしい。
とりあえず今はレベルを上げれば強くなるってことだけ覚えていればいいな。
「それにしても、意外と戦えるな」
戦闘経験自体は村近くの山にいた魔獣で積んでいる。あの魔獣たちもなかなか手強かったけど、魔物と比べると弱いな。
魔獣は罠に引っかかってくれるから、意外と楽だったりする。だけど迷宮では魔物の質も量も異常だった、本当にまだ上層なのか疑うレベル。
「それにしても、広すぎだな……迷子になったら終わるぞ」
迷宮を改めて観察する。壁と天井は開けていて、視界は良好だった。壁質は見たことのない触り心地で、どこかザラザラとしている。何より俺の攻撃ではビクともしない。
あのオーク達の攻撃で削れていたので、案外脆いのかと思ったがどうやらそうではないらしい。おそらく『破壊力』がGと貧弱だからだろう。
地面を破壊したら下の階層とかに行けたりするのだろうか。正直好奇心があるけど、十中八九死ぬだろうから試せないな。
異世界に来てから好奇心が旺盛になった気がするな、やっぱり未知が面白いからだろうか。この世界には俺の知らないことが無数に存在している。
「……呑気に考えてたら、狼さんのご登場か」
『ガルルルルルル……!』
狼っていうにはデカすぎる黒色の大狼が一体。体長は2Mほどはあるんじゃないか、それに鋭い爪は人を殺すために存在するような鋭利な形をしている。
更には後ろに子分達もいる。白色の狼、大狼の半分ほどの体長だが爪は十分な殺傷能力を持っていそうだ。
(これは……いきなり難易度が上がったな……)
迷宮では常に人数不利を押し付けられる、数とは絶対というのが迷宮の常識だった。オークなどの鈍足の魔物相手なら、瞬殺することで無理矢理タイマンに持っていけた。だが、目の前の魔物はそれを許してくれないだろう。
じわじわと包囲網を敷かれている。不動を貫く大狼と小狼は俺を囲んでいく、腰を深く落として戦闘準備に入る。
『ウオオオオオオオンンンンン!!』
大狼の咆哮と同時に戦闘開始の鐘は鳴り響いた。まずは小狼の突貫だった、間合いに入った瞬間に斬り捨てるが囮だったことに気づく。
背後から大浪の突進音。地面が抉れる音と共に、跳躍してくる魔物。抜刀術は使えない、ならば回避あるのみ。
身体を後ろに半回転させる。無理矢理にでも狙いをずらすためだったが、服を爪が切り裂いて鮮血が飛んだ。
薄皮一枚ってところか。傷も深くないし、全く問題ない。俺は大狼の強襲を耐えきったのだ、だが問題はそれからだろう。こんな攻撃を何度も喰らえば、流石に死ぬ。
短期決着が望ましいが、小狼がウザすぎるな。やはり雑魚から片付けるべきだ、俺は発走する。
「まず、一匹」
小狼は大したことがない、速度も並で攻撃も見切れる。雑魚退治を始めた俺を見て、大狼は急接近してくる。大した仲間意識だが、先程の奇襲とは違う。既に抜刀術の準備に入っていた、素早く刀を抜いて魔物の瞳を斬り裂く。
『──グオオオオオオっ!?』
「目が潰れたら、あとは楽勝だろ。一の技、雷霆」
痛みに悶えている魔物に即座に止めを刺した。雷流派の弱点は溜めが必要なところなんだよな、腰を深く落として集中する必要がある。そのため複数が相手同時に攻めてきたり、俺より速い敵なら余裕で負ける。
だが準備が終わったら、俺は誰にでも勝てる自信がある。
「さて、親分は死んだ。あとはお前らだけだな」
刀を小狼に向ける、怯えた表情を感じるな。ある程度の知性は持ち合わせているらしい、俺は容赦なく剣を振り抜いた。
ドロップアイテムを集めながら、俺は帰宅の準備を始める。薄皮一枚とはいえ、怪我を負ってしまったし何よりこれ以上先に進んだら道に迷いそうだった。
「……よし、初日にしては上々。よく頑張った、俺!」
自分を褒めながら俺は地上を目指して、移動を始めた。
⬛︎
酒場『アルダンス』という場所には冒険者が多く集まる人気店だった。ギルド近くに店舗があって、お酒の種類と店員の可愛さから連続で通う者も多い。
「……うま、うま、うまぁぁぁぁい!」
そんな中に飯を貪る、男が一人。そう俺です、流石に地上に帰る頃にはお腹の虫が鳴り止まなかった。ちなみにドロップアイテムはなかなかの値段で売れました、宿屋に泊まれる料金は手に入って安心した。
さて、俺が食べているのは肉料理なんだけども。これも魔獣肉が使われているようで、肉汁が溢れて止まらないのだ。魔獣の肉は筋肉質だと思っていたけど、しっかり調理すれば柔らかくなるようだ。
思い出すのは焼き鳥屋の店主。あの人にはもう一度会って、次はちゃんとご飯を買いたいものだ。それな焼き鳥が恋しいというのもある。
「エールもう一杯!」
「エールですね〜かしこまりましたー」
酒場なのだから、もちろんお酒もある。肉を一気に流し込む快感には誰も抗えないだろう。
そして食事を終えて、俺は宿屋にいた。どこにでもある宿屋なんだが、お風呂が付いている素晴らしい宿屋さんなのだ。流石に怪我してしまったので、しっかりと水で洗い流しておきたい。
鏡の前に立つ。この世界では髪の色はカラフルな人間が多いため、黒髪はなかなか珍しいようだった。たまに視線を感じるくらいには。
お腹の傷はそこまで深くなかった。出血も地上に帰る途中には止まっていたし、治療院とかに行かなくてもいいならよかった。
この世界の治療は魔法を使って行われるものと、薬を使って行われる民間療法がある。前世と比べると医療はあまり進歩していない、だが回復魔法という存在が人間の死亡率を抑えていた。
ま、魔法ってすげえ。だがその分掛かる料金は高額になってしまうのだ、おそらくアリスも母親を回復魔法をお願いして借金したのだろう。
「……治ったのかね、今更だけど無責任なことしたな」
絶望から僅かな希望を与えてしまった。それが裏切られた時、彼女は傷ついてしまうだろう。どうにか治ってくれてるといいのだが、俺はベッドの上で目を瞑る。
「……様子、見に行こうかな」
俺は寝ようと思ったが、無性に気になってしまいベッドから起き上がった。一応自衛のために刀を持ち歩く、宿屋から出ると外は真っ暗だった。
「月が綺麗だな、故郷だと星も見えたんだけど……」
王都は明るい、星は僅かながらにしか見えなかった。俺は賑わっている王道を進んで、路地の奥に入っていく。前回は謎店主おじさんがいた通り道だ、でもそこには店舗はなかった。
「……また、会えるかな。謎店主おじさん」
今度は財布を満杯にして行かないと。俺は前回まで店舗があった場所に手を合わせてお祈りした。
さて、記憶通りならもう少しで歓楽街に出るんだけど。しばらく歩けば眩い光が路地裏から差し込んできた、そこに向かうと夜の街に相応しい姿がそこにはあった。
際どい服装をした女性、どこか酔っ払った男達、更には夜だというのに眩い光を放っている中央道。
「……ここが、歓楽街か。な、なんか……エロい雰囲気だ!」
そうとしか言いようがない。客を呼んでいる女性は化粧が施され、露出度の多い服装をしている。道を歩く人は冒険者も多く、隣には女性を侍らせている。
男の夢がそこにはあった。
俺が求める浪漫も、もしかしたらそこにあるのかもしれない。もう十五歳だ、俺は成人している。だから店に入っても、いいよね?
「──アルク、さま?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます