【#7】アリアの師匠を探して

堕血街だけつがい・第二区】


 アリアを連れて、ミナス教会を出た後。


「ねぇ、アリアさん。何かバルケイン殿を追える手がかりはないかな?」


 俺は答えは分かりつつも、一応本来の流れに従って聞いてみる。


 すると、アリアさんは首から下げていた例の十字架を手に取って言う。


「おそらく、このタリスマンが導いてくれるはずです」


 それを見て、イフはぼそっとつぶやく。


「……そちらは”聖職者のタリスマン”ですか」


「ハイ。このタリスマンは師匠せんせいからもらった物でして、聖職者の魔力に反応するのです。この街に入ってからは反応し続けてますから、バルケイン様がここにいる確率は高いかと!!」


 希望に満ちた目で話すアリアに、俺はコクリと頷いて言った。


「なるほどね! それじゃ、アリアさん。反応が強くなったら教えてね?」


「わかりました!」 


 それから俺達三人は、教会から続く街道を歩き出す。この辺のダークゴブリン達は片づけた。となると、次に出てくるのは──。


「ギィ!!」「ギィ!!!」


「お二人とも!! 敵襲です!!」


 空に浮かぶ影を指差して、アリアが鋭く叫ぶ。


 そこに現れたのは一つ目のコウモリ──”マッドネス・バット”の大群。


 堕血だけつによって精神がイカれた魔女が造ったモンスター。魔法生物らしく、黒魔法による光線で攻撃してくるのが特徴。


「ここはワタシにお任せを!! ──主よ、光の導きを! 【ライトニング・アロー】!!」


 アリアは魔法を素早く詠唱して、手元に光の弓矢を出現させた。


(おぉ、すげぇ……!! 本物の魔法だ!!)


 初めて見る魔法に、つい大興奮してしまう。ここはせっかくだし、アリアの活躍を見ておくか。


けがれし者共よ、滅しなさい!!」


 アリアは力強い口調で告げて、空に向けて光の矢を連射する。その魔法は見た目から確かな威力を感じた。だが──。


「キィ!!」「キィ!!」


「あ、あれ!? 当たらない!? くっ!? なんて素早さなのでしょう……!?」


(……


 見事に不安的中。アリアの放った矢は、完全に外れまくっていた。


 実はこれも”原作通り”なのである。


 なにしろこのアリアというNPCは命中率が異常に低い事で有名なのだ。


 そのせいでストーリー的には真面目なキャラなのにも関わらず、プレイヤーからは『ポンコツシスター』とアダ名をつけられている。 


 しかし、まさかそんな所まで同じだったとは。いや、原作再現ではあるんだが……。


 とりあえず、このままだとキリがない。


「アリアさん。ボウガンを貸してもらっていいかな?」


「え!? か、構いませんが……ボウガンだと魔法より当てるのが難しい気がしますよ」


「まーまー♪ わたしにお任せあれ!」


 俺はアリアからボウガンを受け取ると、空を飛ぶマッドネス・バット達に狙いを定めた。そして──。


「それ!! それ!! それーーーーー!!」 


「「「「「「ピギ~~~~~!?」」」」」」


 一匹につき、一本。マッドネス・バットの一つ目に矢を当ててやった。一つたりともミスショットなし……絶好調だ。


「よし、これでいいですね」


 俺はふぅーっと一息ついて、ボウガンをアリアに返却する。


 射撃を目の前で見たアリアは、大きく目を見開いて慌てふためいた様子で言ってくる。


「あ、あの……すごい腕前ですね!? もしかしてロゼルタさん、射撃が得意なのですか!?」


「ま、まぁ、いっぱい練習したので慣れてはいますね」


「なるほど! さっきの動き、参考にさせてもらいます!!」


 そんな俺に向けて、イフがまたジーっと怪しむように見てくる。


「……やはり不思議ですね、ロゼルタ様は。まだ旅を始めたばかりなのに、ここまで戦い慣れしているとは。このような神人カミビトは初めて見ます」


「い、いやぁ~、そうかな~~!?」


 原作のゲームでやったところだからね!! ……なんて言えるワケないわな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る