【#6】NPCのシスターに会ってみた

堕血街だけつがい・第二区】


「いやぁ~~、やっぱいいとこだなぁ~~♪」


 そう言いつつ、物陰から飛び出してくるゴブリンを槍で突いていく。ここでたくさん死んだのもいい思い出だ……。


 そんな風に街中を突き進んでいると、少し外れたところに古びた教会があった。入り口の方には女神・ミナスをたたえるマークが描かれている。


 そちらを見て足を止めた俺に、イフは少し首を傾げて聞いてくる。


「ロゼルタ様、どうされました?」


「いや、そういえばNPCとのイベントあったな……って思って」


「NPC……? イベント……?」


 やべっ、また口が滑っちゃったよ。ゲーマーゆえの悪い癖だな……。


「ま、気にしないで!! とにかく、あそこ入ってみよ!!」


「……まぁ、いいでしょう」


 そうして俺達はミナス教の教会へと入っていく。


◇◆◇◆◇


 ギィ~~っと木の扉を開けると、ボッと中の灯りが点いた。


「止まってください!!」


 声のした方を見ると、ボウガンを構えたシスターが立っていた。


 まっすぐ伸ばしたショートヘアーの茶髪。可愛らしい緑色の瞳。

 ミナス教会の青いシスター衣装に身を纏っており、見た目は大人と子供の間のような感じだった。


 彼女は油断のない目つきで俺達を見ながら、ボウガンの引き金に指を掛けながらいう。


「──そのまま!! あなた方、目を見せてください!! 堕血だけつに汚染されているか確認します!!」


「まぁまぁ、落ち着いて。シスターさん?」


 俺は両手を上げて、敵意がない事を示しながら言う。


「わたしは神人カミビトのロゼルタ、こっちは祈女イノリメのイフだよ。わたし達は堕血だけつには汚染されてないから安心して?」


「!? 神人カミビト様!?」


 ふぅっと一息ついて、茶髪のシスターはボウガンを下ろす。彼女の足は少し震えていて、本当は怖がっていたのが見て分かる。


 やがて、シスターは礼をしてから言った。


「申し訳ありません、ロゼルタさん。ワタシはミナス教のシスター・アリアと申します。まさか神人カミビト様とは思わず、大変な失礼を……」


「いえ、お気にならさず~♪」


 俺は気楽な感じで返して、原作の選択肢を思い出しながら聞いた。


「ところで、アリアさんはここで何を?」


 アリアは真剣な表情で答える。


「ワタシは行方不明の師匠せんせい・バルケイン司祭を探すため、ここまで来ました。道中に聞いた話によると、ここで消息を絶ったらしくて……」


「……なるほど」


 ここも原作通りってワケか。まぁ、俺としてはここの返事は決まっている。

 

「それじゃ、わたしもそのバルケイン殿を探すのを手伝おっかな!!」


「!! ホントですか!!」


 嬉しそうな顔で返事してくるアリア。その後、彼女は首にかけた十字架を大切そうに握りしめて言った。


「感謝します!! 外には危険な怪物もたくさんいますから、一人で探すのも不安だったんです! ──あぁ、これも女神・ミナス様が引き合わせてくれた縁ですね!! 流石はミナス様です!!」


「う、うん。そうかもね……?」


 このアリアというシスター。原作では熱狂的なミナス教徒であり、この世界でもそれは同じようだ。


 実際に会ってみると、やっぱりちょっと怖いな。


 まぁ、ミナス教に害をなさない限りは敵対しなかったはずだから、まだ気楽に接する事の出来るNPCではある。


 そんな俺達の会話を静観していたイフが、ジトーっと目を細めて言葉で刺してくる。


「ロゼルタ様。頼みを引き受けるのはいいですが、あなた様の使命は浄化の旅を進めることで──」


「わ、わかってるよ!?」


 どうやら”メインストーリー”へ誘導してきてるらしいが……残念ながら俺は寄り道的なサブストーリーも大好きなんだ!!


「でも、アリアさんをほっとけないでしょー!? それに、もしかしたら協力することで、なにか旅に役立つモノが得られるかもしれないし!!」


 実際、原作ではそういう展開があったりする。まぁ、無いこともあるんだけど。


 そうやって俺の言葉を聞いたイフは、言葉に詰まったように口をつぐんで言う。 


「む、しょうがないですね……。祈女イノリメである私としても、ロゼルタ様の行動は強制できませんから。あなた様の決定には従います」


「よし!! それじゃ、改めて捜索にしゅっぱーーつ!!」


「あ、ありがとうございます!! ロゼルタさん!! この恩義、絶対に忘れません……!!」


 こうして、アリアの師匠・バルケイン司祭を街で探すことになった。

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