第5話

川又さんは外の小屋に案内すると、小屋の奥から麻袋を持って出てきた。

麻袋はモゾモゾと動き、奇妙な声が聞こえてくる。


麻袋の口は固く閉ざされていて、簡単には開ける事が出来ないほどであった。


川又さんは麻袋の固く縛った口を開こうとするが、なかなか上手く開けられない。

スタッフも協力し、ようやくお待ち兼ねの河童とのご対面となる。


カメラマンは麻袋の口へと近づく。

対してレポーターの奈々はビビって麻袋から距離をとっていた。


麻袋から出て来たのは、ラップで何重にも拘束されたモノだった。

透明なラップの下には確かに緑色のモノが見えているが、それが河童かどうかまでは分からない。


麻袋から出された緑色のモノは、必死に逃げようとしているようだが、ギチギチに巻かれた業務用ラップで動きが完全に制限されていた。

それでも体を動かして何とかしようとしている。


ギチギチにラップ拘束された河童に近づき、ラップを解いていく川又さん。

だんだんと河童の全貌が見えてきて、周りのスタッフにも緊張と期待が高まっていく。


ラップが完全に取り外された河童はまだ網に覆われた状態だった。

地面に横たわる河童の手足は網から飛び出していたが、その手足はしっかりとロープで縛られていた。


網に覆われた河童はカメラとレポーターの奈々を睨みつける。

レポーターの奈々も逃げてばかりはいられないので、川又さんにインタビューをする。

「この生物は河童ですか?」

川又さんは大きく頷くと「これはどう見ても河童ですね、それにほらメスだと思います」

そう言って、河童の大きな胸を鷲掴みにした。


胸を鷲掴みにされた河童は、奇声を上げながらその手から体を捩って逃れようとするが網が邪魔をする。

そんな事はお構いなしに河童の胸を揉みしだく。

そして「人間のものより硬いですね」と頬を赤らめてコメントする。


カメラマンは出来るだけ近くまで寄って河童の映像をカメラに収める。

先ほどまで激しく暴れ抵抗していた河童だったが、疲れたのか諦めたのかすっかり大人しくなっていた。


何かを訴えるように奈々を見る河童だったが、奈々は完全にビビっており、川又さんの後ろに隠れてしまった。

それでもインタビューを続ける。

「川又さんは、この河童をどうするおつもりですか?」

「そうですね、貴重な生物ですので研究施設で詳しく調べて貰いたいですね」

そう言って嬉しそうにコメントをしてくれた。


だが、これを聞いた河童がまた暴れ出す。

研究施設で研究される事を拒むように必死に、

なりふり構わずといった感じで体が土や泥で汚れてもお構いなしに。


この河童の正体を亜美だと知っている私たちはレポート班の後方で、亜美から見えないところから様子を伺っていた。

しかし、このなりふり構わない亜美の行動でスタッフがバタバタと動いて、私たちの姿が亜美に見つかった。

亜美はロープで縛られた足で跳ねるようにして、私たちの方へと向かってくる。

網に絡まったまま、手足を縛られても跳ねる事ができる、まさに火事場の馬鹿力というやつだ。


私たちまであとちょっとというところで、レポート班の体の大きな男性スタッフに倒されて地面に押しつけられた。

河童は悲痛な叫びとも取れる奇声をあげた。


さすがに亜美が気の毒になったので、ここでネタバラシ。

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