第4話

小屋での河童の準備が出来たので、小屋からの撤収作業を始める。

スタッフが慌ただしく動き回り、荷物をロケバスの中に運び込んでいる。


当の亜美は河童の姿で、撤収作業には目もくれないで川を覗き込んでいた。


河童の着ぐるみ、中はウエットスーツになっているとはいえ、田舎の清流となると、水温はかなり低いことが予想されるので、川に落ちるとすぐに体温を奪われてしまいそうだ。

現にここへの到着時、私は川の水の綺麗さに誘われて手を突っ込んだが、シャレにならないほど冷たかった。


ようやくロケバスへの積み込み作業が終わったので、レポート班がインタビューする地区へ移動を始めようとしたが、河童の姿が消えていた。

「また、勝手な行動を」

「すぐにいなくなる」

「一体どこ行った?」

など、亜美に対して文句混じりの言葉を口にしながら、亜美の河童を捜索したが見つからなかった。

亜美の心配よりも、いなくなった事でスタッフからはため息が漏れた。


亜美が見つからないまま、レポート班が到着した。

仕掛け班は別行動でレポートが始まる少し前に合流する段取りになっていた。

レポートが始まり、事前にアポイントを取ってあった村の河童伝説に詳しい川又さんのお宅を訪問する。


川又さんはテレビ出演という事もあり、興奮している様であった。

レポーターの奈々が川又さんに話を聞くと、興奮冷めやらぬ様子で話し始める。

しかし、川又さんの興奮はテレビ出演ではなかった。


川又さんはテレビ取材の為、昔から河童の目撃情報の多い場所へと案内できるように下見に出掛けた。

せっかくテレビの取材が来てくれるので、河童が出るという伝説はあるがただのどこにでもある川を案内するのも気が引けたので、普段行なっている投網で川魚漁をお見せしようと思ったとの事。

投網の準備の為、網も持参してどこを案内したらいいか下見に向かった。


すると、川で泳ぐような季節でもないのに川の中に人影があった。

その人影に恐る恐る近づいてみると、それは全身が緑色で身長が140cmほどの小柄な生物。

その姿はまるで河童であった。

そこで手にしていた網を河童へと投げた。

素早く逃げるかと思ったが、河童は網にかかった。

投網で鍛えた腕力で奇声を上げながらひどく暴れる河童を見事に捕獲した。


それでもなおも暴れる河童に網の上から馬乗りになり押さえ込み、持っていまロープで水掻きのある手足をそれぞれ拘束した。

それでもなおも抵抗する河童の体も網の上からロープでキツく縛りあげるとようやく抵抗をやめたという。


奈々はその河童がどうなったか気になって、しょうがない。

川又さんの話を割ってにインタビューする。

「それで、河童はどうなったんですか?」


そのまま抱えて家に連れて帰ったのだが、また激しく暴れ出したので、今度は野菜などの出荷梱包で使用する業務用ラップで身動きを完全に封じてやったと、自慢気に語る川又さん。


「今、捕獲した河童はこちらにいるんですか?」と質問する奈々。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る