第3話
黒いゼンタイ姿になった亜美は河童の着ぐるみに着替え始める。
河童の着ぐるみは亜美を細かく採寸してオーダーしたウエットスーツがベースなので、着るのも一苦労。
スタッフ2人が補助に入り、亜美に着ぐるみを着せていく。
上半身のゼンタイはところどころ汗で変色が見られ、口の辺りからは涎が糸を引いていた。
ようやく、河童の下半身を着ることの出来た亜美の背中と胸の谷間にはかなり汗をかいているのが分かるほどになっていた。
上半身部分は、作製に携わった私も手伝って比較的短時間で着せる事が出来た。
続けて手袋と足袋を履かせる。
手袋も足袋も本体と繋がる部分は薄いウエットスーツ素材が手袋や足袋から伸びている。
例えば、足袋の場合、河童の表皮であるウエットスーツを捲り上げて足袋を履き、薄くなっている部分を引き上げて、その上に河童の表皮であるウエットスーツを戻すようにして被せる。
足袋とウエットスーツの段差、隙間がない様に調整を行ってから、接着剤で足袋と本体をくっつける。
接着剤で完全にくっついた事を確認すると、接着剤で余分に膨らんだ不自然な箇所を自然な感じに手直ししていく。
両手、両足を取り付けられた亜美は、不思議そうに水掻きのついた手をグー、パーしていた。
次に着ぐるみの仕上げとばかりに亜美にマスクを被せる。
そして、手際よくファスナーを閉めると、ファスナーの上から大量の接着剤を塗り、2度と開かないようにする。
そのまま、開口部もウエットスーツ同士をくっつける形でファスナーにすら触れられないようにした。
また、接着した不自然な部分を熱を加えて溶かして手直しを施してから、甲羅の取り付けを始める。
河童の背中の4か所の突き出たボルトに甲羅にあいた4か所の穴を調整しながら通すと、ユルミドメを施したナットでしっかりと締め込んでいく。
ナットで河童の甲羅を完全に固定すると、最後にナット留めした甲羅の表面が外れないように接着剤でしっかりと取り付けして、河童の完成となった。
これで亜美は自力では河童から簡単には人間には戻れなくなった。
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