1.復活 【6】囚われの身
【6】
頬に、ざらついた床の感触が、伝わってきた。
遠くから、床に水滴が落ちる音が、一定の間隔をおいて聞こえてくる。
拓也は、落ちてくる水滴が、目の前の床にぶつかる
遠くから聞こえていたその水音が、次第にはっきりとしてくる。
突如拓也は、自分が見知らぬ場所にいることに気付き、身を起こそうとした。しかし、その動きは
茶色く変色した壁が四方を囲み、天井の配管はむき出しだった。その配管の一つから水が染み出し、玉となった水滴が、床へと落ちている。四方の壁には窓が無く、
真上には、裸電球が一つぶらさがっている。
拓也は、体の自由を回復させるため縄を引きちぎろうと
拓也は力を緩め、床に横たわったまま、荒い息を上げた。
目を閉じ、息を整える。拓也は意識を縄に集中した。
(切れろ・・・・!)
縄が引きちぎれるイメージを頭に描く。
天井からぶら下がっている裸電球が、唸りを上げて光度を増した。
「・・・・ハッ・・・ハア・・ハア・・・・・」
縄には何の変化も起きなかった。
拓也は床に横たわったまま、息を荒げた。自分が持つと言われた力は、自分の意志通りには
ガチャ・・・・・・
拓也はその音がした方向に頭をもたげた。この部屋の扉の鍵が、開かれる音のようであった。鉄製の扉が、軋むような重い音を立てながらゆっくりと開き、外の明かりが差し込んでくる。この部屋の薄明かりに慣らされていた拓也は、その眩しさに眉を寄せ、薄く開けた瞳に、光に溶け込む数人の人影を認めた。
「あら、お目覚めかしら?」
女の声が、この閑散とした地下室に木霊する。
扉が閉じられ、外の明かりが消えた事で、逆光となっていた人物の姿が確認できた。
その女は、ロビーで見た受付嬢だった。あの時と違い、白い襟を出した黒いスーツに身を包んでいる。膝の上まであるタイトスカートから伸びた足にも、黒いハイヒールを履いていた。女の後ろには、銃を構えた男が二人、迷彩服に身を包んで立っている。
ピンヒールがコンクリートを打つ音を響かせながら、女は拓也の方へ近づいてきた。
拓也の脇に腰を下ろし、頭をもたげたままの拓也の顎に手を添える。
「上司に殺しちゃ駄目だって言われているから、何もしないであげるわ・・・・・・。残念・・・貴方の血、おいしそうなのに・・・・・・」
そう言って瞳を細め、
その表情を見た男は、この女の願望ならどんなことも叶えてやりたくなるだろう。
例えそれが死を受け入れることでさえ。
しかし拓也は、女の挑発的な態度と、この女によって今、このような無様な格好を
拓也はその歯と、先程女が言った言葉に、あることの関係を思い描いた。
「・・・血・・・? ―──まさかお前が山口を⁉」
フフフフフ・・・・・・
女は微笑しながら立ち上がった。
山口のことなど気にも
二人の男は女の前に進み出て、一人が拓也に銃口を向けた。そして、もう一人が腰からアーミーナイフをスラッと引き抜いた。ナイフを持った男が拓也に近づいてくる。
男の向こうに、笑みを浮かべた女の顔が見えていた。
男が拓也の脇に跪き、ナイフを前に出す。
(
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