3.出現 【6】ー 進化 ー
「川が融合しつつある・・・大河へと成長しつつあると言うことは分かった。・・・・・・だが、君の話を聞いていると川が大河にまで成長するには相当な時間がかかる気がするんだが・・・・・・。本当に人類は大海へと辿り着けるのか?」
「大丈夫よ。川は高い方から低い方へと流れるもの。
自然界の川は、地表の
―──何故なら、時の流れは一つしかないから。
時間が逆行したり、一周して元に戻ったり、記憶や記録が無かった事になることはないでしょ? その大海は最も低い所にあり、全ての川はそこに向かうの。
大海への注ぎ口は一つしかない。
別の言い方をすれば、真理と呼ばれる物は、一つだからよ。
・・・・・・人は『何故生まれ、何故生きる』という疑問を誰もが抱いている。けれど人はまず、生きる
空腹を満たす術から幸福に生きる術。
そのため、哲学よりもより私たちに身近な問題。確実に食事にありつけるための経済や流通の発達、快適に暮らせるための道具の発明、といったものの方が目に付くけど、一見真理に結びつかないように見えても川を構成する水分子には間違いないわ。
―─確かに科学は『私は何で出来ている?』の回答を見つけだしていっても、『何故生きる?』と言う疑問解明にまでは到達していない。
医学や生物学は『何故死ぬのか』という疑問に病気や老いの仕組み、進化の過程の答えを見つけても『何故生命は生まれたのか?』ということまでは答えてくれていない。
世界は生命のために酸素を、そして植物を用意したのかしら?
―──
人は自然の
人間は数々の疑問に対する回答を見つけていきながら、その中で全てを包括する法則や意味を発見しつつある。私たちは、多くの”答え”を得ることで、何かの“意志”と同等の“知識”を得ようとしているのよ」
ここまで話し終えたところで、伊吹は話しを切った。
「ごめんなさい。私ばかり、一方的に話しちゃって」
一気に話し終えて、照れたように笑いながらそうつぶやいた。
「いや、興味深いよ」
話し疲れたのか? と拓也感じた瞬間、伊吹は少しいたずらっぽい目を拓也に向けてこう言った。
「じゃあ、人が生きる上で、
「・・・それを探るために研究はしているんだが・・・、今は遺伝子の構造を研究するだけで手一杯だな・・・・・・」
急に話題を振られた戸惑いと、伊吹の議論好きに改めて驚きを感じた事で、拓也はそう答えるだけに留まった。
「私はね、遺伝子はハードディスク内のソフトのような物だと思うの」
そう言って、伊吹はまた話し始めた。
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