第28話 魔法なら全種類ですけど何か？
「ちょっと意地悪過ぎたか？ 返してやるにゃ」
そう言うと猫人は突然、何もないところから肉片をいくつか取り出した。これは……
【収納魔法】か？！
「安心するにゃ、時間停止の収納空間に入れてたから腐ってはいないにゃ。くっつければ治るにゃ、よかったにゃ！」
「…っ、もう遅いわ！ 既に治療は終わっとる、見れば分かるだろうが！！」
「もう一度切ってつなぎ直せばいいにゃ」
「もっ、もう一度切断しろというのか？！ そんな事できるかっ！」
「大丈夫、痛いのは一瞬にゃ。ちょこっと我慢すれば元通りの身体に戻れるにゃ」
「……だが、治癒士が居ないだろうが。街まで持って帰る間に腐ってしまうわ」
「俺が治してやるにゃ」
「何？！」
「シャキーン」
猫人は口で効果音をつけながら爪を出した。
「……え？」
次の瞬間にはキムリの両手両足が切断されていた。
何が起きた？
「うっぎゃぁ～～～～」
「貴様！！」」」
「うるさいにゃ！」
部下の騎士達が叫んだが、猫人が一喝した。
「治療中にゃ！ 邪魔するにゃ！ 俺は治癒魔法が使えるからくっつけてやるにゃよ。ってかお前達手伝うにゃ！ さっさと手足の部品を並べるにゃよ！」
部下達は戸惑っていたが、俺が頷くと、慌ててキムリの手足を集め始めた。（血濡れの腕の輪切りを持つのは騎士たちも嫌そうだったが。）
地面に転がったキムリを仰向けにしてやり、輪切りの肉がどの部位なのかなんとか識別して並べてやると、猫人が治癒魔法を使ってあっという間に手足をくっつけてしまった。接合する時痛みがあるようでキムリはぎゃぁぎゃぁ喚いていたが…
「ぎゃあぁぁっ……お？」
治療が終わると、キムリは何事もなかったかのように立ち上がった。
「おお！ おおおお！！ 戻った！！！！」
「よかったにゃ」
「ああ！ ありがとう～～～！」
「って違うわ！！ 元はと言えばお前がやった事だろうが！！」
「お前が襲ってきた結果にゃ。自業自得にゃ」
「お前が貴族を殺したのが原因だろうが～！」
「その貴族も俺を襲ってきたから自業自得にゃ」
「理由などどうでもいい！ 獣人が貴族を殺して許されると思うのか？」
「知らんにゃ。襲われたら自己防衛するのは当然にゃろ？」
「すごいですね……」
モイラーが俺に囁いてきた。
「ああ、たしかに……」
確かに、今、目の前で起きた事は色々衝撃であった。猫人の容姿、無詠唱の攻撃魔法、収納魔法、さらに治癒魔法まで使って見せた。
「魔法が使えるとは聞いていましたが、所詮は獣人。どうせ簡単な魔法が使える程度だろうと思っていたのですが、まさか治癒魔法まで使うとは……」
「ああ。キムリの治療は俺も見ていたが、治癒士が数人掛かりでやるような治療だったはず。それを一瞬で治してみせるとは…」
「確かキムリの報告では土魔法を使うという話だったはず。しかし今見た限り、風魔法と光属性（※治癒魔法）も使えるようですね……ちょっと信じられないですが……」
※治癒魔法は光属性の魔法に分類されている。光属性は聖属性と呼ぶ地域もある。
「それに収納魔法もだ…。確かお前は三種類の属性魔法が使えるので賢者と自称しているんだったよな？ 奴は土魔法…はまだ見ていないが、風属性、無属性（収納魔法）、光属性（治癒魔法）と三種類の魔法を使って見せている。やつも賢者というわけか？」
「無属性は通常数に入れませんから二種類ですね」
「だが、収納魔法は十分有益な魔法だろう？」
「でも、攻撃には使えませんし！ 仮に無属性を入れて三種類としても、光属性の魔法も攻撃には使えませんから。同じ三種類でも、戦闘で
「三種類？ 俺は全種類の魔法が使えるがにゃにか？」
俺達の会話が聞こえたのだろう、猫人が会話に混ざってきた。
「はぁ？ 全種類？ ホラを吹くのもいい加減に……ひっ！」
猫人はモイラーの足元に猫人が飛ばしたプチ
「ほう…、火属性の魔法だな…」
モイラーの足元に生えていた雑草が燃え始めたが、それを猫人が今度は
「今度は水魔法か。これで五属性、土魔法が本当なら闇以外の六属性を使えるということになるな…」
「もちろん、闇属性も使えるにゃ」
猫人はそう言うと黒い球を浮かべてみせた。
「ほう…」
闇属性の魔法はレアなので初めて見たが、火球ならぬ闇球というところか？
「そんな……信じられない。七属性が本当に使える…？ これでは
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