第42話 第二の古参登録者現る

「やめたほうがいいよー」

「え、そうなのか?」


 俺は近所の行きつけの銭湯にやってきた。

 実は嬉しい事に、俺のことをネット上で知った番台さんが、特に客のいない時間帯で多めにお金を払うことで、銭湯を貸し切りで使わせてくれるようになった。

 元々人が全くいない時間だし、その時間来てくれることもあり、顔を覚えられていたようだ。

 

 そうしてサウナに入っている俺の隣にはリリ。実はリリを最近、サウナに入るときは誘うようになっている。

 

 先ほどのは、俺がサウナの中でリリにオフ会への乱入について話した際の反応だ。


「たぶんアタシの予想だと、アキトが乱入してみたい理由って、可愛いって直接言われてみたいからだよね」

「うっ、そ、そうだけど」

「きっと喜ぶ人も多いだろうけど決して皆が喜ぶってわけじゃないと思うんだ」

 

 まだ俺にはよくわからないけど、そういうものなんだろうか。


「キミのファンはすごく多いと思う。でも、人によっては遠くから見ていたいだとか、直接会うのはなんか違うとか、色々な感情があると思うんだ。だから、突然会いに行ったりすると、喜ぶ人もすごく多いだろうけど、逆にがっかりしたり、違うそうじゃない、ってなる人も居ると思う」

「うーん、確かに皆が皆同じ、ってわけじゃないだろうしなぁ」


「それにね、そのオフ会に出なかったひとが、オフ会に出た人ばかりずるい! ってなるでしょ?」


 確かにリリの言うことはごもっともだ。

 仕方ない。それならオフ会に乱入したりするのはやめておこう。

 

「でもね、確かに直接可愛いって言われる機会って、中々ないもんね。仕方ないけどアキトは人目を避けてるし。こんなにかわいいのにもったいない」


 サウナの暑さの影響か、なんだかかわいいって言われてあたまがぽーっとするような気がする。


「だから乱入じゃなくて、普通にオフ会に参加してみるのはどうかな?」

「普通に?」

「そそ、もちろんそのままの姿じゃだめだけど、アキトはイメチェンできるじゃん」


 イメチェン、イメチェン...なるほど!


〇〇〇


 オフ会。学生の頃だったかな。友達からゲームのオフ会の話を聞いたことがある。

 その友達はゲーム内のギルドのオフ会に参加し、当時やっていたゲームのコラボカフェへ行ったり、ボーリングで遊んだりしたとか。

 

 6人ほどが集まったオフ会で、オフ会の様相を楽しく俺に話していたから覚えている。

 

 そう、俺の想像するオフ会ってのは、そういう規模のもの。多く集まっても十人くらいかな、と考えていたんだが。


「多くない?」


 俺は一人つぶやいた。

 そもそも駅前、とか特定のカフェ、とかそういう場所で集合じゃないって時点で、ちょっと違和感は感じていた。


「皆! ダンジョンクイーンは好きかああああ!!」


 ウオー、と低い声と高い声が半分半分、会場がうなりを上げる。

 小規模イベント会場だろうが、その場にはおそらく百人ほどの参加者が集まっていた。

 

 ちなみに俺はというと、例の黒髪緑瞳に姿を変えて参加している。

 普通ならこんな幼い子をオフ会に参加なんて、主催者側が禁止するだろう。しかし俺の側には、美人な人が一人立っている。

 

「翔斗さん、ありがとうございます」

「いえいえ! むしろ協力出来て嬉しいです! アキ...えっと、幼女さん!」


 そう、俺の隣には翔斗さんが立っている。俺の保護者役に良い人はいないか探したところ、なんと翔斗さんが偶然にもこのオフ会に参加するという話で、俺の保護者的な立場にもなってくれるという話になった。

 てか幼女さんってなんだ。志度さんが言う幼女ちゃんみたいな感じになってるぞ。

 ごまかすにしても、もっとなんというか、良い名前というか。


「それにしたって、すごいオフ会だな...」

「ですね。僕も驚きました。知らなかったんですが、会場の音頭を取っているあの男性、ダンジョンクイーンチャンネルの古参のようですよ」


 古参ってことは、まだ俺がダンジョンクイーンってばれる前の8人の登録者の一人だったのか? それは嬉しいが。

 なんて考えていると、俺の側に一人の女性がやってきて言った。


「はぁ、こんなに五月蠅いオフ会だとは思わなかった。でも同士が多いというのは嬉しいな」

「あれ、あんたは...」


 その気だるそうで、猫背。眼鏡をかけて、不健康そうな真っ白、白すぎる肌の色をした女性を、俺は知っていた。


「どうも、改めまして。以前オーディションではお世話になった、ナナギゲームチャンネル運営してます、ナナギです。以後、よろしく」

「あ、リリ達と同じ事務所の」

「んで、お前の正体ももちろん知ってるんで」


 それはそのはずだ。

 ナナギ。あの事務所のオーディションに居た。そして彼女は、今の黒髪緑瞳の状態から、ハーフドラゴンへ変身したのを見ている。つまりは正体がばれているということだ。


「...」

「えっと、俺に何か...あの時だましていたのは謝るけれど...」

「...はぁ、だる。こんな所じゃなければ両手掴んでブンブン振り回して喜びたいってのに」


 え、喜ぶ? それはどういうことだろうか。


「ども、改めまして。ダンジョンクイーンチャンネルの開祖8人の登録者が一人です。昔っからファンした。会えてとんでもなく嬉しいです」


----


<あとがき>

大変お待たせして申し訳ありません。

色々なものが重なりしばらく投稿できませんでした。

引き続き、スローペースで少しずつになるかもですが再開していきます...!

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幼女TSしたのでダンジョン配信始めたらダンジョンクイーンって最強NPC扱いされてたお話。-NPCじゃないとバレたので有名配信者を目指します- うにとかに @chachanko

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