幼女TSしたのでダンジョン配信始めたらダンジョンクイーンって最強NPC扱いされてたお話。-NPCじゃないとバレたので有名配信者を目指します-
第5話 動画タイトル:この度はお騒がせして大変申し訳ありません
第5話 動画タイトル:この度はお騒がせして大変申し訳ありません
「ふぅ...う、ちょっと吐き気が」
俺はリリに背負われ、自宅へと戻ってきた。さすがの猛スピードだが、やはり酔う。
リリからは「アタシの家で一緒に住まない?」と提案されたが、さすがに俺は27歳の男。向こうは聞いてみれば、14歳という。さすがに倫理上良くないと考え、俺は提案を断った。
リリは「別にいいのに。何よりそんな姿じゃ夜道歩くの危険だし、今はキミは女の子だから一緒に住むのは気にしなくても」と言われたが、いや俺が気にする。
「俺が顔出しの配信か」
確かに昨今、ダンジョン配信が流行っているが、まさか俺がすることになるとは。
しかも、リリたち曰く
「キミはダンジョンクイーンとして既に有名なんだ。だから、配信すればきっと沢山登録者数が増える」
「登録者数が増えたら、ダンジョン配信者たちのコミュニティに入れる。そしたら、男に戻る情報も集めやすいはず」
「登録者数が増えればもちろん収入は増える。それに、自分たちの事務所にも入れるよう、事務所に人に言うことが出来る」
とのこと。なんでも、どうやらリリの住んでいるタワマンは事務所経由で借りているものらしく。
〇〇〇
「サウナ付きのこのタワマンにだって住めるようになるよ!」
「マジで!?」
〇〇〇
いつでもサウナで整える。ああ、なんて良い響きなんだ。それもあって、リリから一緒に住もうといわれたのを断ったことをちょっと後悔している。
「いや、ダメだダメだ」
年端も行かない女の子と20代後半の男が一緒なのは良くない。うん。
それと、食費やらダンジョン探索に必要な装備品やらは、リリが見繕ってくれることになった。なんでも「それくらいはさせてほしい。というよりキミ、ちゃんと栄養取ってる?」とのこと。
たしかにもやし生活してた時期もあったし、栄養状態は良くないかもしれない...断っても向こうが辞める気がないようで、甘んじて支援を受けることにした。ちょっと気になるのは、衣服まで準備すると言っていたことだが、まぁ大丈夫だろう。
「にしたって、ほんとに有名配信者だったんだな」
あの二人をネット上で調べてみたら、すぐに情報が出てきた。
リリ。本名は金花(かねばな)リリ。りりちゃんねるというチャンネルを持ち、約一年前からダンジョン配信を始めた女の子。学校はおそらく行ってないようだが、自前で家庭教師付けて勉強をしているらしい。
誰よりも速さを追求する探索者であり配信者。当初こそ無名だったが、その爽快なダンジョン攻略は人々を魅了し、今では128万人のチャンネル登録者。有名事務所にもスカウトされ今に至る。
現在も月30万人の勢いで登録者が増えている、乗りに乗っている配信者だそうだ。
もう一人が、花ヶ迫(はながさこ) エカ。こちらは二年前からダンジョン配信をしている...が、完全なネタ枠のようだ。
こちらも一年以上は登録者数千人といったところだが、一年前にどや顔でダンジョントラップ解説後、そのトラップにすぐ引っかかり、「おほぉ」という叫び声を残したことで、それがネットミーム化して、一部界隈で火が付いたらしい。
リリほどじゃないが、じわじわとネタ枠として名が知れて、今では登録者9万人、登録者もじわじわ増えていっているようだ。
「一応この二人同じ事務所なのか。だから絡みあったんだな」
そしてそんな二人を検索している最中に出てきた関連動画にあったのが。
「ダンジョンクイーン...」
ダンジョンクイーン。なんでも、ネット上では俺はそう呼ばれているとか。
確かにダンジョンクイーンという言葉を見かけることはあったが、自分のことだとは思ってもみなかった。
「確かにこれ俺だ」
なんでも、ピンチのダンジョン探索者の元にさっそうと現れ、ピンチをしのぐ支援をし、時には一撃で強大なモンスターを倒し、さっそうと去ってゆくとのこと。
そこに書かれている目撃情報、遭遇情報、全て身に覚えがあった。
「いや、確かに救助隊信号やら、アサシンのスキルで検知した弱った気配をもとに助けにいったが...」
やったことは難しいことではなく、基本的には強めのモンスターに襲われているところをバレットマークを付けて、攻撃の指示をしたり、要救助者が動けないなら、いつも通りバレットマークを付けて一撃確殺を狙っただけだ。
別に難しいことや、特別な行動をしたわけではない。けれど、いつの間にやらこんな大ごとになっていたとは。
調べれば調べるほど出てくる『ダンジョンクイーン』の情報。
ネット上では数多のまとめサイトが立ち、マイナーな新聞コラムにもまとめられていたり、さらには動画サイトで『ダンジョンクイーンの正体はダンジョンNPCだった!?』なんてものがあがっていたりもする。
「俺の行動で、なんか、勘違いされている」
NPC。確かに噂では、ダンジョンが生み出したダンジョンの中だけの人間、通称NPCが居ると噂があるが、俺がそれに勘違いされている。
ダンジョンクイーンは憶測が憶測を呼び、俺が知らないところで、大きな噂話になっているようだ。
その最中、ふと俺の動画チャンネルを見てみると。
「え...登録者数五千人!?」
つい午前中まで登録者数8人だったチャンネル。今見てみれば、五千人の人がチャンネル登録をしていた。
「なんだ、一体何が起きたんだ!?」
もし原因があるとすれば、何か動画や配信だ。何かやらかしてしまったのか!? そう思っていると、今日撮っていた動画用の配信の再生数が異常に伸びていることが分かった。
コメントを見てみる。
『マジでリリちゃんと同じ場所に居る』
『もしかしてこれ、ダンジョンクイーンのチャンネルじゃないか』
『いやいや、ダンジョンクイーンがチャンネルなんて持つわけが。第一クイーンはNPCだし』
まさか、そう思い配信を見返してみる。全部入ってた。リリを助けた時のやり取り。そしてちょうどリリを助けて転んだ当たり...俺の記憶では「ふぎゃ」と声を出したあたりで配信が止まった。
おそらく転んだ際に、配信の停止ボタンとかが反応したのだろう。
既に五千人も。嬉しい。いやでもそれは俺がダンジョンクイーンとか名前つけられて、ダンジョンのNPCと勘違いされているからで。
そもそも女の子になったとは言え、俺はれっきとした普通の人間だし。
と、コメントを見れば、チャンネル配信者、つまり俺に説明を求めるコメントが多数寄せられている。
...考えついた。配信よりも最初に俺がやることが。
〇〇〇
「いやー、キミがまさかしょっぱなあんな動画上げるなんて思ったなかったよ」
「ええと、それはどういう」
「普通、初配信とか初動画って、自己紹介動画を上げることが多いんだけど、君があげたのがまさかね」
翌日の昼、俺のアパートにやってきたリリが、スマホの画面を俺に見せてきた。
そこには、俺が昨日撮った動画が流れている。動画タイトルは。【ダンジョンクイーンと呼ばれている探索者です。この度はお騒がせして大変申し訳ありません】だ。
そう、俺は昨日、多くの人を勘違いさせてしまったことを恥じて、謝罪動画を急いで撮影し、動画投稿を行った。
『この度はお騒がせして申し訳ありません。巷を騒がせているダンジョンクイーンですが、おそらく俺のことかと思います。俺はダンジョンのNPCではなくれっきとした人間で...』
見れば、謝罪動画は52万回も再生されている。そして俺のチャンネルも、登録者一気に4万も超えていた。
「なんで謝罪動画がこんなに伸びてるんだ」
「それはキミ、ダンジョンクイーンはすごく有名でみんなが正体を知りたがってるところに、そのクイーン疑惑のチャンネルでそんな動画を上げたのだから、皆大盛り上がりだよ! とは言っても、まだ皆疑心暗鬼だから、登録者数は伸び悩んだんじゃないのかな?」
と俺とリリが話している隣にはエカの姿。エカも動画サイトを漁りながら。
「アキトさん! あなた兄弟がたくさんいますのね! 【ダンジョンクイーンの兄です】【ダンジョンクイーンの妹です】【ペットです】といった動画がたくさん上がってますわ!」
「エカ、それ便乗で現れたガセ動画だよ」
「おファッ!? これガセでしたの!?」
いや俺にそんな沢山兄弟居るわけじゃないし、ペットと言いつつ喋ってるの人間だし、たぶんガセというよりネタ動画だろうな。
「それはそれとしてキミ、これはチャンスだよ!」
「チャンス?」
「そう! 図らずも初手自己紹介じゃなくて謝罪動画を上げたことで、このチャンネルすごく注目されてるよ! ほらトゥイッターでもすごく話題だし」
「そうですわ! 掲示板でもスレが立ちまくってますわ! ほらご覧なさい!」
そうして俺に画面を見せてきたエカだが。
「えーっと、『【朗報】ダンジョンクイーン、やはり幼女 その91(201)』『ダンジョンクイーン、NPCじゃなかった その207(810)』『ダンジョンクイーンスレ★1289(1001)』『クイーン初手謝罪動画(901)』『【お報】エカお嬢、またオホる(379)』。なんだこれ」
「これは掲示板のスレッドですわ。最も勢いのあるダンジョンクイーン関連のスレッドの勢いが18万!」
「なぁリリ、これってすごいのか?」
「18万って速そうだしすごいかも? という感じで今キミ、すっごい話題になってるんだよね。それと同時に、キミが本当にダンジョンクイーンなのか皆ちょっと疑っているところはあるみたいなんだ。ほら、動画のコメントちゃんと読んでみて」
えっと、何々?
『かわいい』
『おめめくりくりだね』
『かわいい』
『チャンネル登録した』
『白髪赤目とか癖』
『肌しっろ』
『こんなかわいい子がダンジョンを探索できるわけ』
『それはそう。ほんとにダンジョンクイーンなのか?』
いや、大体俺の外見、というかかわいいか。かわいいか...
「あれ? どうしたの? キミ顔赤いよ?」
「あ、い、いやなんでもない。男をかわいいとか、ほんと勘違いしてるよな、あはは」
「キミは実際今めっちゃかわいい女の子だからね。あれ? もしかして恥ずかしかった」
「あ、いや、あはは...それはともかくだ」
確かに、謝罪動画を出しただけで、特に自分がダンジョンクイーンであるという証拠は出してない。
「つまり、キミの次の行動は、ダンジョン配信! それもちゃんと事前に告知すること。いいね?」
ダンジョン配信、まぁいつもやっている感じでいいのかな。モンスターを1体倒して...
「それもいいけど、いつもは金欠でモンスターを一体だけ倒して終わりだったんだよね?」
ああ、確かにそうだ。何より弾丸代が厳しくて...
「ふふふー、というわけで持ってきたよ!」
そうして、リリは近くに置いていたカバンから取り出したものを机に置いた。
「キミはアサシン系だと聞いたからね。小さい子でも撃てる小型の拳銃を持ってきたよ。弾も沢山もってきた。これはアタシからのプレゼント。これだけあれば、キミのバレットマークのスキルを思う存分に発揮できる。でしょ?」
ニシシ、と笑顔を見せる。リリ。
確かにこれなら、今まで我慢してたぶん、正面からダンジョン攻略できる。
「あ、早いところチャンネルの収益化申請は忘れずにね」
「わかった。よし、じゃあ早速ダンジョン配信、今日からやってみるよ」
そうして小型の銃を手にした俺は、ダンジョンへ行く準備を始めた。
「キーっ! またわたくしのスレが乱立してますわ! 削除申請削除申請...『ダメです』って返されましたわ!」
一方エカお嬢は、なんか掲示板で戦ってた。
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