第22話

 そうして、俺たちはメイドに案内をされ、朝食が準備してある部屋にやってきたのだが、そこには俺たちより先にアイリスが座って待機していた。

 ……これ、俺が直ぐに朝食を食べるってあのメイドに言ってなかったらどうしてたんだ? いや、わざわざ聞いたりしないけどさ。

 ……はぁ。公爵様じゃないだけありがたいと思うか。別に嫌いなわけじゃないけど、なんか、色々と緊張してしまって普通に気まずいし。


「えっと、おはようございます、アイリス様」


「……おはようございます」


 そんなことを思いながら、俺はロゼと一緒にアイリスに挨拶をした。

 

「えぇ、おはよう。よく眠れたかしら」


「はい、お陰様でぐっすりでしたよ」


 アイリスのおかげというか、どっちかっていうとロゼのおかげなんだけど、俺はそう言った。

 ……実際、ロゼの耳がもふもふしてて触り心地が良くて、体も暖かかくて、そのおかげで本当によく眠れたからな。

 

「良かったわ」


 ……それでなんだけど、俺たちは今からアイリスと一緒に朝食を食べるってことでいいんだよな?

 公爵様本人と食べるよりは全然まだマシなんだけど、やっぱり緊張するよな。相手は公爵令嬢だし。

 ……いや、これも慣れなきゃなのか。

 本当になんでかは分からないけど、アイリスは俺たちに付いてくることになってしまっているからな。


「座らないの?」


「……いえ、座りますよ。……ロゼも一緒に座ろうか」


「はい」


 大丈夫だとは思うけど、一応俺のメイドだから座ってくれない可能性も考えて俺はロゼにそう言った。

 まぁ、昨日とかも普通に隣座ってたし大丈夫だったと思うけどな。

 

「本当にあんた達は仲がいいわね」


「まぁ、もう長いこと一緒にいるので」


 俺としても、ロゼが反動で甘えん坊になってしまつたあの日からめちゃくちゃ距離が縮まって仲良くなったな、とは思ってたよ。

 あの日までは普通にロゼの表情が無表情すぎて、俺の事をどう思ってるのか、とか結構不安だったし。

 出会った頃の最初に比べたらかなり仲良くなってきてるとは思ってたけど、やっぱり表情が変わらないし、分からなかったんだよ。


「私にも緊張なんてしないでそんな感じに接して欲しいわね。私達もこれからは長い付き合いになるんだから」


 そう思っていると、アイリスは俺が公爵様よりマシとはいえ、アイリスに対して緊張していることに気がついていたのか、そう言ってきた。

 ……まぁ、そうだな。慣れなきゃってのは分かってるけど、ロゼみたいな感じに接するのは流石にダメだろう。

 俺のロゼに対するこの感じは反動で甘えん坊になってしまっているから許されている、みたいなところがあると思うし。


「……善処します」


 政治家みたいなことを言って、俺はロゼやアイリスと一緒に朝食を食べ始めた。

 幸いと言うべきか、それ以上アイリスも何かを追求してくることはなかったからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る