第21話
「ミシュレ様、起きてください、朝ですよ」
「……ん、あぁ、おはよう、ロゼ」
目が覚めると、びっくりするくらい至近距離にロゼの顔があったから、びっくりしてベッドから飛び起きそうになったけど、未だに甘えん坊になってしまっているロゼに抱きしめられていて、そんなことになることはなく、普通に挨拶をすることが出来た。
ただ、俺は全然いいんだが、一応、ロゼはメイドだろ? 普通さ、ベッドから起き上がって、起こしてこないか? ……いや、いいんだけどさ。
あの反動で甘えん坊になってしまう前は気安く接することが出来る相手でありつつも、そういうところはしっかりとしてくれてたし、それもこれも俺が約束を破って死にかけたのが悪いんだろうしな。
仮に俺が何か悪いことをしてなかったとしても、ロゼとはもう長い仲だし、全然気にしなかっただろうけど。
「はい、おはようございます」
「……取り敢えず、まだ眠いけど、起きるか。ここ、人の家だしな」
何となく、目の前にあったから、俺はロゼの耳を触りながら、そう言った。
もちろん、ロゼが嫌そうにしたら直ぐにやめるつもりだったけど、特にそんな様子は無かったし、俺はそのままロゼの耳を触りながら、頭を撫で始めた。
「……はい」
すると、ロゼは俺の言葉に頷きながら、相変わらず無表情ながらも心做しか心地よさそうな顔をして、目を閉じていった。
「ロゼ? 一応言っておくけど、二度寝なんてしちゃダメだからな?」
「……ん、分かってますよ」
「なら、目を閉じるなよ」
「……だって、ミシュレ様が耳を優しく触ってくれたから」
またいつもの敬語が無くなってるな。
あの時以来、たまにロゼの敬語が無くなる時があるけど、どういう条件で敬語を忘れるんだろうな。
「嫌ならやめるぞ」
「……やめちゃダメです」
「分かったよ。ただ、ちゃんと起きるぞ。さっきも言ったが、ここは人の家だからな」
「分かってますよ」
そんなやり取りをして、俺はロゼと一緒にベッドから起き上がった。
「お目覚めでしょうか?」
すると、まるで俺たちがベッドから起き上がるタイミングを見計らっていたかのように扉がノックされるなり、公爵家で働くメイドのそんな声が聞こえてきた。
「はい、ちょうど今、起きました」
「朝食の準備が出来ておりますが、どう致しましょうか」
「どう、とは?」
「朝食を食べる時間はお客様方のタイミングに合わせるようにアイリス様より言われておりますので」
「あ、そうなんですか。でしたら、直ぐに食べさせてもらいます」
公爵様じゃなくてアイリスの方からなんだ、と内心で思いながら、俺はそう言った。
「かしこまりました。直ぐにご案内させてもらいたいのですが、大丈夫でしょうか」
「……少しだけ待って貰えると、ありがたいです」
「もちろん構いません」
メイドの返事を聞いた俺は、ロゼの頭に置いていた手を退かした。
「ロゼ、大丈夫そうか?」
「はい、大丈夫です」
そして、ロゼの返事を聞いた俺はメイドに朝食が準備してある場所までロゼと一緒に案内をしてもらった。
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