第13話
ロゼと一日を外で過ごした日の翌日、また昨日と同じくシロの背に乗って歩いてもらっていると、街が見えてきた。
……街が見えてきたのはいいんだが、シロはどうしような。
テイマーみたいな存在がこの世界に居れば、話が楽なんだが、多分、居ないしな。
どう考えても騒ぎになる。
かといって、シロを手放すなんて選択肢は無い。
俺の生命線なんだ。無理に決まってる。
……百歩譲って、俺一人ならともかく、ロゼがいる。
ありえないな。
「……」
そんなことを考えているうちに、気がついたら俺たちは騎士たちに囲まれていた。
……なにこれ。もう詰んだの?
じゃなくて、ちゃんと説明しないとな。
「落ち着いてください。私が……私たちが上に乗っているように、この狼は危険な存在ではありません」
俺はそう言いながら、何か違和感がある気がする。
違和感というか、既視感? みたいな感じだ。
この間うちの家の騎士たちに囲まれた時のことが既視感になってるのか。
もう、うちの、じゃないけど。
「……大丈夫です。話は聞いております」
話を聞いている……? シロの話をか?
誰がわざわざ話すんだ? ノルドたち……は無いな。
アイリスか? いや、でも、どうやって?
あの公爵様がわざわざ言いふらしたりするのだろうか? ……分からんな。それは。相手は貴族だし、普通の貴族っていうのは思っていることを表情に出したりしないだろうし、あの時、何を考えていたのかも正直あんまり分からん。
まぁ、感謝してたって言うのは、流石に本当だと思うけど。
……まさかとは思うけど、ここがアイリス……というか、あの公爵様の街だったりするのか? だとしたら、割と辻褄は合う、のか?
いくら冷静であっても、賢くなるわけじゃないんだ。
分からないものは分からないな。
「話を聞いている、とは?」
「……それを知っていてこの街に来たのでは?」
何、それを知っていてって。
俺、何も知らずに、単純にロゼからこっちに街があるって聞いたから来ただけなんだけど。
「たまたまですね」
「そ、そうですか」
なんかよく分からないけど、俺の予想があっているんだとしたら、嘘をつくのは色々とまずいかもだから、俺はそう言った。
そもそも、この騎士たちも今のところはこっちに友好的っぽいし、予想が違っても、嘘をつく理由なんて無いからな。
「そ、それでも、我々について来ていただけるとありがたいのですが……」
騎士がそう聞いてくると同時に、俺の前に座っていたロゼが顔を上げて、視線で「ついて行くの?」といった風に聞いてきた。
つい耳をまたもふもふとしたくなってくるけど、騎士たちの前ということもあり、俺はそれを我慢して、騎士達に向かって肯定の返事をした。
「ありがとうございます」
すると、騎士の代表? みたいな感じの人は安心したようにお礼を言ってくれた。
無理やりはダメだけど、絶対につれてこい、みたいなことを言われてたのかな。
「こいつは、どう致しましょうか」
そんなことを内心で思いながらも、俺はそう聞いた。
俺の生命線なんだ。
ついて行くとは言ったけど、それはシロが一緒ならの話だ。
シロが一緒じゃないなら、悪いけど普通に逃げるぞ。
だって怖いし。
「……もちろん一緒で構いませんよ」
なんか、ちょっと嫌そうじゃないか?
「ありがとうございます」
そう思いつつも、俺はそれに気がついていないふりをして、そう言った。
そっちの方が俺にとっても都合がいいしな。
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