第12話
「ロゼ」
「なんですか?」
「何か食べられるものって持ってるか?」
辺りが暗くなってきた頃、俺はロゼとそんなやり取りをした。
食料を持ってくるのを普通に忘れてたからだ。
全然街が見えてこないし、野宿をすることは確定なのに、食料が無いのは普通にまずい。……朝から何も食べてないんだ。普通に腹も減ったし。
幸い、水分はロゼのスキルでどうにかなってるし、問題なのは食料だけだから、今日くらいなら食事抜き、ってことでもいいんだけど、せっかくロゼが着いてきてくれているのに初日から辛い思いをさせるというのは申し訳が立たない。
……だから、何とかしたいんだけど、いい案は何も思いつかないんだよな。
一応、シロに食べられる魔物や獣を狩ってもらうって手段はあるけど、狩ってきてもらったところで、俺とロゼ、どっちも捌けないんだよな。
「ミシュレ様、私は一日や二日くらい食事が抜きでも大丈夫ですよ」
そうして、色々と頭の中で悩んでいると、ロゼが耳を俺に押付けてきながら、そんなことを言ってきた。
……冷静スキルのおかげで顔には出してなかったのに、俺が色々と悩んでいることに気がつくかな。
最近はめちゃくちゃ甘えん坊になってるくせに、察しがいいのやめろよ。
いや、話の流れから察することくらい簡単だったかもだけどさ。
「…………ほんとにいいのか?」
そして、更に悩みに悩んだ結果、俺はそう聞いた。
ロゼに、甘えることにした。
いや、俺だって本当は俺が連れ出した責任くらい取りたいさ。
でも、今はどう頑張っても無理なんだから、ここは大人しく諦めるしかないって無駄に冷静な頭がそう言ってくるんだよ。
「はい。撫でてくれるのなら、大丈夫です」
「……ごめんな。ありがとう」
「はい。大丈夫です。あの家に残るより、ミシュレ様と一緒に居られる方が私は幸せです」
……冷静なはずなのに、顔が熱くなってきている気がした。
いや、流石にそんなことを言われたら、照れるって。……顔には出てないと思うけど、一応、見られないように、耳でも撫でとくか。
押し付けてきてるし。
「……ミシュレ様、どうせ何もすることなんて無いんだし、もう寝よ?」
「そうだな」
幸いと言うべきか、シロがいいベッド兼護衛になってくれるし、さっさと寝よう。
シロの体温とロゼの体温で寒くもないしな。
……いや、ちょっと待て。俺、なんで当たり前のようにロゼと一緒に寝ようとしてるんだ? 寝ようとは言われたけど、一緒に寝よとは言われてないし、別々……というか、もう甘えん坊が終わって、少し離れて眠る可能性くらいあるだろう。
「ミシュレ様?」
「一応聞いておくんだけど、一緒に寝るのか?」
「……」
俺の言葉を聞いたロゼは、まるで絶対に離れないとばかりに抱きついてきた。
「一緒に寝るか」
そんな様子にまだロゼは甘えん坊になっていることを察した俺は、そう言った。
……正直少し……いや、かなり嬉しかった。……本人には言わないけど。
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