第11話
狼の背に乗りながら、ロゼの耳をもふもふしていると、いつの間にか街を出ていた。
……うん。普通に嘘だな。これは現実逃避だ。
分かってたことだけど、街の住人がみんながみんな悲鳴を上げて逃げていくんだよ。
確かに俺は冷静スキルなんてものを持ってるし、頭の中は冷静ではあるんだけど、冷静だからって気まずい思いが無くなる訳では無いと思うんだよ。
と言うか、むしろ冷静であるからこそ色々と考えが回ってしまって、嫌な想像もしてしまってたんだよ。
まぁ、ロゼの耳のおかげで、もう全然そんなことないけど。
……これ、俺は本当に冷静なのか? かなりおかしなことを思ってる自信があるんだけど……まぁ、別にいいか。
「……ロゼ、なんかここから近い街って知ってるか?」
相変わらずロゼの耳をもふもふしながら、俺はそう聞いた。
「多分、あっちです」
すると、ロゼの方も相変わらず耳をぴょこぴょこと動かしながら、そう言ってきた。
「曖昧だな」
「獣人ですから、街の外に出たことなんて無いんです」
「……そうか。まぁ、街の外に出たことないのは俺もだから、一緒だな」
「はい」
「これから一緒に知っていこうな」
「……うん」
ロゼの頭を撫でながら、俺はそう言った。
表情には出さないけど、もしかしたら気にしてることを聞いてるかもだし、フォローはしっかりしておかないとと思ったからな。
「わん!」
「ん? あぁ、お前も一緒にな」
早くこいつの名前、考えないとな。
普通に不便だし。
「……ミシュレ様」
そう思いながら、何となく癖になってて、狼の背中を撫でると、ロゼがさっきまでの様子が嘘みたいに不機嫌そうに背中を俺にくっつけてきながら、頭を耳と一緒に押し付けてきた。
「そんなのより、私を撫でてください」
さっきいっぱい撫でたと思うんだけどな。
……まぁ、口には出さないけどさ。そんなことを口に出したって、余計にロゼの期限を悪くするだけだろうし。
「撫でてるだろ」
「……私だけにしてください」
仲間……かはまだ分からないけど、これから一緒にいることになるんだから、少しくらい仲良くして欲しいものなんだけどな。
「一応聞いておくんだけど、こいつに名前をつけようと思うんだが、何かいい名前はあるか?」
ロゼの言葉をスルーしながら、俺はそう聞いた。
どういう反応をしたらいいかが分からないし、これからのことを考えたら、ロゼだけに、なんて約束できないし。
「……無いですし、必要ありません」
「無かったら不便だろ」
「大丈夫です。どうせすぐに別れます」
……別れないからな? 俺の……俺たちの生命線だし、別れないからな?
……いや、でも、今更だけど、こいつ、街に入れなくね? あの時は状況が特殊だっただけで普通は入れなくね?
……ま、まぁ、別に外でバレないように待機……は無理だな。
あれ、どうしよう。
……ペットとでも言えば大丈夫か。少し普通より大きいくらいの犬だと言えば、大丈夫だろ。うん。
この世界にテイマーみたいなスキルは多分存在しないし、最初にちゃんと説明すれば、まさか魔物とは思われないだろう。……多分。
「そう言わないで、一緒に考えてくれよ。俺が考えたら、シロとかになってしまうからさ」
「それでいいじゃないですか」
シロは流石に適当すぎるし、ダメに決まってるだろ。
「わん!」
「ん? あぁ、お前も嫌だろ?」
「くぅん」
「……シロでいいのか?」
「わん!」
……冗談だろ? シロって、毛の色が白いから適当に言っただけなんだぞ?
「ほら、こいつも良いって言ってるんですから、もうそれでいいじゃないですか」
「……まぁ、そうか」
どうせいい名前も思いつかないし、別にいいか。なんか、よく分からんけど、本人も満足してるっぽいし。
そう思って、俺はまたロゼの耳をもふもふし始めた。
目の前にぴょこぴょこと動いてたから、また触って欲しいのかと思って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます