第10話
あれから、ロゼの準備を何故か主人の俺が手伝って、また頭と耳を撫でさせられていた。
……撫でさせられていた、なんて言い方をしたら嫌々やらされてるっぽいけど、別にそんなことはなく、そのまま時間はすぎ去っていった。
途中、何か外が騒がしかった気がしたけど、ロゼの頭を撫でながら耳をもふもふするので忙しかった俺は、外の様子を見ることも無く、結局あれはなんの騒ぎだったのかは知らない。
まぁ、この家で起こっていることだ。普通にどうでもいい。
どうせ明日には出ていくんだし、興味もない。
そんなこんなで、俺とロゼはまた一緒のベッドで眠りにつき、次の日になった。
いつもより早く起きたから、いつもの朝より眠い気がするけど、そんな眠気を我慢しながら、俺はロゼを起こした。
これも本来なら逆だと思う。
これじゃあまるでロゼがお嬢様で、俺が執事みたいになってしまってるからな。
別にいいんだけどさ。
普段は普通にメイドとして働いてくれてたし。
……それよりも、やっぱりロゼって整った顔してるよな。
いくらロゼをそういう目で見てないとはいえ、冷静スキルが無かったら、こんな可愛い子と一緒のベッドで眠るなんて、色んな意味で危なかっただろうな。
「……ミシュレ様」
「起きたか?」
「……今日は、ちゃんと私の方を見てくれてた」
もしかして、まだ昨日のことを気にしてるのか? ロゼが起きた時、俺があの魅了を掛けた狼の方を気にしていたから、ロゼが甘えてきたやつ。
……ほんと可愛いな。
「変なこと言ってないで、早く起きるぞ」
そんなことを思いながらも、ノルドとロイドが起きてくる前に家を出たいから、俺はそう言った。
「……分かりました」
すると、まだ少し眠そうにしつつも、ロゼは頷いて、ベッドから起き上がってくれた。
「ミシュレ様、準備出来ました」
「なら、行くか」
俺の方も準備は終わってるしな。
そうして、ロゼと一緒にこっそりと屋敷を出ると、そこにはまるで俺たちが出てくるのが分かっていたかのようにバカでかい狼の魔物が俺たちを出迎えてくれた。
「……ミシュレ様、こいつも連れて行くの?」
「確かに、騒ぎにはなるだろうが、俺に戦う力がない以上、こいつに助けてもらうしかないんだよ」
俺の言葉を聞いたロゼは、何故かまた俺に抱きついてきたかと思うと、耳を俺に擦り付けるようにしてきた。
……無表情だから、どういう感情でそうしてきているのかが分からないんだが、また甘えてきてるだけか?
「どうした? ロゼ」
「……こんな魔物より、私の方がいいです。触り心地だって、絶対私の方がいいです」
「くぅん」
ロゼの言葉を聞いた魔物の狼は、まるで自分の方が触り心地がいいよ! とでも言うように、ロゼの真似をして俺に耳を触らせようとしてきた。
いや、ロゼはいいけど、お前はデカいんだからやめろよ。普通に危ないぞ。
「どっちでもいいから、まずはさっさとこの街から出るぞ」
ただでさえ魔物で図体がデカいんだから、どうせ騒ぎになる。
なら、人が少ない早朝にさっさと街くらいは出た方がいいはずだからな。
「…………分かりました」
「わん!」
なんでロゼはそんな渋々って感じなんだよ。
……と言うか、今更だけど、狼や魔物って呼び名じゃ不便だよな。
これから、俺やロゼのためにも一緒に居てもらうんだから、名前でも考えるか。
そう思いながら、アイリス様とあの森から降りてきた時と同じように、俺は狼の背中に乗った。
「ロゼ、おいで」
「……はい」
ロゼは背中をピッタリと俺にくっつけるようにして、俺の前に座ってきた。
耳がぴょこぴょこと動いて、まるで触ってくださいと言ってきているようだ。
「耳、触ってください。こんな魔物より、絶対私の耳の方がいいです」
いや、実際に言ってきた。
魔物の方の毛を掴んでいないと振り落とされそうで怖いんだけど、ロゼがちゃんと掴んでくれてるっぽいし、まぁ、大丈夫か。
こいつも俺を振り落とすような速度でいきなり走ったりはしないだろう。
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