51話 ベーテリウス海賊団2

51話 ベーテリウス海賊団2



 カインが人だかりに近づくと、その姿に気づいた一人がこちらに近寄ってくる。



「頭、ご苦労様です!」


「おう。ひさびさにお前の声を聞いたよ、ツヴァイ」


 カインに名を呼ばれた男性は、筋肉隆々で背もウルーガと同じくらい高くジャスティスは感心したように目を丸くしツヴァイを見上げてしまった。


 ジャスティスの視線に気づいたツヴァイがジャスティスのほうを見ると、


「頭、その方達は?」


 と、ザンパと同じような反応を見せたので、カインは可笑しくなって堪らず吹き出した。



「ハハハッ、お前ザンパと同じこと聞くんだな。コイツらは俺の連れで、でかいのがウルーガ。ちっこいのがジャスティスだ」


「あ、よろしくお願いします」


 突然に話を振られたジャスティスは妙にかしこまって丁寧なお辞儀をしてしまう。


 その様子を見たその場にいたカインたちは互いに笑い合った。




「カーくぅ〜ん!」


 しばらくお互いの事を話し合っていると、奥のテントから女性とも男性とも取れるような間延びした呼び声がし、ジャスティスはそちらを見る。



「お久しぶりねぇ」



 胸だけの上着に腰巻き、下は布を巻いたような膝下までのズボン。足首から足の甲まで格子状に巻いた動きやすい靴――まるで踊り子のような出立ちの背の高い男性が足取り軽くこちらにやってきた。



「おう」


 カインが短く面倒くさそうに返事をすると、



「なーによ。つれないわね」


 言いつつ、背の高い男性は肘をカインの肩にかけて空いていた片手はカインの顔面に何かをねだるように手のひらを上に向け、


「報酬は?」


 と、満面の笑みで聞いた。



「…今回の報酬は色々あって無(ね)ぇんだよ」


「どういう事よ?」


 踊り子のような人の顔色が変わり急に真顔になると、


「報酬は……ほらっ、コイツらだよ!」


 カインは少し慌てたように踊り子の人の手を払いのけてジャスティスたちに助けるように視線を投げた。



「……『コイツら』ァ〜?」


 踊り子、見た目からして男性であろうその人は怪訝な表情でジャスティスとウルーガを見る。



「あらまあァァ!」


 男性はジャスティスたちを見た途端、急に顔つきが変わり両腕を左右に広げ、


「やだッ、かわいいおぼっちゃんたちねぇ!」


 と言いながら今度は手のひらを組み合わせウットリするように自身の頬にあてた。その仕草は若い女性そのものでジャスティスとウルーガはキョトンと不思議な表情になっていた。



「あなたの名前は?」


 男性は身を乗り出しジャスティスの手を素早くとりブンブンと縦に振ってくる。どうやらそれは握手のつもりのようで、


「え、あ。ぼ、僕はジャスティス……」

「そう。ジャスティスちゃんね!」


 男性はジャスティスが握手に応えつつ戸惑いながら名乗ると言い終わる前に次はウルーガの手をとってジャスティスと同じように有無を言わせない握手をして、


「じゃあ体格の良いぼくの名は?」


「……俺、ウルーガ……」

「まあかわいい。ウーちゃんね!」


 にっこりと笑った男性は少し離れて、高貴な女性が行うような気品なお辞儀をジャスティスとウルーガに見せて、


「あたしはルキナよ。よろしくね!」


 そう言いジャスティスとウルーガにウインクひとつを投げつけてきた。

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勇者のお仕事二巻前編【旅情激闘編1】 伊上申 @amagin

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