第3話いよいよ新緑の季節

 緑が眩しくなって、ああ、初夏に入るんだと思ったのは、つい昨日のこと。この街でやっと一ヶ月半が過ぎようとしている。ゴールデンウィークが、無事すぎて、あたしはのんびりと、こうして作業と、休日を繰り返している。

 ただ山間ということもあって、雨の日には気温が下がるので、まだ長袖は手放せない。それでも新たな街で、新たな季節を迎えるのは、何度経験しても高揚感とは、斬っても切り離せない。あたしはもう何度、これを経験して来ただろうか。

 新しい出会いと、新しい別れ。繰り返しているのが、あたしだと言える。でもあたしは今、ある人に伝えたい。症状が改善したこと。その人には迷惑だけをかけてきた自覚が、ある。でも今は電話を持っていない。だけどいつかは持てると信じて、今はただ頑張ることで、恩返しがしたい。

 自然の中に帰っても、最初は夜が明けるなんて、信じられなかった。だけど今は長い夜でも、いつかは夜明けが来ると信じられる。だからあたしは頑張りたい。今はお金をためて、故郷に帰りたかった。

 第二の故郷にも帰りたい。観光地周りもいいけど、友達と会いたい。笑い合って、ご飯を食べて、思い出話をするのもいい。その時こそ、またあの地方に帰ったと言えるのではないか。そう思った。今はそれを目指して、少しでもお金をためたい。できれば来年中には、一度帰って、笑い合いたいから。

 でもすごいことも起きた。作業が軽かったからか、あたしはこの前、初めて半日、作業に出れた。これは快挙と言える。だから今は体調を元に戻して、これからを頑張りたい。それだけが楽しみだった。

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