第2話 消えた男
近くの集落の人間は、地味な色のつぎはぎだらけの着物を、腰までたくしあげて着ている、足は素足かステテコを
これは山に入るには標準的な服装だった。
今は、2023年だから。
シロのいる時代から170年ほど未来に来ていた。
彼の名前は、
5日前に部の仲間と山に登りに来ていたのだが、崖から滑落して仲間と
怪我は擦り傷程度で済み、直ぐに仲間に合流できると思っていたが、歩けば歩く程場所が分からなくなる。
その時に胸のポケットに入れていたスマートホンも壊れてしまい、連絡をとる手立てもないまま山の中をさ迷っていた。
すでに遭難事案として捜索隊も出動していた。
水は持っていたが、5日間何も食べず歩き続けていて体力も限界にきていた。
そんな時、白いウサギが大きな野犬に噛みつかれそうになっているのを見付けて、石を投げたのだった。
ウサギは助かったが、神崎は犬に襲われ後ろ向きに倒れた時に、頭を木に打ち付けてしまい怪我をして、ついに気を失ってしまった。
シロは神崎が全く動かないので、心配して暫く彼の周りを歩きまわり鼻でつついていた。
そして、どうあっても動かないと知ると、突然走り出した。
来た道を猛スピードで走る。体力はもどっている。
陽炎のように揺れている空間も突っ切り走った。
そして、人間の住む集落までやって来た。
そこの人達は、粗末な着物を着ている。元の江戸時代の終わり頃の1850年に戻っていた。
シロは、神崎の所に人を連れて行くつもりだった。たが人間が怖くて、草むらから出る事が出来ない。
草の中に白く輝くものを見付けたのは、何時もシロを狙っている佐吉だった。
佐吉は急いで家に帰り猟銃を取って戻って来た。
出来るだけ銃で撃ちたくはない、毛皮の価値が下がってしまうから。佐吉は、ジリジリとシロに近づく。
シロは、佐吉が近づくのに気付くと山の中へ走り出した。
佐吉は、慌ててその後を追いかけて山の中へ入った。
シロは、佐吉を誘導するために人間に合わせてゆっくり走った。後ろを見ては、佐吉がきているのを確認して走った。
そして、神崎が倒れている場所までやって来た。しかし、そこには誰もいない。
途中、あの陽炎が立ったような空間は通ってこなかった。あの空間は既に無くなっていた。
シロは首を伸ばして辺りを見回したが人が倒れていた形跡も無かった。確かにここのはずだ。
既に未来にいく術は無くなっていた。
佐吉が追いついてきたので、ダッシュで森の中へ入る。佐吉は、シロの姿を見失った。
それからシロは、毎日神崎が倒れた所にやって来て彼の姿を捜した。
お礼もちゃんとできなかったし、動けなくなってたのが心配だった。
何故か、其処に行くと神崎が戻っているような気がしていた。
それは、何年も続いたがやがてシロは老いていき、ついに死んでしまった。
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