第26話
今日の昼ご飯はたらこのスパゲッティだった。お姉ちゃんが作ってくれる料理はどれもおいしい。いつも完璧で、まるでレストランみたいなおいしさだった。お皿洗いを一緒にしてすぐに終わらせる。
「じゃあ再開することにしましょうか。確か、3度目まで話していたわね」
「うん。でも、もしあれだったら話さなくてもいいよ。思い出すの辛いでしょ?」
「ん? そんなことはないわよ。それにこんな機会でもないと過去を思い返したりしないからちょうど良かったわ」
「そう? それならいいんだけど」
決して軽い気持ちで聞いたわけじゃないけど、お姉ちゃんの人生もなかなか過酷な気がする。でも別に気にしていなそうだからいいのかな。
「4回目の人生では、今まで違う学校に行っていたことを反省して華と同じ学校に通おうと思ったの。ほら、その前の人生では華が中学受験に落ちた後にすぐ死んでいたから中学に問題があると思ったの。同じ学校ならフォローも簡単だろうから。まさか華が受かるとは思っていなかったわ。まあでも私が通っていた学校は特に問題もなかったからとりあえずは大丈夫だと思っていたの」
だからお姉ちゃんあの時落ちていたのか。そりゃそうだよな、お姉ちゃんが落ちるわけないもん。
「落ちたことでお父さんに怒鳴られたけど、まさかそれが原因だったなんて当時は思いもよらなかったわ。学校に何かあるものだとばっかり思っていたから。でも結局学校にもそれといった原因は見当たらなかったし、華は死んじゃうしさんざんだったわ。……ああ、そういえばその時に眞渋真依とも仲良くなったわね」
「真依さんと?」
「ええそうよ。あの感じからして華とも関わっていそうだったから、何か分かるかと思って。家にも行ったけど普通にただの良い人だったわね」
「そうでしょ、真依さんは優しいんだから」
お姉ちゃんも真依さんと仲良くなっていたなんて。それに私より先に家に行っていたなんて知らなかった。あの時は、いやあの時も期待に応えようと必死だったから周りなんて見えていなかった。
「……まあいいわ。それで、華が死んだ後にようやく気づいたのよ。原因はお父さんたちなんだって。その後、お父さんたちと……いろいろあって死んでしまったのよね」
「そ、そう」
「5回目の人生ではまた華と一緒に通うために受かったのに、華が落ちるから結局一緒に通えなかったわね。でも、華は友達と一緒に遊んだりして前より楽しんでいると思って安心してたの。家出した時は正直焦ったけど電話が来て眞渋さんの家にいたことが分かってよかった。あの両親から離れてくれてよかったと思っていたのに、どうしてその家から出て行ってしまったの?」
「——あの時は一緒にいたら辛くなっちゃうと思ったから。それに……」
一緒にいすぎると眩しすぎて身が持たないと気づいてしまったから。だから自分もそれに値する何かを求めた。結局お姉ちゃんに邪魔されちゃったけど。
「それに何? あの人たちにも何かひどいことされたの?」
「違う。そうじゃなくて。っていうかどうしてお姉ちゃんもあそこにいたの?」
「えっ? ……たまたま通りがかったら華がいたのよ。それより私が死んだ後はどうしていたの? なんで戻ってきちゃったの?」
なんかお姉ちゃんが焦っているような気がする。でもどうして自殺したんだっけ? ……お姉ちゃんがいてもいなくても何も変わらないことに気づいたからなのかな。でもこんなこと言えないよ。
「……まあお姉ちゃんがいないのが嫌だったからかな?」
「そう。まあそれで今に至るって感じかしらね。こんなものかしらね」
こう聞いていると私は全然お姉ちゃんのことを知らなかったんだなって思う。本当に私は何も見ようとしていなかったんだな。
「話してくれてありがとう。知らない話をたくさん聞けて良かった」
「それなら良かったわ。でもこれからはずっと一緒にいられるから知らないことはなくなるわ」
「そうだね。——それにしてもどうしてお父さんたちも自殺しちゃったんだろう? 今までこんなことなかったのに」
そんなことを考えていたなんて気づきもしなかった。もし気づいていたら、……私は何をしただろうか?
「……なぜかしらね。でもそんなこと考えても仕方がないわよ。過去は忘れてこれからのことだけ考えましょう。」
「……そうかな?」
「そうよ」
そうしてまた何もしないまま今日を終える。
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