第25話
お姉ちゃんと一緒に寝るようになってから数日が経った。その間私は学校に行っていない。お姉ちゃんが私一人の外出を禁じたからだ。いつ死のうとするか分からないからとお姉ちゃんはずっと私のそばにいる。このままでいいのだろうかなんて思う時もある。でもお姉ちゃんがそうしているからきっと大丈夫なんだろう。
そんな風に今までの人生で一番何もしなかったと言っても過言ではない日々を過ごしているうちにふと聞いてみたいことができた。お姉ちゃんは私が死んだ後どうしていたのだろう。私が死んだときもお父さんたちが死んだときの反応と同じようにいつも通りだったのだろうか。一人で考えていても答えは出ないので少し怖かったけど思い切って聞いてみることにした。
「お姉ちゃん。聞きたいことがあるんだけどさ、聞いてもいい?」
「ええ、もちろん。何かしら?」
「お姉ちゃんはこれまでの人生で、私が死んだ後どうしてた?」
「……そんなことを聞いても面白くないわよ」
「面白くなくていいから聞きたいの」
そう言い張るとお姉ちゃんは話す気になってくれたようだ。
「はあ、聞いても意味ないと思うけど。……じゃあそうね、まず華は今まで何回戻っているか覚えてる? 何度目の人生かでもいいわ」
えっと、ループした1回目はそれに気づけなくて、2回目でループしていることに気づいたんだっけ。それで、3回目のときに問題を覚えたことでようやく受験に合格して、4回目はそれを諦めて真依さんたちと仲良くなったはず。で5回目が今だから、かれこれ6度目の人生ということになるのか。
「5回ループしているから、これが6度目の人生になると思う」
「私も同じだわ。じゃあ、初めから話すとしましょうか。——ループしていない最初の人生では、どうして華が自殺をしたのか全く分からなかったから疑問で仕方がなかったわ。でもそれはどうしようもないから、あの人たちの言う通りに一番いい大学に進学してバイトも始めたの。でもそこで、私としては普通に接客していたつもりだったのだけれど、よく分からない客に執着されてしまってある日殺されてしまったのよね」
「そ、そうだったの?」
「ああ、別に気にすることないわ。対応できなかった私が悪いだけなのだから。それで、次に目覚めたときは本当に驚いた。死んだはずの華がいて、しかも小学生に戻っているようだったから何事かと。でもまあ、それを悪い夢でも見たのかと思ってそのまま過ごしていたらまた華が死んでしまってショックだったわ。そこで、あの夢を信じていたら止められていたかもしれないと、生まれて初めて後悔したわ。その後は同じように大学に行ったもののバイトはしないでそれを忘れるように研究に没頭していたわ。そうしたらある日突然殺されたわ。私の研究で困る誰かがいたのでしょうね」
「そんなことが……」
「次に戻ったときはチャンスだと思った。華が死んでからの人生はあまりに色がなかったもの。それに今度こそ華を救って後悔を無くそうと思って、華に話しかけたり気にかけることで自殺を止めようとしていたの。過去2回は、どっちも中学3年で自殺していたからそれまでに原因を特定して対処しようと思ったのに中学上がる前に死んでしまったから悲しかったわ。その辺りからもしかして華もループしているのかと考え始めたの。華だけが他の人と違ってあまりに前と行動が違いすぎるから。その後は、またループできると考えて心理学とかいろんなことを学んだの。幸い学校の勉強はすでに終わっていたから時間だけはあったから。でも無理に勉強していたから、ある日眩暈がして気が付いたら車にはねられて死んでしまったわ」
お姉ちゃん……死にすぎじゃない? いや、私が言えたことじゃないとは思うけど、そんなものなのかな?
「それで、……あら、もうこんな時間だわ。続きはお昼ご飯を食べてからにしましょうか」
そう言うとお姉ちゃんはお昼の用意にキッチンへ向かっていった。それにしても私が死んでからそんなことがあったのか。てっきり私は、自分が死んだらすぐにループしていると思っていたから途中から自分が死んだら皆がどう思うのかなんて気にしなくなってしまっていたような気がする。
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