幼少時の謎体験

阿山晃弥

扉の向こうは、どこに続いていたんだろう

※四歳くらいの時の謎記憶です

※脚色はしていませんが幼児時代の記憶なので何かしら補正?してしまってるかもです



 小さい頃、私はF県F市S区に住んでいた。私はマンションに住んでいて、隣には病院があった。

 父は会社員、母はパートで留守がちだった。

 兄が二人いたがその日は遊びに出かけていなかったと思う。幼い私の面倒を見てくれていたのは同居していた母方の祖母だった。

 祖母が家事をしている間、私は一人で部屋で遊んでいたが、次第に退屈してきた。

――そうだ、おかあさんにあいにいこう。

 私は靴を履いて家を出た。祖母には外に行くと伝えたかどうか記憶にない。

 マンションのエントランスを出て、母のパート先の店まで歩こうとした。しかし、なぜか私は反対方向に足を進めた。マンションの隣の病院、その隣を見ると、自分のマンションよりも小さい共同住宅と思しき建物があった。あまり新しくなくて、白い壁は所々汚れが目立っていた。

 錆びた外階段が目に入った。

 私は、一番上まで行ってみたくなってカンカンとその階段を上った。

 一番上の階に到着する一歩手前の踊り場で、私は二人の女の子に出会った。たぶん小学生――高学年くらいだったと思う。二人は階段に座って行く手を阻んでいた。一番上の階には、茶色い鉄製の扉があるのが見えた。私は、その扉を開けて向こうに行きたかった。

 お母さんに会いに行くと伝えると、二人のお姉さんはお母さんが帰ってくるまでここで一緒に遊ぼうと言ってくれた。

 しばらく二人と遊んだ。何をして遊んだのかは覚えていないが、私は退屈になって泣き出した。二人の肩越しに見えている扉を開けて向こうに行きたかったのだと思う。二人はそこをどこうとしない。

 泣きながら、お母さんに会いたい。と言うと、二人は階段を下りるよう促した。

 家を出た時は昼だったと思うのに、階段を下りると世界はオレンジ色に染まっていた。理由はわからないけれど、急に怖くなって泣きながら歩いた。

 だいぶ長いこと歩いたような気がした。前方に、スーツ姿で歩いてくる男の人が見えた。

 父だった。

 父は私を見てニッコリ笑って、抱き上げてくれた。

 すごく安心したのを覚えている。

「◯◯ちゃーん!」

 名前を呼ばれ振り向くと、私が歩いてきた方向からたくさんの人が笑顔でやってきた。

 私がいなくなったので、裏山を捜してくれていたそうだ。

 裏山と呼んでいたけれど、今地図で確認してもそこに山などない。鬱蒼と草木の生い茂るちょっと大きめの公園は昔はたしかにあって、夏はそこでセミを捕まえたりして遊んでいた。自宅マンションからは少々離れていたため、一人では行くなと言われていた場所だった。

 自分はそこへは行ってない、病院の隣の建物の階段で二人のお姉さんに遊んでもらった――その話を兄にすると、笑って「病院の隣には何もないやろ」と言った。家族全員、誰も相手にしてくれなかった。

 次の日、病院の隣を見に行くと、空き地になっていた。

 今でも鮮明に覚えているのに、夢でも見たっちゃろと片付けられてしまう。

 謎記憶です。何だったんだろう。


※追記

 そういえば、一番上の階に行くまで、他の階への出入り口的なものは全く記憶にないです。記憶の中では誰か住んでるような建物となっているけど、二人の女の子以外、誰とも会わなかった。謎です…。

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幼少時の謎体験 阿山晃弥 @okiwotasikani

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