第3話 母への報告
私なんか、か……やけに自己肯定感の低い人だなぁ。こんな気持ちのままコラボしたってつまらなくなるだけだしどうにか上手いこと彼女の気持ちをのせないと。
さてさてさ〜て、なんて送ればいいかなぁ。どうすれば自信を付けさせられるのか……いっそ一ファンとしてファンレターみたいな文章送ってみようかなぁ〜なんて。一人のVTuberとしてのコラボ依頼に個人の感情を持ち込むとか……いやでも自信を持たせるにはありかもしれない。そうと決まれば話が早い!さっそく文章作っていくぞー!
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狐火さん。「メリットがない」だの「私なんか……」だの好き勝手言うのをやめてください。私はあなたの動画を見て、一視聴者としてあなたを推して、あなたとコラボがしたいと思ってあなたをコラボにお誘いしたんです。
私はあなたのVTuberとしての容姿と声、性格。そして、時より見せるあざとさが好きです。あなたに魅せられたんです!
あなたのリスナーだってそうじゃないですか。あなたの容姿、声、性格、コンテンツを好きになって時間を割いて動画を見てくれている。あなたが自らを卑下するのは彼らの推しに対する想いへの冒涜です。彼らの好きの否定です。彼らの推しであるあなたが一番やっちゃいけないことです。それをちゃんとわかってください。
これまできつい言葉で好き勝手言ってすみません。でもあなたの言葉が納得出来ませんでした。他でもない推しがそんなことを言っているのが凄く悲しかったんです。本当にすみませんでした。
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これでいいかなぁ……なんか上から目線になっちゃってる気がする。でも卑屈すぎてイライラする!例え本人だとしても私の推しを貶すんじゃないよ!
返信作業が終わったらshortのストックもあるからコラボ決まるまで暇だなぁ……お母さんに報告しに行くか。あなたの娘の唯はしっかりやれているよ!夢が叶いそうだよって!
父親と鉢合わせたら最悪だけどこの時間ならさすがに仕事あるから家にはいないだろうし、まぁ家で会うなんてことになるなんてありえないでしょ!
"ゾクッ"
何か今せいだいにフラグが立った気がする。それに寒気が……よからぬ事が起こらないといいけど。家で父親と鉢合わせたりして……まさかね。
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よし、車もないし大丈夫そうだな。
"ガチャッ"
『んっ///あっ///』
「え?」
最悪なタイミングで帰って来ちゃったよ、どうしよう。それにしても、フラグ回収までの流れが完璧すぎやしませんかね……
まぁ父親はお楽しみ中みたいだしさっさとお母さんに報告して退散するとしよう。父親、再婚でもするのかなぁ。アレから一年くらいでお家デートとか意外とあいつモテるのか?
「お母さん、夢を叶えれたよ。父親とは正直めっちゃ仲悪いけどおじいちゃんおばあちゃんの家で仲良く楽しくやれてるよ。だから安心してあっちでのんびりしててね。来れたらまた来るから今日はここら辺で、お母さんまたね。退散退散。」
忘れ物は……ってお供え物のこと忘れてた。私はよく知らないけどおばあちゃんがお母さんは菊の花が好きって言ってたから買ってきたんだった。危ない危ない。このまま持って帰って買った意味がなくなるところだったよ。
「うん、今度こそこれでよし。帰ろ帰ろ〜」
"ガチャッ"
私まだ扉開けてないしこの音が鳴らすとすれば……って誰だこいつ?
「ど、どちら様?」
『私は健ちゃんの彼女だけど……どちら様はこっちのセリフよ!あんたこそ誰よ!』
「え〜っと、この家の持ち主の娘ですけど……」
な〜んかアクセサリーの趣味悪いし感じ悪いわぁ〜ゴテゴテで成金感がすごいなぁ。これってもしかしなくても私の父親に買わせてるんだろうなぁ。これは……金ヅルにされてるパターンかな?
「あなたが健ちゃんの言ってた母親を殺した子どもってやつね。まぁ聞く限りただ運が悪かっただけなんでしょうけど私には関係ないもの、健ちゃんに何かを言うつもりはないわ。今の周りが見えていない状態の方が金をせびるには都合がいいもの。あなたにはご愁傷さまとでも言っておきましょうか。」
「それじゃ私はもう帰るので、それでは失礼します。ごゆっくり。」
ありゃりゃ〜冷静さを失ってあんなクソみたいな女に騙されて……とことん上手くいかない人だなぁ〜
「まぁ私には関係ないことか。あいつと関わる気なんてサラサラないしね。」
でも、上手くいかないことへの苛立ちの矛先が私に向いた時のことも一応想定して準備はしておかないとね。
そんなあいつに何かの拍子に私の活動バレたら炎上待ったなしだよ。配信活動をやっていく上でそういう状況もあるだろうし今のうちに法律面での味方を探しておくか……
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結衣「お母さんは菊の花のどこが好きなの?」
祖母「由紀ちゃんは菊の花は美味しいから大好きって言ってたわね。あとは菜の花なんかも好きみたいよ。」
結衣「両方食用花……お母さんって食いしん坊なのか?」
祖母「食べるのが大好きな娘ではあったわね。」
結衣「さいですか……」
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