5 ようこそカルマファミリーへ
「そいつ・・・・・・
金は預かってねぇか」
大金、おかねーー
(そうだ! 書類・・・・・・!)
ハッとして、すぐにリュックから封筒を取り出す。
預かっていたのをすっかり忘れていた。
中身は確認していないが、封筒の軽さからして、なんとなくこれはお金ではないのだと察する。
「・・・・・・最悪だな。」
どういうことが書いてあるのか気になり、
(うそ・・・・・・。)
借金の、連帯保証人の項目を指差される。
そこにはたしかに、
「お前、1億今すぐ一括払いできそ?」
「私、こんなのいつ書いて・・・・・・」
「ま、記録が残ってるってこたァ、お前が
「今すぐは無理ってンなら、臓器売るなりなんなりしてもらうケド。どんな部位でも、わりと熱烈なマニアはいるぜ」
しかし。
「悪ィが嬢ちゃん、こればっかりは俺にもどうしようもできねぇんだ。借りたものは返す、その逆もまた然り。ファミリーの掟だからな」
さあ嬢ちゃん、どの道を選ぶーー
残酷な声が、
「私、何も知らなかったんです! なのに、こんな、こんなの・・・・・・あんまりじゃないですか!」
「マフィアの世界に足を踏み入れたんだ、タダで帰してもらえると思うなよ」
とめどない涙が、溢れて溢れて止まらない。
「チッ、めんどくせェな。ならなんだ、騙されて可哀想って言われればテメェは満足か?
・・・・・・そうじゃねェだろオレたちは。四面楚歌の状況で、五面目を創って飛び込むのが人間じゃねーのかよ」
・・・・・・言われてみればそうかもしれないと思った。
ーーどうしてプレゼン出張に行くのか、
ーー努力して楽器店に入社したのに、雑用ばかりの毎日に嫌だと言い出せなかったのも私。
自分が
(私は多分、認めたくなかった)
人を信じていたかった。我慢の先に、みんなから褒められて、報われる未来があると思っていた。
(きっとそれが、ダメだったんだ。悔しいな あ)
気づくのが遅くなりすぎた。
今までの
「もう一度、"
ーー四面楚歌の状況で、五面目を創って飛び込まんとする人間になれ。
さっきの
"私"は、
「誰かに生き方を決められて死んでくくらいなら、自力で生きて、限界まで頑張るほうがずっといい!」
お、と2人の視線が、
「私、なってやりますーーマフィアに。
"人を殺さない"マフィアになります!」
あと、と
「
2人は顔を見合わせる。
「決まりだな」
「決まりスね」
「合格おめでとう。お前は今日から、新設の陽動部隊配属だ。」
「化けの皮を剥いでみれば、すんげー自己チューなのな」
薄く笑っていた。
「悲劇のヒロインなんざ、ウチにはいらねェ。
ファミリーの一員としての覚悟を持て。
常に"与えられる"側だったお前に、今ここで
別れを告げろ。」
「つーわけでお前今日から、陽動の
突然の改名に、
ええ! と驚かされる。なんだか拍子抜けだ。
「改めて、ようこそ。カルマファミリーへ」
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「ボス、ああは言ってましたけど、本当に良かったんですか?」
「いいんだ
ーー何よりあの子、
「しんぱい・・・・・・? あー、アイツが銃を握る前に死んじまうんじゃねェかって心配は、一応しといてあげてますよ」
最近体も態度もめっぽうデカくなったカルマファミリーのアンダーボスだが、これでも
「あと、なんでアイツのためにわざわざ陽動部
隊なんて用意してやったんスか?」
「向いてると思ったんだ。
ちょっと聴かせてもらったけどよ。
プレゼン、上手かったろ。お前も感じてる
はずだ。
強面の野郎どもに囲まれても、臆すること
なく堂々としてた。普通の小娘にできる芸
当じゃねぇな」
それに。
「俺ァ女には、優しいよ」
げー、と
「ボス、ひょっとしてあんなちんちくりんな女がタイプなんスか?」
「お前はまーたすぐにそうやって茶化す!」
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