第11話




「おっひさあー」

 ななは片手を挙げ三人に言った。じろりと視線を寄越されるだけだった。遅刻して来たななを怒っているのかもしれない。

「そんなに怒らないでよ」

 りんは激しく頭を上下左右に振り、口に充てがわれていた布を無理やり外した。

「ばかっ、縛られてるんだよ、アンドロイド達がまた来るぞ!」

「んーんーんー」博士もみかも呻いていた。

 そういうことか。なんかこういうの見たことあるな、とななは思った。

「もしかしてあたしってみんなの救世主なの?」

「そーなるな」りんは言い、上半身を捻って縛られている両手を見せた。ななは回り込み早速こねこねした。

「まずい……」

 ななは言った。

「どうした?」

「この結び方、難しくて解けない」

 ななの背負ってる機械で切れば良いだろ、と言ったあとでりんは気付いた。ななに緻密性を求めるような作業は危険だ。

「おい……やっぱ、切るのはやめろ」

「大丈夫、腕が落ちないよう気を付けるよ」

 ジャキン。

 三人の拘束が無事、解けた。ぽかっと軽く頭を叩かれた。

「いたあっ、なにするのよりんちゃん」

「……あのなあ。機械を本来の用途、以外で使用するのは厳禁。だが時と場合による、その際はきちんと」

 博士が割って入った。

「まーまー、お陰でみんな助かったわけだからさ」

 みかがにっこりと笑って頷いた。

「ななちゃんありがとう」

 ななはてへへと照れ笑いした。

「二人ともこいつに甘いんですよ、おかげでこっちは危うく片腕を失うところだった」

「冗談だよお」

「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ」と言ったあとりんは向こうを見ながら言った。

「でもありがとな、おかげで助かった」

 ななは笑った。そして自由になったばかりの三人に訊いた。

「ねえねえ、ところでみんなここで何してたの?」

 りんの微笑が、苦虫を噛み潰したような表情へと変わった。

「ぜーんぶ、この男が悪いんだよ、ね博士?」

「いやー、はっはっ」頭を掻き博士は笑った「すまん」頭を下げた。

「どういうことなの?」

「確信ありげにずんずん進んで行ったんだよ、まるでどっかの馬鹿みたいにさ。『大丈夫なんですか?』ってわたしが訊いたら『大丈夫だ』って言うわけ」

 そこから先はみかが言った。

「そうしたらいきなり物陰からアンドロイド達が襲い掛かって来て、わたしたち三人とも捕まっちゃったの」

 博士は面目ないと言った。りんは早く表へ出ようと言った。

「ここは危険ですよ。既にテロ組織の息が掛かっている。今すぐ爆破されたっておかしくない」

 そこでスマホが鳴った。誰のだ? ななのだった。そしてまだ着信操作をしていないのに勝手に通話へと切り替わった。

「そこから先はこのわたしが話そう」

「……誰?」

 りんは音声だけのそいつに言った。

「誰?」

 みかも言った。

「だあれ?」

 ななは言った。

「おい、お前はさっき話しただろ」

「ああ、さっきの悪い人かあ」

 悪い人。今回の事件の首謀者である、博士の元同僚だ。



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