鬼神《ホルダー》
「ん…ここは…?」
目が覚めると、そこには何も存在しない白い空間が広がっていた。その空間には見る限りは地平線が存在せず、どこまでも広がっているように感じる。
「おーい…!誰かいないの?」
何も無い空間だからこそなのか、声が反響することはなく、ただただ虚空に消えていくだけだった。
『ふぁ~…なんだよぉ~!
せっかく僕が気持ちよく寝ていたのに、起こしに来た奴無礼な奴は……』
「き、君は…誰なの…?」
突如なにもな存在していない空間から一人の人物が姿を表した。少年とも少女言えないその不気味な存在に僕は恐怖しか感じなかった。
『僕かい?そうだねぇ…僕たちのことは『
鬼神ホルダーと名乗った者はどこか、機嫌が良さそうな気がした。
それをどうして感じたのかはわからない。だけど、なぜか危険を感じたのは確かだった。
「
『まさか、鬼神ホルダーを知らないの…!?』
「……」
奪われる立場だった僕には、力とは無縁の関係だった。だから鬼神と言う力が世界能力以外にも力があるということを聞いたことがなかった。
『あはははははは!!これは傑作だね!
僕たちのことを分かっていないのに、この僕を使う?ありえないよ!?
う~ん…それにしても昔よりもだいぶ力が落ちているような気がするけど…君、僕に何かした?』
「っ...!?」
殺気の籠った声に、何も答えることができなかった。いや、答える権利を与えられなかったと言った方が正しいのだろうか。
『ふ~ん、まぁいいや…君ぐらいの相手ならどうとでも対処できるだろうし』
確かに、彼なら僕のことなんか片手でひねり潰せるだろう。そんな迫力が彼にはある。だが、口には出してはならない。彼の機嫌を損ねれば、間違いなく僕はこの場で殺されてしまうから。
『何から教えた方がいいのかなぁ~…まぁまず最初は僕たち『鬼神』のことから知ってもらう方がいいよね~』
「はい!」
ここは、彼の言う通りにしていたほうが見のためだと直感で感じ取る。
『いい返事だね…!そうゆうの嫌いじゃないよ、僕』
この選択は間違っていなかった様だ。相手は僕のことに好感を持っている。なら、この好感を維持していけば殺されることはないだろう。
『まず、僕たち『
「欲望…」
『そう!欲望だ!欲望こそが、人を強くし僕たちも強くしてくれる唯一の物だ!』
天に手を掲げ、高らかに放ったその言葉はどこか危うく感じる物があった。それがなぜだかは分らない。だが、一つ感じることは、この鬼神に欲望をすべて飲み込まれた時何かが起こるということだった。
『それに対して.君の欲望は小さすぎる。そんな欲望じゃ何もできないじゃないか』
「一体何を言……」
『駄目だ駄目だ駄目だ!そんな欲望じゃ……』
「……」
鬼神には、僕の声は一切届いていない。と言うよりも、聞く耳を持っていない。今の状態では、まともに会話することさへ困難なのは明白だ。それに、彼が何を話しているのかさっぱり分からなかった。
『あぁ…そうか、これは僕に試練を与えているんだね!』
「っ!?」
今の一言でこの空間の雰囲気が一気に様変わりし、突如鬼神の体に鎖が巻き付き、w拘束され身動きがとれなくなっていた。
『あぁ、これか…僕を縛っていた物は…こんな物で拘束されると思われている様じゃ困るんだよねぇ。僕たちはそこまで甘く見られているみたいで…嫌なんだよ』
「えっ…!?」
鬼神は無理矢理拘束を突破り、こちらに詰め寄って来る。
「く、来るな…」
拘束が解かれるたびに新たに鎖が鬼神を拘束しようとするが、それをものともせず、こちらに詰め寄ってくる。
『君じゃ駄目だ…だから、僕が君に成り代わりこの世界を破壊へと導いて行こうじゃないか...!』
一歩…鬼神が歩を進めると、世界が白から黒へと変わって行く。
「僕は僕だ…!お前じゃない!」
『言うねぇ…!なら、僕が後三歩でそちらに行くとしよう。それで、君が意識を保てると言うのなら、僕は君に従うとする。ただし、その間に意識を失うのであれば僕が君の体を使わせてもらう』
一歩…意識が刈り取られそうになり、世界が暗転する。
「くっ…!」
『その調子で大丈夫かい...?』
二歩…さらに意識を刈り取られ、立っていることさへ困難な状態となり地面に膝をついてしまう。
『やはり、君は駄目みたいだね…欲望がなさ過ぎる。それで僕らをコントロールしようとしているのが笑えるよ』
三歩…ついに、意識を刈り取られ気を失い地面に倒れてしまう。
『......僕の見込み違いだったか...まぁそれならそれで、僕が外界に干渉できる様になるからいいんだけどね...!さぁ、久々の外界だ...存分に楽しもうか!』
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