終わりの始まり
「本当にやるのですか?」
「私がやれと言っているのだ、君にはこの意味が分からないかね?」
「……わかりました、ラピテルローズ第一フェーズに移行します」
「これで世界は……」
詰まるところ、戦争の真っただ中だった。この戦争はいずれ1000年戦争と言われる様になるのだが、今を生きているこの時代の人たちは知ったことではないだろう。
「はぁはぁ…そんな、あのきれいだった街並みがこのような風になり果ててしまっているなんて、早くしないと…本当にこの世界が滅びかけない!」
今のこの世界には二つの勢力が存在しており、世界能力主義派の陣営とそこからあぶれた者たちの勢力になっている。
「やっぱり奪うってのはきもちいいなぁ~」
「ですね!お頭の言ってた通り…このガキかなりため込んでましたぜ!」
「だろ?まだわけぇ年なのに気の毒だなぁ。
まぁ俺らに使われることに喜びながら死んでいくだろう」
「「「ハハハハハハ!!!!!!!」」」
「かえ…して……」
「んぁ?なんだこのガキ、まだ息してんのか?」
「その…お金は…お母さんのため……」
「ガキ、年は?」
「え?」
「お前の年だよ」
「10…歳?」
少年は困惑しながらも自分の年齢を相手に伝える。
「そうか...ならいいこと教えてやる。今のこの世界は能力実力主義になってんだよ。
だから世界能力を持っていないお前はド底辺なんだよ!」
男は言葉を吐き捨てると同時に、手に持っていた大剣を大きく振りかぶる。
その大剣が子供の首に向かって振り下ろされ、子供の首が……
「やめなさい!」
飛ばずに、大剣が首筋ギリギリのところで止まった。
「んぁ?んだ、お前?
俺の楽しみを邪魔しておいてただで済むと思っていないだろうな?」
「まだ継承の儀をやっていない子供を狙う事は、さすがに看過できないわ」
「ハハハ!
なんだお前、正義の味方のつもりか?こんな世界で正義の味方ずらしてどうする!今は世界能力主義だ!強いやつが正義なんだよ!それを、教えてやるよ!フード女ァァァ!!!」
今にも襲ってきそうな勢いだが、それをものともしない精神で、相手を見据える。
「あなた、名前は?」
「あぁ?今から死ぬ奴に名前なんか名乗ってどうすんだよ!」
「そう…残念だわ……」
男が地面を蹴り大剣を振り上げる。一秒も満たない時間で、間合いを詰められるのはあまりにも――
「遅いわね…」
《
紫電の一閃が男を捕らえ天に上る雷となる。
「ガハッ!」
大剣を持っていた右腕が宙を舞い血しぶきを上げる。
男は地面に尻もちをつき、剣を首筋に充てられてしまう。
「もう一度聞くわ…あなた名前は?」
その鋭い眼差しは、解答せよと命じているようにも思えた。それを感じ取ったのか、男は従順に名前を語った。答えなければ死ぬということを悟ったのだろう。
「レグルス…レグルス=フォルフィリスだ」
「そう、レグルス=フォルフィリス」
「そういうお前は…」
「エーテル=ロッド=ミカエルよ。
覚えておかなくていいわ…」
「ま、まて!エーテルって……」
「話は終わりよ。レグルス=フォルフィリスに審判を下す」
「まて!やめろ!」
男は懇願するが、もう遅い。必死にこの場を離れようとしている。しかし、片腕を飛ばされ尻もちをついた瞬間から男は身動きが取れなくなっていた。
男は女の名前を聞いて恐怖してしまったのだ。の瞬間に男の負けは決まっている。
「逃さないよ…子供にやっていたことに比べればまだましよ
《すべてを喰らえ・グラトニー!》」
手に持っていた剣を地面に突き刺し、構築式を形成させる。その構築式は男の下にも現れ、さらに構築式の中かドス黒い化け物が現れ男をどんどん喰らい尽くしていく。
「やめろぉぉぉぉ!!!
俺はこんなとこで死んで言い男じゃないんだ!!!!」
男の声は虚空へと消えていき、最後の抵抗も虚しく《グラトニー》にすべてを食い尽くされてしまう。
《グラトニー》に食い尽くされた者は誰からの記憶にも残らない。ただの人形へと成り下がったのだ。
「これで、残りの残党共も何もできないでしょう……」
赤く染まった空を見上げ、エーテル・ロッド・ミカエルと名乗った少女は静かに決意を固める。
「この世界を私が…!」
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