第53話
決戦艦隊の決死の足止めもむなしく、セルイーター・ワイズは徐々に前進する。
雄士はまだ立ち上がらない。
だが、彼はまだもがいていた。
『雄士!お前が言ったのだぞ!
妾を一人にしないのではなかったのか!』
細胞の暴走必死に抑えながら、小鳩は叫んだ。
それに触発されるかのように、雄士の耳に装着された通信機から声が届く。
『雄士!お願い、帰ってきて……!』
理華の声と、小鳩の声が彼を突き動かす。
「お、ぉぉ......っ」
地面に膝をついていた足が、大地を踏みつける。
背中に積み重なった重圧をはねのけるかのように、セルバスター・フレイムは、如月雄士はゆっくりと立ち上がった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
胸の水晶体に、また光が集まり始める。
しかし、立ち上がった雄士の前に、巨大な影が立ちふさがった。
セルイーター・ワイズが、如月雄輝が、胴体から取り出した剣を振りかぶる。
「ダメだ!間に合わない!」
誰もが、絶望の瞬間を思い浮かべた。
後方から飛来した光が絶望を打ち砕く。
アーシャの放った一撃は、ワイズの頭部を打ち砕き、その動きを止めた。
人型に肉体を生成したのが仇になる。頭部に集中した神経系が一挙に破壊されたことにより、ワイズの思考がほんの一瞬停止した。
彼が再生により感覚を取り戻した時、目の前に居たのは、すでに発射準備を終えたセルイーター・フレイムバーストだった。
それでも、雄輝は剣を振り下ろす。
雄士は力を振り絞るようにして、胸に収縮したエネルギーを解き放つ。
「やっちまえ!雄士!」
スペースウォッチの隊員が叫ぶ。
「ぶちかませ!フレイムっ!!」
軍の兵士たちが合唱する。
「頑張って!雄士!」
理華が祈り、小鳩が励ます。
『行くぞ雄士ッ!
これで終わりだあああああああああああああああああああああっ!!』
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
セルバスタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
まばゆい光が溢れ出し、周囲を暖かな色で包み込んだ。
光の中に、二人の子供がいる。
蹲って泣いている子供に、彼よりも一回り小さな子供は駆け寄った。
「なかなおりしよう、おにいちゃん」
「いいの?」
「おれたち、きょうだいだもん」
屈託のない笑顔に、蹲っていた子供は涙をぬぐう。
二人は手をつないで、歩いていく。
そして、光は弾けた。
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