第7話

 大学生活に慣れ始めたころ旧友からSNSへの誘いが届いた。参加すると芋づる式にかつての友人たちと繋がることになってしまって初めのうちは困惑した。名前を見ても顔が思い出せない人や、プロフィールの写真を見てもピンとこない人も混ざっていたけれどきっとお互い様だろう。私はアイコンを集合写真から自分の顔だけ切り抜こうかと考えたけれど、結局当たり障りのない風景写真に設定した。特別な意味を持たないコメントを残しながら目立たないようにその空気に馴染んでいた。


 成人式後に同窓会があることは幹事の役割を担う元クラス委員の投稿で知った。『行きたい』『楽しみだね』といった前向きなコメントのなかに『時間が合えば参加します』というリナのコメントも流れていった。私は参加することはないだろうなと思いながらも楽しみだと書き込んだ。自分の言葉さえ画面越しではあまり現実感がなかった。


 リナは誰もが名の知る有名私大に通いながら、私もときどき購入しているポップカルチャーを扱った雑誌の編集部でアルバイトをしているようで、いつも忙しそうだ。週末になると美術館のチケットの写真や新しくできたカフェの写真などが投稿されるのを私はひそかに楽しみにしていたけれど、就活が始まるとなかなかSNSを開くこともなくなっていった。

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