第4話

「卒業するともう一生会わない人もいるよ」という大袈裟な言葉も、高校生になるとじわじわと実感が湧いてきた。中学の頃親しかった友人たちとは時々メールをする程度で、定期的に開かれているらしい食事会も何度か欠席をしているうちに声がかからなくなっていった。学校生活の不自由さをあんなに恨んでいた人たちが卒業式では泣いていて、いつまでもその空気を纏った関係性を大切に守っているのが不思議で仕方がなかった。


 地元の駅で見知った顔を見かけても気づかないふりをした。付き合いの悪いいやなやつだけれど、人付き合いのエネルギーを繋ぎとめておくだけのことに使いたくなかった。もうピアノを囲むことも、同じ制服を着ることもないのだ。新たな人間関係を築くのに、古い関係は不要に思えて仕方なかった。卒業式の日にあの物語は完結したのだ。


 反対のホームに浮かぶかつての友人たちのシルエットを目の端に追いやりながら、私は再び受験生となっていた。リナの首に巻かれたマフラーの色が、去年とは違う色に見えたような気がした。

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