第36話「初陣はトラブルばっかり」
「レオルカさん。あなたはいつも突然過ぎるよ!? スケジュール詰め込みすぎだって!」
私異世界来てからずっとこんなサプライズだよぉ!
もういいよ偉い人との邂逅は!
王子にはもう会ってるし!
「まあまあ。カイサル殿下直々に会いたがってんだよねぇ、観念して〜」
「出来るわけないんだよなぁ〜! ……まぁ、当たり障りなくやれば良いかぁ……。そんな事よりもおばあちゃんは明日どうなの? 勿論一緒だよね?」
「……んっとぉ」
その顔と間は絶対に別行動じゃん!!
はいもうやる気失せた。もぉ無理。モチベ上がらん。
がくん、と膝をついてあからさまにテンション下がった私をレオルカさんは眉を下げながら見下ろす。いやぁごめんね〜じゃないんだよな。
欲しいのは謝罪じゃないんだよなあ!!
「おうおう兄ちゃん、見せて欲しいのは謝罪じゃなくて誠意なんだわ。一刻も早く女神を共に行動させたまえ。それが誠意というもんぜよ」
「さっきから何言ってんだお前」
フレドが本当に意味がわからんという顔でこちらを見ていた。その真顔やめて。レオルカさんだけだよ。楽しそうなのは。
「私は幼児なのでおばあちゃんいないとやだやだやだ! ばぶー! おばあちゃ〜ん!!」
「レオルカ様本当にコイツやばいですって。コイツが救世主だなんておれ信じられないっすよ」
「面白くない?」
「気持ち悪いと思います」
フレドは後で殴ります。絶対に。
「はぁ。私がばぶばぶ言っても結果は変わらないみたいだねぇ……」
「当たり前だろ」
んもうフレドはいちいち突っ込むんじゃないよ。立ち上がって膝に付いた砂を払い落とす。仕方ないね。王子同行、受け入れようじゃないの。
「何だっけ? カ、カエ、ル王子だっけ?」
「カイサル殿下だ! 本当お前気をつけろよな!?」
「う〜ん自信ない」
だってそんな偉い人と会う機会がなかったんだよ!
言うて校長市長くらいだったんだもん!
「まあまあ。異世界からこっちの都合で喚んでんだし多少の無礼は許してくれるって! オレも割と見逃してもらってるし〜」
フレドと比べてレオルカさんのこの温度差よ。これはこれで適当すぎでは……。
「レオルカ様は魔術が規格外だから、国を滅ぼされかねないっすからね」
「えっレオルカさんそんな扱い注意みたいな感じなんだ……」
「こんな穏やかな男捕まえて酷いよね〜」
いやまぁ確かに穏やかではあるけど、得体が知れないところあるよ。
いつもにこやかな人ほど怒りのスイッチわからないしなぁ。でもまあそんなレオルカさんも一緒だしちょっと安心かな?
とは言うものの、他の人とかと話すつもりはないんだけど。
そう言えばおばあちゃん大丈夫かな……。今頃トリスさんに口説かれたりしてないよね?
いくら年下好きといえど、それを覆す魅力がおばあちゃんにはあるからな……。
「おばあちゃん、男どもに求婚されてやしないかな。心配だよ」
「お前はおれ達騎士団を何だと思ってるんだ。んなことするか。ましてや孫がいるような歳の……」
「わかってねぇなぁ! それを引っくるめてしまう魅力がおばあちゃんにはあんだよ!! トリスさんだって癖を歪めてしまっても致し方無いくらいのな!」
「やめろ! 隊長をそんな見方すんな! 隊長にはな、小動物みたいな可愛い女性がお似合いなんだよ!」
「は」
それからはフレドがずっとトリスさんのことを褒め倒す話をしていた。ちょっと気持ち悪かった。
トリスさんの武勇伝とかいいから。
モテる話もいいから。ふーんってなるだけだわ。
フレドって、トリスさんにめちゃくちゃ憧れてんだね。おれもあんな風に……! とか言ってる。
ジョシコーセーなのでその感情はわかりませんなぁ。
「いやあ、2人は凄いなぁ。他人にそこまで熱くなれて」
「は!? 他人!? 大事な、大事な大事な大事な血の繋がったおばあちゃんなんですけど!? 他人だなんて心外なんですけど!」
「おっと、ごめんごめん。オレ家族いないからよくわかんなくてさー。母親はいたんだけど、すっげぇ疎まれちゃってて〜」
「ハヒュッ」
ちょっとそんないきなり重いのぶっこまないで!?
そういうの縁なかったし気遣いも下手なんだよ私! 空気も読めないんだから!
息を呑んでしまった私に気づいたレオルカさんはケラケラと笑った。
「あ、もしやちょっと気にした? 大丈夫だよ〜。オレもそんな好きじゃなかったし〜」
「いやあの」
「楽しく20年生きてるからそんな気にすんなって!」
ばしばしと背中を叩かれる。
「何故私が励まされて……?」
いやでも、思わぬ地雷だった。割と焦ったぞ。
「ま、チフユもフレドも変わってるしな! さて、改めて明日だけど、チフユとオレ、騎士団の1番隊、カイサル殿下で北の森の歪みに行く」
「ふむふむ。おばあちゃんは?」
「国境の歪みです。アルフィ殿下と騎士団長と副団長、魔術師団で行く」
ちょっと待って、国境て何?
「え、国境知らない? 国と国との境目の……」
「違う違う! そうじゃない! 何でそんな所なんだって事! 他国の奴に攫われちゃうかもしれないでしょ!」
「そういう事かぁ。大丈夫だよ、騎士団長も副団長も超強いし」
安心できませんけど?
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