第37話
「まあそんな感じだからよろしくね」
「うぅ〜。王子さまか〜。腹の探り合いとかは出来ないよぉ」
「あ、それは期待してないからいいよ」
「それはそれで遺憾の意。腹立つわ〜」
どうせ私は単純ですよ。
そんな感じで、その後は色々と魔術を教えてもらいながら修行をした。フレドも何だかんだ言いつつも「動かねぇ魔物はいねぇからな」と的になってくれた。
日が沈み始めた頃、そろそろ終ろうかとレオルカさんの言葉で修行はお開きとなり取り敢えず明日の任務には行けそうだ。
出来る女だという事を知らしめておばあちゃんと別行動させられないようにしよう。
お前を家に届けるまでが任務だ、とよくわからない事を言ってるフレドに送られて家路につく。届けるって私は荷物かよと思ったけれど言わないでおいた。大人だなぁ私。
おばあちゃんは帰っていなかった。大丈夫だったかな、少し心配だ。
今日は大分汚れたからお風呂を済ましてしまおうとお風呂の準備をした。さっさと汚れを落とし、椅子に腰掛ける。おばあちゃん、まだかなぁ。
結局おばあちゃんが帰ってきたのはとっぷりと日が沈みきって暗くなった頃だった。
「チフユ! 帰ってたんだね」
「おばあちゃん、おかえり! 大丈夫だった?」
「ただいま。大丈夫だよ」
そう言うおばあちゃんは笑顔だったけれど、何だか疲れているように見えた。
そう言えば、おばあちゃんは「まあ歳も歳だからねぇ」と苦笑した。おばあちゃんを送ってきたトリスさんへと視線を移す。玄関前に立っていたトリスさんは「チトセはよくやってくれたぞ。歪みもしっかりと正してくれた」と答える。
その後、「ただ、」と言葉を濁した。
「スタミナの問題か、わからんが。確かに歪みを正した後は目に見えて疲れていたな。それまではそうでもなさそうだったが」
「!」
「まあ、落ち着け。俺も何もチトセを酷使しようとはしていない。チトセがどの程度でやれるか見極めて無理はさせないつもりだ」
「つもりじゃ困るんですよねぇ! 本当気をつけてくださいよ! ってか私も同行させてくださいよ!」
「ま、まぁ同行の件は追々な……」
それまでキリッとしてたくせに同行という言葉にわかりやすく視線を泳がせたトリスさんに私は「追々っていつだよー!」と声を上げる。
そんな私をおばあちゃんはぽんぽんと背中を優しく叩く。
「千冬、心配してくれてありがとうね。大丈夫だよ。無理はしないようにするからね」
「おばあちゃあん……」
おばあちゃんがそう言ったら何も言えんよ。
その後はトリスさんにフレドの口が悪いとクレームを入れといた。おたくの隊はどんな教育してんだ! と。トリスさんは笑うばっかりだった。でも強いし、案外可愛いヤツだろうと。
「いや可愛いわけないでしょ。十六の男ですよ」
「まぁ、打ち解けたようで何よりだ」
「打ち解けてないですよ」
そうか? と言うトリスさんは笑っている。本当に打ち解けてないから。
「とにかくだ。明日も頼んだぜ、俺んとこのルーキー。チフユも同世代がいたら違うだろ」
だから打ち解けてないって言ってるだろ。しかしこれはトリスさんには通じなさそうである。何故。
そんな私をおばあちゃんは微笑ましげに見ていた。え? 菩薩?
おばあちゃんも疲れているし、トリスさんには取り敢えずご帰宅頂いた後はおばあちゃんもお風呂を済まして簡単なご飯を食べてから寝た。
翌日。迎えに来たトリスさんと共に出て行くおばあちゃんを断腸の思いで見送り、私もその後に来たフレド達と出発した。
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