12 PP発動
アグニファイからもらった分を合わせて、僕の所持PPは100万ちょうどになる。
ホクホク顔で入学式に参加して、挨拶を聞いていた。
『諸君っ! 【宇宙立第1009ポーラスター学園】への入学おめでとう!』
壇上の偉い人は、僕が発明した魔導マイクを使って街じゅうに響いてそうなほどの大声で話していた。
その後ろにはこれまた僕が発明した魔導スクリーンがあって、【魔・技・体】という文字がデカデカと映し出されている。
【魔・技・体】とは、【魔術】【技術】【体術】のことで、人間の行動を司る大事な要素であるという意味だ。
『この三術のなかで、魔術こそが至高とされている! ポーラスター様が生み出した【
僕は……いやポーラスターは、そのみっつは等価だと言ってたと思うんだけど、いつのまにか変わって広まっちゃったみたいだ。
『この学園の入学を許されたキミたちは、天国への片道切符を手に入れたも同然である! がんばればがんばるほど、よりポーラスター様に近いところでお仕えできるという、輝かしい将来が待っているからだ!』
スクリーンは切り替わり、ポーラスターの姿が映し出される。
その内容は、どっかの国の独裁者が作らせたみたいな悪趣味なイメージビデオ。
これがポーラスターが作らせたのならまだしも、まわりの人間が作っているのだから余計タチが悪い。
『まずは入学にあたり、偉大なるポーラスター様に忠誠を誓う祈りを捧げようではないか! さぁ、ひれ伏せ!』
その一言で、僕のまわりに並んでいた新入生たちだけでなく、在校生や先生方、来賓や父兄までもが地べたに伏せた。
僕だけが立ったままだったので、やたらと目立ってしまう。
先生方は新入生の列の前で土下座していたんだけど、チョビヒゲにタキシードの先生が気づいて怒鳴ってきた。
『シット! そこのキミ、なにをしているのです!? 偉大なるポーラスター様の御前でありますぞ! 頭が高い、早くひれ伏しなさい!」
僕は頭を下げるかわりに、片手を高々と手をかざす。
「ここで、PPを使います! 【校則免除】を発動っ!」
そしてリアルなカードゲームで遊んでいるかのように、高らかに宣言する。
「校則第一条! 当学園の生徒は、いついかなる時でもポーラスター様を崇めなくてはいけない! これを免除にします!」
「シット! なにをバカなことを! 校則の免除はたったの一条だけでも、莫大なPPを必要とするのです! 剣士風情の新入生が持ってるわけが……!」
しかしその言葉に反するかのように、僕の身体から大量のPPの光が抜け出し、校舎のポーラスターに吸い込まれていった。
同時に壇上のスクリーンが切り替わり、デカデカとした文字が表示される。
【PPによる校則免除が承認されました、ペヴル・スラムロックは校則第一条が免除となります。】
「もっ……持ってたぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
入学式の会場は、アグニファイとの決闘のとき以上の騒乱に包まれる。
PPというのは現金のかわりに遣えるだけじゃない。ルールを制定した組織に支払うことで、ルールを免除したり変えることができるんだ。
校則ひとつ無効にするのに必要なのは、100万PP……!
これで僕はスッカラカンになってしまった。
しかもまわりにいる人たち、ピュアリス以外の全員が敵を見るような目で僕を見ている。
僕はあんまり目立ちたくなかった。目立つとそれだけ魔術を使っていることがバレやすくなるから。
でもポーラスターのことだけは別で、ハッキリと言っておかなくちゃならないと思ったので、悪目立ちを覚悟でみんなの前でPPを遣ったんだ。
しかしこれでポーラスターを崇めるのを強要されずに済むはずなので、僕はスッキリした気分になる。
しかし先生たちは騒ぎを収めるのに大忙しだった。
来賓のなかには「オーシットくん! いますぐアイツを退学……いいや、不敬罪で衛兵に突き出せ!」なんて言い出す人までいたんだ。
「シット、落ち着いてください! あのようにこじらせた剣士のためにも我が学園があるのです! あの剣士を野放しにしたら大変なことになります! この学園で再教育を施せば、必ずやポーラスター様の信徒となることでしょう!」
オーシットと呼ばれた先生は、学園をあげて僕に再教育をするということでみんなをなだめていた。
その騒ぎのドサクサにまぎれて、ピュアリスが僕のそばまで飛んでくる。
楚々とした彼女がこんなに髪やスカートを振り乱して走るなんて珍しい、と思うくらいの勢いで。
そしてまるで僕が大罪を犯したかのようにおろおろしていた。
「な……なんということを!?」
「なんということって、PPを遣えば校則を免除できるって教えてくれたのはピュアリスじゃないか」
「ええっ!? 馬車の中でお教えしたのは……ほんの冗談のつもりだったのです! まさか、本当になさるなんて!」
「僕は本気だったよ」
ピュアリスはガーン! と、よりいっそうのショックを受けていた。
「まさか……まさかそこまでポーラスター様のことがお嫌いだったなんて……!」
「いや、ポーラスターのことは嫌いじゃないよ」
「えっ……? それならなぜ、あのようなことを……?」
「好きなのと、崇めるかどうかは別だよね?」
僕以外の人間すべてが慌てていて、まるで世界じゅうがパニックになっているかのよう。
そんななか、僕はノンビリと校舎を見上げていた。
「僕はピュアリスが好きだけど、崇めたりはしない、それと同じだよ」
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