第3話 狂気のルール


 何しろ、全国の高齢者三千万人を、「安楽死」か、10,000分の1しか生き残れ無い悲惨なゲームへの参加が、実施される事になるのだ。



 実行場所は、日本の近海の無人島や、あるいは、数百名が住んでいる島から、強制的に島民を、島から本土に移動させ、敢えて無人島化にして行く。



 しかも、三千万人の高齢者の移動を実施しなければならないのだ。



 直ちに、内閣官房に、移送特別班が結成された。



 しかし、大きな島なら、自衛隊の艦船でも運べるが、小さな無人島には、港すらできていないのだ。



 そこで、小型の船舶や、釣り船までが、全て、動員がかけられる事になった。反対したり拒否すれば、即、船長を射殺して良い事になっている。



 徐々に、「タコ・ゲーム」のルールの細部も決まってきた。



 先ずは、島の上陸前に、身体検査をされ、刃物などの凶器は全て没収される。



 感度の良いスマホ等の連絡手段も没収。



 その替わり、食料や水が、最低、1週間程度は、各自に、割り当てられる。



 なお、この島に渡る者の中には、罪を犯し刑務所の中に拘留されている者であっても、満80歳を超えて、黒紙が来れば、当然、島に行く事になる。つまり殺人犯などの凶悪犯も参加するのである。

 これに、一般人が参加するのだ。



 結局、この「タコ・ゲーム」の些細なルールが、分かるにつれ、当所、三千万全員が参加すると思われていた参加者が激減した。



 何故なら、以上の「タコ・ゲーム」の話を要約すれば、少しでも頭の良い人間なら、ここで10,000人の一人に生き残るには、殴る、蹴る、首を閉める等の、肉弾戦や白兵戦を生き延びなければならない事が、即、理解出来る。



 せめて、武器の持ち込みが可能なら、拳銃や、ダイナマイトで、皆殺しも可能であろうが、かっての原始人同士の肉弾戦や白兵戦が必ず起きるのだ。



 これは、正に、阿鼻叫喚の地獄であろう。



 ならば、注射1本、飲み薬1粒で、楽に死ねる「安楽死」を選ぶ人が、続出してくるのも分かるでは無いか。



 結局、三千万人と、当所、想定された、「タコ・ゲーム」の参加者は、三百万人にまで減った。



 これでも、三百万人を、一万人づつ分けるだけでも、最低、300島の無人島の確保が必要である。



 ところで、ここで、ある疑問が出て来るであろう。ではこれから出て来るであろう、三千万人の高齢者の死亡死体をどうするか、との問題である。



 しかし、全国の斎場をフル稼働しても、それだけの人数の焼却は不可能だ。まずは、死体焼却用の燃料自体が存在しない。石油等は、全て輸入だからだ。買うお金も無い。



 何しろ、国家財政破綻寸前の国なのだから……。



 で、これもまた、上級役人の考える事は、単純明快だ。



 全国に散らばっている鉄や銅の溶鉱炉や、火力発電所、ゴミの焼却場等をフル稼働、それでも処理出来ない場合は、活火山の火口に放り込むと言う。



 これでは、人間の持つ尊厳性も何もあったものでは無い。



 もう一つ、国際社会は、黙っていたかと言う問題である。



 しかし、例の女性独裁者は、日本国内にある原発に残っていた、放射性廃棄物からプルトニウムを取り出して、国や大学を挙げて、わずか1週間で、原爆1万発を生産したと発表。

 また、日本のロケット技術は、世界的にも進んでおり、人口衛星を飛ばすロケットにその原爆を詰んでICBM化に急遽、変換。



 日本は、あっと言う間に、超核大国化を宣言したのだ。



 通常の地対地の大型ミサイルにも、この原爆は、もう詰まれ済みだと言う。



 この宣言を聞いて、欧米始め、世界中の国は、一挙に黙ってしまった。



 何しろ、自国民三千万人を、「安楽死」させるか、訳の分からないゲームに参加させるような、超独裁国家である。



『80歳定命制』を宣言して以降、反対する高齢者を、次々、戦車で轢き殺すニュースは、既に、全世界に流れてしまっている。

 また、東北のある高齢者部落がかっての「米騒動」のような一大暴動を起こしたので、その高齢者部落には燃料気化爆弾が投下され、その村は完全に全滅したニュースも、もう全世界に流されたのだ。



 ここに至って、世界の中の有識者や政治家は、日本は、隣国のK国やT国以上の超独裁国家なった事を悟ったのだ。



 触らぬ神にたたり無し。全世界が、ダンマリを決め込んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る