第29話
「竜の立ち入らない場所に連れて行け」
朝食が終わって、部屋を出かけた
「自分で行けるだろう」
呆れた目で見下ろされ。
「場所を知らない。それにネズミ姿だと時間がかかる」
「ああ」
「行くだけでいい。帰りはお前の頭上に」
定位置になりつつある肩に。
「ネズミでふってこい」
「これもあるが」
「人にふってこられるよりはいい」
竜になれたのなら、飛んで行け、と言え、いくつか回れたが。一ヶ所ずつ、行ける所から行くしかない。
「尾行されていないと思うが」
「誰の目もないのなら、埋めて」
「埋めるな。眠らせろ。燃やすなよ」
転移の魔法は使えない。この地は知らない場所が多い。知っていれば、持っている物をそこに埋めれば使えるが。
空を飛ぶこともできるが竜が飛んでいる。そんな中、人が飛ぶのは。
飛んでいるのは二、三体。ぶつかるほど飛んでいない。
「ここだ。だがまったく来ないことはない。薬草が生えているらしく、採りに来る者もいる」
「わかった。気をつけて捜してみる」
「家に戻っていいか。それとも
「家に戻って荒らされていいのなら」
「御殿にいる」
そう言うと
ラビアは森の中に足を踏み入れた。
竜の地で精霊を見かけないと言っていたが、竜が来ないからか、気づいていないのか、森の中には野生動物の他に小さい精霊、妖精が。離れた場所からラビアを見ていた。
「ウンディーネ、頼む」
最初はラビアについてくるだろうが、ラビアはラビアでやることが。そちらに集中すれば、はぐれるかもしれない。ウンディーネがついていれば。ついでに黒猫も。
森の中を歩き回り、時には精霊、妖精を
日が暮れるまで捜していた。
翌日は別の場所へ。さらに翌日も。捜し続けた。
「はあ、一日中歩き回って、体力というか筋肉がつきそうだ」
「お前目当ての者が毎日部屋を訪ねているようだ。なぜか俺に文句を」
「そろそろ夜、忍び込んで」
「お前も一緒にいることは知っているんだろ」
「今日は入れ替わるか。忍び込んで来て、お前が寝ていれば、来た者も驚くだろうな」
「明日も出るのか」
「行く所は行った。明日はここにいる。あれが暴れるようなら外に」
「もし、仲間が見つからなかったら」
「自分の身を護れるようになるまで、うちで保護。もしくはティータニアに預ける。安全といえば安全。妖精達も利用しようとは。人が来ないことはないが、自由に行き来できない」
ラビアの家にも精霊、妖精はいる。彼らに色々教えてもらい、そこそこ育てば、自分の身を自分で護れるようになれば。
その夜から部屋に辿り着けないよう魔法をかけた。
何の予定もない日。昼まで寝て、昼食。半日、何をしようかなと、ぼんやりしていた。
「暇そうだな」
「色々考えている」
「そうか。何も考えていない顔に見えるが。客だ」
客?
「ここじゃない場所で待っている」
「誰が」
「
助けた?
「魔法によって苦しめられていた」
「ああ」
すっかり忘れていた。
「天気もいいから、庭でお茶でもどうかと。色々話したいそうだ」
「疑われるようなことは何も」
「この部屋に来ようとしていたが、辿り着けないと」
「それはそうだ。辿り着けないようにしている。ゆっくり休みたい。燃やす、埋める、三枚おろしはだめなのだろ。だから、部屋に辿り着けないように」
「来られたが」
「当たり前だ。お前まで迷って、会えなくなったら私が困る」
「暇なら行け。
「う~ん。食べてみたいが、
「来い」
色とりどりの花に囲まれた庭。置かれたテーブルと椅子には女性三人。いや、一人は女の子、といった外見。三つある椅子の一つには誰も座っていない。
「お連れしました」
女の子は椅子から立ち、笑顔で。女性は立たず。女性の背後にはさらに年上の女性が。
「初めまして?」
ラビアは小さく首を傾げながら。
女の子には一度会っている。すっかり忘れていたが。
「その
女の子、白乃は頭を下げ。
「元気になって、なにより」
「はい。おかげさまで」
満面の笑顔。
「直接お礼を言いたかったのですが、なかなか外に出してくれず」
それはそうだろう。両親としてはあんな思い、二度と。
「私も、とてもお会いしたかったです」
「どうぞ、いつまでも立ったままは」
立っていた女性がカップにお茶を
「私は
「聞いて知っている」
「白慈様と仲がよろしいと」
「いいか?」
首を傾げ。
「ええ、そう見えました」
話し
「
尻軽女と思われている? 白夜を利用し、
「私が白慈の嫁に選ばれることはない」
「なぜ、はっきり言えるのです」
「推測だが、力を保つために純粋な竜でなければならないのでは。
そのため何代か続けて純粋な竜でないと。
ラビアにも竜の眼があるが、これは血筋ではない。
「
「使っていない。というか、誰にも使っていないんだが。見た目で寄ってこられて、いい迷惑している」
「お嬢さん
男の声。
「嘘くさい」
「わざとらしい」
ラビア、
「同席しても」
男、
「私が招いたのはこの二人だけです」
「
「まさか邪魔が入るとは思わなかったので。それに私的なお茶会。
「
「そうですね。失敗しました」
「
「この男より」
勝手に入って来た
「あのような
「
「
「人気なんだな。本人は誰とも付き合ったことないと」
「は?」
白雪と女性は目を丸く。
「付き合ったことがない? 本当ですか」
女性がラビアに首を伸ばそうと。
「そう聞いた。様子からして嘘でも」
「ふっ、女性と付き合ったこともないとは。あのような噂をたてられるわけだ」
「
「白慈様とあらぬ噂が流れているのは」
「私からすれば遊ばれているように見えるが。さっき言っていたが真面目なんだろ。口も堅い。
「フォディーナ様とのことは親愛、恩義とでも言うのでしょうか。フォディーナ様が保護しなければ、どうなっていたか」
女性は頬に手をあて。
「命の恩人。命をもって返す?」
「かもしれませんね」
喜ばないと思うが。
「僕も
「嘘を吐かないでください。白慈様はあなたなど信じていません」
「とにかく、あなたは招いていません」
「そう言わず」
「
以前の訓練でも
「お願いできます」
判断も早い。
「ご冗談を」
去りそうにないので蛙に変えた。
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