第20話

 本日は朝食を済ませるとプールに。青蘭せいらんとお付きのはなだはプールにはいかず。

 青蘭はここにいる竜達の中では一番年上。外見は二十代後半。生真面目きまじめ、はしゃいで遊ぶという姿は想像がつかない。クファールとどことなく似ているかもしれない。

 白夜びゃくや達は水着を借りに。竜の地に水着はない。子供は服のまま水遊びしている。

 種類、色、様々あり。あかねはどれにしようと迷っていた。

 先に着替え終え、プールに。水を張っているプールの中で遊んでいる者もいれば、テーブルと椅子いすがあるので、そこから景色を見ている者も。

 小さく息を吐く。

「息抜きと思って楽しめば」

 白慈はくじは気楽に。

「魔法学校では色々あったから」

 閉じ込められ、にらまれ。ここでも見られている。幻獣狩げんじゅうがりのような視線ではないが。

 男五人が何もせず立っているだけ。目立つ、だろうか。

「誰かが待っていればよかったかな」

「どこで、誰を」

「彼女達の着替えが終わるの。周りを見て」

 白慈はくじの言葉通り、周囲を見る。肌の露出が多い、水着の者ばかり。

「西の魔女の孫はともかく、あかねと彼女があのような姿で出てくれば、一人は倒れるかもね」

 ちらりと見たのは黒輝こくき

「あの」

 声の方を見ると、若い女性二人が。姉妹か。似たような顔立ち。

「わたし達と遊びませんか。見ていたんですけど、何もせず、立っていたから」

「人を待っているんだ。まだ着替えているみたいだから」

 白慈はくじは笑顔で。

「それなら、その人達も一緒に。男性です? 女性?」

「女性」

「ようやく来たか」

 真紅しんくが出入り口を見て。

「……」

「おっまたせ。どうどう。こんなの着たことないけど」

 あかねは直視できない姿。ラビアは上着を着ているので、茜よりは。孫も。

「んん、その子達は」

 声をかけてきた女性達は固まり。黒輝こくきは今にも倒れそう。無理もない。

「ひょっとして、ナンパ? 学校で教えてもらったよ。ここに来るまでにも何人かに声かけられたし」

鬱陶うっとうしかった。あれは、ここにくる。見世物みせもの

「姉さん、落ち着いて。船を真二まっぷたつにするのだけは」

 ……。

「魔女ちゃん、腰細いよね。色も白いし」

「何度も言うが、魔女ちゃん言うな。私としては何を食べればそんな胸になるか。触りたいが、触れば、ばたばた倒れそうだな」

 あかね達をちらちら、じっと見ている者もいる。白夜びゃくや達だけの時より見られている。

「やるな」

 本当にやる前に注意。

「あはは」

 あかねは笑い。

「プール、プール行こう」

 孫の手を取り、プールへと。

「真二つにするなよ」

「……わかっている」

 怪しい返事。

「着やせするんだな。もっと細いと」

 ラビアは白慈はくじを見て。

白夜びゃくやほどじゃないけど、きたえているからね」

 じっと見続けて。

「無防備。横腹くすぐったら」

「やめろ」

 少し距離を取った。

「地獄を見たくなければ、タオルを頭からかぶるか、日焼け止めを塗っておけ」

「何かする気か」

 白夜びゃくやは疑いの目で。

「するか。日差しだ。天気は良い。日焼けする。ひどければ火傷やけど、水ぶくれ」

 ラビアは上を指し。白慈はくじ白夜びゃくやは空を見上げ。

「いずれ皮がむける。竜ならうろこが落ちるのか? 脱皮だっぴ?」

 白慈はくじもラビアほどではないが色は白い。白慈と揃って上着を羽織はおった。


「あ~、楽しかった。でも日に焼けて、ひりひりする」

 一日プールで遊んでいた。昼食もプールそばにある店で買い。プールで遊び、疲れて休み、またプールへ。一緒に遊ばないかと何人にも誘われ。ビーチボールというボールの投げあいになると、あかねは何個も破裂はれつさせ。ラビアは相手の顔面に。硬くはないが、すごい音が。

 今日の夕食はどこで食べる、と歩いていた。

「癒しの魔法の実験台にすればどうだ」

 ラビアは孫に向かい。

「あ、明日も遊ぶのなら」

 孫は慌てたように返し。

「今日遊んだから、明日は別がいいかも。明後日はわからないけど」

「付き合わされる身になってくれ」

 真紅しんくはうんざりと。

「リーちゃんと遊ぶからいいよ。真紅くんは女の人と話していたじゃない」

 あかねの言う通り。話しかけられ、話していた。それは白夜びゃくや白慈はくじ、茜も。

 東竜王とうりゅうおう組は何をしていたのか。着替えて歩いていると、どこからともなく現れ。

 本日もそろって夕食。人の地の食べ物は竜の地より多種多様。昨日と違うのは部屋に戻る途中、飲酒できる小さな店があり、ラビアは立ち寄り。

「お前は先に部屋に戻っていろ。それがいるから迷っても大丈夫だろう」

 肩の黒猫を指し。

「店のものを飲み干さないでくださいよ」

 黒猫の注意。

「飲み干すか」

 ラビアは行け、と手を振り。部屋へと歩いて行ったのは孫と黒輝こくき黒林こくりん

「竜の地より強いと思うが」

「強い?」

「竜の地の酒はあっさり、さっぱりしている。ここにもそういうのはあるが」

「どれがおすすめ? わかんないよ」

 あかねはメニュー表と書かれたものを見て。

「これ、が飲みやすいか」

 ラビアが指して説明、店の者にも聞いていた。



「……まさか、こんなことになるとは」

 竜の地と人の地の酒は違う。最初は飲みやすいものから飲んでいたが。それぞれで注文し始め。三十分で竜の面々はカウンターにしていた。

「大丈夫かー」

 近くにいる白夜びゃくや白慈はくじをつつくも、反応なし。

 実験台。ふと頭によぎる。次期竜王が三体も。

 ……。

 邪念を溜息ためいきと一緒に出す。

 小さな店だが他にも客はいる。これから来る客も。店主は困った目でラビアを見ていた。

 そうかと思えば、体がふらふら揺れ、ばたりと倒れる。他の客も、カウンターに突っ伏し。

 眠りの魔法、か。狙いは。

 竜達を見た。近くの白夜びゃくやの右頬をつんつん。起きる気配はない。

「お~い、起きろ、危ないぞ」

 つんつん。

 プールで遊んでいた時。

「気をつけて」

「この海域では海賊が出るそうよ」

「気をつけて」

 風の妖精が耳元でささやき、教えてくれ。やっぱりこいつと出かけると、ろくなことにはならない、とリディスの頬を引っ張った。

 船の持ち主にすれば、西の魔女の孫一人で来るはずない。お付きと来て、そのお付きが海賊を退治してくれれば、とでも考えていたのだろう。あるじがこの船にいないのは海賊にいたくないから。

 はっと鼻で笑った。

「眠っていない?」

 怪訝けげんな声。見ると二人の男が。一人は三十代、一人は二十代。ラフな格好かっこう。遊びに来た、といった服装。海賊、といった格好ではない。手には布に包まれた長いものが。覚えのある長さ。どうやって持ち込んだのか。他人のことは言えないが。

「東の魔女殿」

 若い男が笑顔で。

「誰だ」

 ラビアは眉を寄せ。

「魔法学校でお会いしたでしょう。ペンダントは受け取ってくれましたか」

 魔法学校。ペンダント。

 若い男は早足で近づいて来ようとしていたが、もう一人の男が肩を押さえ。

「ああ、あれか。燃やした」

「もやし」

 若い男は愕然がくぜん

「なぜ眠っていない」

 年上の男がラビアを見て。

「三流魔法使いの魔法など、効くか」

 再び、はっと鼻で笑った。

「やったのはお前達か。別の誰か、か」

 別の誰かなら、仲間がどこかに隠れて。

「話せ」

 この二人を海に落としても、残りがいれば、また。

「に、西の魔女の、弟子が。本人は、次の、魔女、だと」

 若い男が。年上の男は若い男を睨み。

「狙いは」

 若い男の口をふさいでいるが、今度はその男が、

「竜」

 自らの言葉に手を離し、口に手を。

 その西の魔女の弟子は見当たらない。逃げたのか。

「こいつら倒して、持っていくのか。仲間が黙っていない」

 二人は口を開け閉め。手を口に持っていく。

「話せ」

 強く言う。

「海、賊が、この船を、狙っている」

 海賊と幻獣狩げんじゅうがりが手を組んだ? 利害の一致? 海賊はこの船の客から金品を。幻獣狩りは竜。弟子はなぜ幻獣狩りに手を貸した。もし狙い通りにいっても。

「東の魔女殿、それは、人を害するもの」

「うるさい。それはお前達も、だろう」

 海賊のせいにして竜を。

「我々は人を護っています」

「護る? 海賊にこの船を襲わせて」

 白夜びゃくや達が人を気にしないのなら、魔法学校の結界を竜になり、壊していた。それをせず、原因を探していた。

 冷たい声、さげすんだ目で二人を見る。

 精霊、妖精の体の一部が使われている剣。人が造る普通の武器より、そういうものが使われている方が強力。もちろんデメリットも。

「もしかして、竜どもに何か言われて」

「……」

 だめだ。これは何を言っても自分のいいように考える。今も自分の考えを話し続け。

 白夜びゃくやがゆっくりと起き上がる。ラビアは椅子に腰かけたまま。

「気がついたか」

 起き上がり、うつろな目で見たのは、幻獣狩りの二人。

「白夜?」

 ぴくりと反応するが、目は幻獣狩りに。

 殺気に反応した? 白夜びゃくやだけ?

 ゆっくりとした足取りで幻獣狩りに近づいていく。

 幻獣狩りは持っている布から剣を抜き。

 ラビアも椅子から腰を上げ、素早く白夜の前に。

「そんなに欲しければ、正面から挑め。こんな卑怯な手を使わず」

 二人に向かい右人差し指を向ける。ここで意識のない白夜びゃくやに暴れられたら。

 二人をドラゴンの棲み処に転送。卑怯な手でしか挑めないのなら、負ける。気性の荒いドラゴンの所へ送った。腕か足一本で済むのなら、いい方だろう。

 運良く逃げられても他の精霊、妖精が見逃すかどうか。

「あ、他に仲間がいないか聞くの忘れた」

 いれば、突然仲間がいなくなれば。海賊の件に弟子も。

「一つずつ、片付けていくか」

 まずは、と背後の白夜びゃくやを見た。相変わらず目はうつろ。

 背伸びして、目の前で手を振る。

「お~い、起きているか? 寝ぼけているか。酔っ払い」

 反応なし。

 触って、加減されず手を取られたら、折れる?

 右手を伸ばし、頬に触れた。

 変わらず、反応なし。

 楽しくなり、つついたり、でたり、つねっていれば、手にすりよってきた。

「……なぜ?」

 酔っているからか。素面しらふなら、何をしている、と怪しい目で見ていた。

 人の姿でなく竜の姿ですりよってくれたら。白夜びゃくやは竜の姿はとれなかったか。

 カウンターに突っ伏している竜達を見た。変わらず突っ伏している。

 海賊はこの船には乗って来ていないのだろう。合図でもあるのか。竜を運ぶにしても二人では。

 いつまでもこうしていられない。

「立て、部屋に戻るぞ」

 魔力を込め。竜王に近い者達。効くだろうか、と思ったが、ふらふらしながらも椅子から離れ、ふらふらし続けながら部屋に。白夜びゃくやも大人しくついてくる。

 通りすがりの人は普通に歩いている。海賊が乗り込み、暴れていれば、普通に歩いていない。

 竜達が部屋に入ったのを確かめ、船外に。一人のため、歩いていると声をかけてくる男もいた。

「む~、暗くてわからない。海賊はどうやって追いかけてきているんだ。目印でもつけられているのか」

 後方を見るが、見えるのは暗い海。

 追尾の魔法はある。広く、大きい船。それを探すのは。

「弟子が居場所を教えている?」

 大勢の中から弟子を捜すのも。顔も覚えていない。

「何か呼んで沈めるか、沈めに行くか、仕掛けをしておくか」

 自ら沈めに行くのは。場所がわからない。暗い。明るくなってからはうるさいのが。夜中に乗り込んでこられても。仕掛けをしても、その上を通らなければ、他の船の迷惑。関係のない船を沈めるのは。

「よし、何か呼ぼう」

 ぱん、と手を打った。


 翌日、竜は二日酔いで苦しみ。ラビアは寝不足。

 風の精霊に追いかけて来ている海賊船を航行不能にしろと頼み。結果どうなったか。

 竜が倒れているので、リディスは魔法学校の課題を。課題ついでに寝不足だったが基礎を叩き込み。

 黒輝こくき黒林こくりんという竜以外、その日は部屋から出てこず。ちなみに、この二人は音楽鑑賞して過ごしていた。


「はぁ~」

 ラビア、黒輝、黒林という竜以外がそろって息を吐いている。

「昨日は散々だった」

「はい。こちらも散々でした」

 真紅しんく、リディスは肩を落とし。

 二日酔いの竜が復活したのはさらに翌日の昼。

「忠告はした」

「俺達より飲んでいたよな」

 真紅しんくはラビアを見て。

「軽く、じゃなかったのですか」

 黒猫は呆れ半分。

「私にとっての軽く。こいつらと違って、昨日今日しっかりしているだろう」

 二日酔いで一日部屋から出てこなかった。リディスと水を配り、様子見に部屋をたずね。リディスの魔法の実験台に、とも考えてしまった。

「眠そうでしたね」

「色々あったからな」

「午後からは」

「課題の続き。こいつらも本調子じゃないだろう。できて、外の風にあたって、気分転換。外がいいなら、外で続きをやるか。結界張ったら魔法も使える」

「うう」

実践じっせんでも」

「それだけは嫌です! 勝てません! 勝てませんからぁ」

「一撃でも入れられたら、さらに五日に短縮してやろうと考えていたが」

「無理です。今のままでかまいません」

 必死に。

「お前」

 リディスをじっと見る。

「な、なんです」

「課題を教えてもらおう、という魂胆こんたんじゃ」

「見抜かれていますよ、リディス様」

 リディスは黒猫の口を押さえるが、遅く。

「明日も課題プラス実践」

「はうぅ」

 リディスは肩を落とし。

「大丈夫か」

 白夜びゃくや白慈はくじを見た。

「なんとか」

 白慈は力なく笑い。

「どうやって戻ったのか、記憶が」

「ああ、私が一人一人お姫様抱っこして」

「そんな細い腕で」

 白夜びゃくやは半眼で。

「魔法をかけて歩かせ、部屋まで送った」

「何もしていないだろうな」

「してほしかったのか」

「やるなら白夜びゃくやだけにして」

「やるな。もうこちらでは飲まない」

 白夜は額に手をあて。

「今度は背負って」

「飲まない」

 お茶を飲んでいた。

「というか、普通は逆では」

「逆?」

「お前が私に」

「していれば、今頃、海に浮いている」

 白夜びゃくやは小さく顔をしかめ。

「そうそう、お前の姉弟子が来ている」

 リディスを見た。

「どの姉弟子です? いすぎて」

「魔法学校に来ていた者だろう」

「しつこいね。西の魔女に推薦してくれとでも言われた?」

 白慈はくじもお茶を飲みながら。

「いや、挑んできた」

「まさか、海に」

「逃げられた。姿は見ていない。だから誰が来ているのかは、さっぱり」

 黒猫の左耳を軽く引っ張る。

 おそらく、だが、幻獣狩げんじゅうがりが成功していれば、弟子は幻獣狩りを竜王に売った。自分は竜の味方だ。仲間を倒したのは幻獣狩こいつらりだ、と。幻獣狩りに対する言い訳も考えているのだろう。そうでなければ。

「会っていたらかえるにするか、無人島に送ってやったのに」

 蛙にして、この広い海に。

「お手柔らかに」

 優しいことを言うリディスの耳を引っ張った。


 その日、半日はリディスの課題に付き合い、座ってばかりでは体が。夕食前に魔法の実践。

 船の外、目立たない場所で結界を張り、魔法を使っていた。

「あ、あの~、そろそろ夕食の時間」

 リディスは腕時計を指し。

「そんな時間か」

「はい。そんな時間です。お腹空きました」

「嘘くさい、早く終わらせたくて」

「本当ですぅ~」

 相変わらず情けない声で。

 お腹がいたのは確か。結界を解くと、リディスは小走りで船の中へ。



「ずっと船だったから、揺れている気も」

 久々、地に足をつけ。船は港に立ち寄り、夕方まで停泊。出発まで町を見るも、船にいるも自由。ラビア達は船から出て、町に。

 リディスはガイドブック片手にあかねとにぎやかにあちこち見て。ラビア達はそれに付き合い、時には引っ張られ、店に。買った物は真紅しんく東竜王とうりゅうおう組に持たせ(茜が押し付けて)。

 立ち寄った店によっては「運が良いね」と。

 幻獣狩げんじゅうがりと会った海域から一番近い港がここなのだろう。毎回毎回襲われていないだろうが。それなら航路を変える。

「どういう意味なのでしょう」

 リディスは小さく首を傾げ。

「海にいる精霊と衝突。精霊に人の都合は関係ない」

「姉さんがいるから大丈夫ですね」

 リディスは笑顔で。

「お前がいるから避けている、とも」

 果物をしぼった冷たいジュースを飲みながら。

「海賊、というのも」

 ラビアの肩でばてている黒猫。最初はリディスが日傘を持ち、その肩にいたが、あかねとあちこち行くので。動物お断りの店も。ラビアの肩に移動、日傘もラビアが預かり、差していた。

 ばてていても鋭い黒猫。それとも何か知っているのか。

「こいつらもいるしな」

 白夜びゃくや達を見る。竜達もそれぞれ冷たい飲み物を手に。あかねは片手にソフトクリーム、片手はけ、飲み物は真紅しんくに持たせ。

「魔女様と竜の方々かたがたが暴れたら」

「見物している」

「人質とられたら、手も足も出せないが」

 白夜びゃくやは呆れをにじませ。

「魔女様なら、海賊だけを眠らせることができるのでは」

「できるが、そうなったら、何か呼んで、それのエサに」

 もうなっているかもしれないが。

「ただ、客にまぎれられたら」

「わかりませんね。んん? でも、それも魔女様なら」

「どれだけ人を使う気だ」

 黒猫の右頬を軽く引っ張る。

「顔もわからない者を特定できるのか?」

 白夜びゃくやが口をはさむ。

「やろうと思えば。だが、神経使う、疲れる、面倒」

 うんざりと。

「まだ挑んでくる方が早く済む」

 正体を知れば正面からは来ない。

 くだらない話しをしながら町を見て回り、船に戻る。

「ん?」

 リディス達は夕食の話しを。

「どうされました?」

 暑さでばてていた黒猫は涼しい船内により、少し復活。

「何か、妙な気配が」

「妙な、気配、ですか?」

 これまで感じなかった、何か。

「姉弟子が何か」

 黒猫がぼそっと。

「違う、と思う。殺意のたぐいなら竜が気づきそうだし」

 顎に手をあて。

「どうかした?」

 話しかけてきたのは白慈はくじ

「何か、感じないか?」

「何かって、何?」

 感じていないようだ。

「それなら」

 今はいいか。

 と、ほっておいたのがいけなかった。まさかそれが大事おおごとになるとは。

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