第13話
道を使い、人の地へ。
他の竜も今回は道を使い。竜の姿で人の地に下りても、魔法学校がどこにあるかわからない。それなら道を使い、
それぞれの地に一つ、人の地に下りる、
一瞬で出た場所はどこかの部屋。床は木ではなく石? きれいに
「まさか、
「他の所のことは言えないよ。僕も来たから」
「ようこそ、竜の
説明している男が着ている服は
「部屋は適温にしていますが、外は」
「外に出て、決めていいか」
「でも、着替えもこれと似たようなものだよ」
「案内をつけます。近くに服を売っている店もあるので、そちらで選んでください。代金はこちらで。そうなると、学校に行くのは明日になりますが」
「ここから離れているの」
「半日、でしょうか。ただ、服を五分、十分で選べないでしょう」
じっくり選びたいのなら。
「そうだな。こいつがうるさそうだ」
「当たり前でしょう。似合わないものを着て、行きたくない」
今日はここで泊まりになりそうだ。
「案内はクファールとユーリエがいたします。
説明している男が顔を動かす。この部屋にある一つだけの扉の前には男女が。男は見覚えのある顔。
「クファールは学校でも教師、魔法を教えています。ユーリエはここ、協会の者です」
メガネをかけた三十代ほどの女性。
「では、外へ」
男が扉を指す。女性が扉を開け、部屋の外へ。
出た部屋と同じ。廊下は石? 木造ではない。窓の外は背の高い建物が。高さも建物によって違う。竜の家は平屋が多い。全員、珍しそうに窓の外を見ていた。そして、歩いている者も
「あら、クファール」
女性の声。
「先に行っていてくれ」
先頭を歩いていたクファールは並んで歩いていた女性、ユーリエに声をかけ。
「これが、リディスが
金髪碧眼の女性がじろじろと。並んで歩く。
「いえ、協力です」
「ふうん。いっそのこと、竜にあげれば。いつかのように」
「ご冗談を。それで、
女性の眉がぴくりと動く。
「それとも
火花が飛び散りそうなくらい、睨みあっている。
「あの子が魔女になれるとでも」
「ええ」
「七光りで実力もないのに。私や他の者が余程。あんな子と手を切って、私と手を組まない」
女性の目は
「聞かなくて結構です」
「クファール!」
女性は叫び。
「どうせ、ここの道を使い、竜の地へ行こうとしていたのでしょう。しかし個人的な理由では許可は下りず。リディス様は竜から招かれた。
「私が魔女を継いだら、あんたなんか」
「継げれば、でしょう。貴女と同じ考え、待ち構えている者がそこにいますよ」
女性はクファールの視線を追い。
離れているが、黒髪の女性と栗色の髪の女性がこちらを見ている。
「あの方達と
女性はクファールを睨み、二人の女性へと足音荒く歩いて行く。
「見苦しいものを見せて、申し訳ありません」
無表情、平淡な声で。
「彼女は」
「魔女候補です。リディス様を気に食わない方々。気に食わないのはリディス様だけではありません。お互い。気にしないでください」
気にするなと言われても。だが気にしてもどうにもならない。
あちこち見ながら、話しながら、建物の外へ。
「暑い」
「そうだね。暑い」
「どうしましょう。服を見に行きます?」
「行きます!」
「
「服見たいだけじゃ」
「だが、茜殿の言うことも。周りを見れば」
「見に、行くか」
誰も
服選びに時間がかかり、特に茜が。その日は魔法協会で泊まりとなった。
翌日、汽車という鉄の
人の地では遠方に移動する、旅する時は汽車か船を使うそうだ。
「彼女に色々聞いておけばよかったね」
「もしくは、ついて来ている? 御前試合の時のように」
「いない」
「誘えばよかったのに」
「気をつけろ、と。あと、これを持っていろと」
取り出したのは小さな鳥のぬいぐるみ。
「これに化けて」
「いない。うっかり潰したが、文句は何も。よくわからないが持っていろと」
ラビアが化けていたら、潰せば確実怒っている。
「そう言うってことは持っていた方がいいんじゃない」
「だから持っている」
なんの役に立つかわからないが。
着慣れない服なので少し居心地が悪い。Tシャツに薄手の上着。下はパンツ。ラフな
「竜の地とは違うね」
昨夜は西の魔女の弟子という女性が部屋に来て、味方になってほしい。魔女になればもちろんお礼も、と言っていたが。
「なれなければ」と白慈が笑顔で。
「聞いたけど、決めるのは西の魔女、なんでしょ。僕達を味方につけても、ついたから魔女になれるとは限らない。
ラビアの受け売り。
決めるのは西の魔女。たとえ、四竜王すべて味方につけても譲るかどうか。
「お前達より西の魔女に媚を売り、いいところ見せた方が余程いいと思うが。候補といっておいて、まったく違う奴、選ぶかも、な」
そう言い、笑っていた。
女性は顔を真っ赤にして、去り。
朝食の席で話していたが、他の竜の所にも行ったらしい。
「ようこそ、魔法学校へ。歓迎しますよ、竜の
大きな建物がいくつも建っている。その入口、門前に六十代ほどの細い男。横には三十代半ばほどの男が。
「見学に来ただけ。学びに来るのは子供。見学して決める」
「ええ。じっくり見ていってください。私はここの代表者、学長です。学校の説明、案内はクファールとサイルがします」
横の男が頭を下げる。
「ユーリエもここの卒業生。ここに来た、ということは」
「はい。学校の案内、説明を」
「それなら、この三人に色々聞いてください。他の教師、生徒に聞いてもらってもかまいません」
学長という男は笑顔で。
この学校も石造り。建物によって高さが違う。服も。
案内役のサイルが説明しながら歩き出す。
「ここは
離れた場所を同じ服を着た男女が歩き、走っている。
「全員が同じ服を着ているな」
不思議に思ったのだろう。誰かが。
「ええ。制服です。ここで学んでいる者、という証でもあります」
「ここには魔力持ち、魔法を使える者だけが通っています。教養も学びますが、大半の時間、魔法を」
ユーリエが続ける。
「学校の者にも、竜の方々が来ることは伝えております。質問されることもあると思います。失礼なことを言っていたら、申し訳ありません」
「評判悪い? 以前そう聞いたけど」
「場所に、よっては」
言いにくそうに。サイル、ユーリエは目を合わせない。
気をつけろと言うはずだ。
「魔女も通っていたのか」
「いえ、魔女様は独学、先代から教わっています。ですが、西の魔女様の孫は今、こちらに」
「いるのですか」
「お、なんだ、仲良くなったのか」
「
からかいがにじんでいたので、
「もし、竜の方々がこちらで学ぶようになれば、魔女様に匹敵するかもしれませんね」
「サイル」
ユーリエは注意するように。
「魔女は嫌われているのか」
「西の魔女様以外は何を考えているのか」
西の魔女を味方につけている、と思っている
「サイル」
「本当のことでしょう。弟子も取らず。北と南の魔女は完全無視。東の魔女は気まぐれ」
クファールも小さく頷き。
気まぐれ。
文句を言いながらも子供達に魔法を教えてくれている。子供達に文句は言わず。時間に遅れることもなく。眠そうにふってくることもあるが。
こちらで何をやっているのか。
「あの離れて付いて来るのは」
「気にしないでください、と言っても無理でしょう。あの者達は頼んでもいないのに勝手に来て、警備してやると」
「魔法協会も必要ないと言いました。それでも強引に」
両者とも顔をしかめ。
「僕達が来るから」
「何かありましたら、すぐ言ってください」
多少警戒されると思っていたが。
二人は説明に戻る。
案内された部屋は二人部屋。一つの階をすべて使ってもよいとのことで、一人で部屋を使ってもよいのだが、どこの竜も二人一緒に入る。部屋も隣を選んで。固まっていれば何かあった時。
何もなければいいが。争いに来たのではないので、武器は持ってきていない。
小さく息を吐き、着替えの入った荷物を置いた。
その日は宿泊する建物の中、周辺を団体で見て終わり。次期竜王もいる。警備も兼ねて。そこでも離れて見ている者が。あまりよい視線とはいえず。
夕食は竜だけで。竜の地と違うものもあるので、これはなんだ、とにぎやかな食事となった。
翌日からは、クファール、サイル、ユーリエに案内され、学んでいる場を見せてもらい。
座学というものでは数十人が一つの部屋に集まり、本を見ながら、教師という者の話しを聞いていた。実技では、やはり数十人が順番に同じ魔法を使い。薬の調合も。
「魔力を持つ者は以前からいえば増えました。精霊と人の子もいるからでしょう。竜と人の子は、いないと思いますが」
サイルが説明。
竜身になればここへ自由に来られるが、なれない者は来られない。
道は一つ。しかも
「初歩から学んでいきます。試験といって実力を試すことも。合格すれば次に進み、できなければ同じことを学びます」
説明を受けていると、大きな音と悲鳴。見ると煙が。
「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝る声。サイルはそちらを見て小さく息を吐いている。
「あれ、あの子」
「ああ、東が味方につけた西の魔女の孫」
桃色の髪の子が頭を下げ続けている。以前より顔が見える。黒い
「あんな状態で教えられるのか」
「クファール殿に教えてもらっている。彼女はまだ学んでいると。クファール殿はここでも教えている。そのため十日に一度だが」
「うちもそうすれば」
「……」
対抗しているのか、冗談か。冗談だと思いたい。間に入る、とばっちりを受けるのは
「そのクファール、殿は西の魔女の弟子だと聞いたけど」
「ええ、そうです。弟子だからといってずっと傍にいるのではありません。さらに弟子をとることもあります」
本人は淡々と。
「クファール殿にも弟子がおります。クファール殿は西の魔女様の弟子の中でも優秀だと」
サイルはクファールを見る。
「いや、私など」
「そういや、西も西の魔女の関係者がって以前話していたな。そいつに教わっているのか」
西、西とややこしい、と
「どうだろうね」
「どこかに頼みに行った?」
「いや、俺のとこは行っていない。お前のとこは」
「行ってないよ」
ラビアに頼んで来てもらっている。ラビアの家に行って頼んではいないので、
「お前は」
「頼みに行こうと考えていたのですが、西の魔女以外まともな
黒輝は申し訳なさそうに。
ラビアは破壊の魔女、最強の魔女だと。
「なにより、居場所が」
「そうですね。西の魔女様の居場所、家ははっきりわかっています。頼りたい者、弟子入りしたい者も多いので。ですが、他の魔女様は関わりたくないとばかりに。この辺りに住んでいる、というあやふやな場所。しかも辿り着けないようにしており。弟子もいませんし」
「魔女の弟子になりたい人はいるの?」
「それは、なんとも。私は西の魔女様以外お会いしたことがありませんので。話を聞くだけで」
「私は東の魔女様にお会いしたことが。魔法協会に来られていて、その時に。北と南の魔女様はまったく。生きているのかどうかもわからないと」
ユーリエは顎に手をあて。
「魔女って何やっているんだ」
「西の魔女様は薬作りや、依頼に来られた方の話しを聞いています。他の方は」
「北と南の魔女は自分のやりたいことを。東の魔女は何度も言うが気まぐれ。魔法協会の依頼を受けたり、受けなかったり。ただ、どこの魔女も偽物がいます」
前半は
「偽物?」
「魔女の名を利用しようと。たとえば西の魔女は薬作りも得意なので、西の魔女が作ったものだと高額で」
「ああ」
誰かが納得したように。
「それ、偽物は大丈夫なの?」
「なんとも」
「なんとも?」
「魔女様方はほっていますが。北と東の魔女様は人に恨まれるようなことも。その偽物となれば」
さらに納得。恨みはその偽物に。
「西の魔女は弟子が目を光らせているので、それ相応の罰を」
クファールは淡々と。
「ですが、今はこうして学校があります。昔は魔力持ちが少なく、教えられる者も限られていたのですが、魔力持ちが増え、教えられる者も。弟子入りしなくても」
「魔女になれる?」
「それは、なんとも」
「魔力の大きい者がいれば、なれるかもしれませんね」
ユーリエが続ける。
「リディス様は、魔力はあります。弟子の方々より。次期魔女に相応しいでしょう。実技が、なんとかなれば」
ユーリエ、クファールは小さく息を吐き。
魔力だけあっても、ということか。
「
「北は氷の魔女。
ラビアが話していた。
「最も強い? お前のように強暴?」
「私のどこが強暴だ。最も狂った魔女。自分の望みのために、人としてどうか、ということをこれでもかと。長く生きているから強いは強い」
ものすごく嫌そうに。
南の魔女にそういう通り名はないらしい。話しを聞く限り、自由に動ける身とは。
「南の魔女は首から上だけ」
「……」
「不老不死を求めた結果、そうなったそうだ。ただ魔法に関しては右に出る者はいない。魔法の
「そして彼女は破壊の魔女。最強の魔女、か。何を壊してきたんだろうね。
散らかされはしたが、壊され、燃やされていない。
「
真実か。白夜達が知らないだけ。
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