第8話
四角く広い庭。整えられてる庭とは違い、庭木、花も植えられていない。殺風景ともいえる。四竜王は東西南北、それぞれに
竜王同士の話し合いは昨日おこなわれたらしい。盗み見、盗み聞きしたかった。
この庭で東西南北の三将が争う。竜王に腕を見せる。
「一対一で戦うのか?」
一番目は
「ううん。三対三」
「どうやって負けを決める。相手が降参するまで?」
「時間がある。あと竜にならないって決まりも。竜になったら、この一帯は」
「なるほど」
「父上、この者が話していた、西の魔女殿の使いです」
年は五十代ほど、に見える。隣にはフォディーナ。
「白慈から色々聞いている」
何を話しているのか。
「
「ようだな。その話は聞いていない」
「
「ある、な。誰につけば得か」
「君の派閥、もしくはどこかの派閥に」
「ない」
「ああ、始まるね。人の姿で応援したら」
「喜ぶか? 気が散りそうだが」
「うん。他の竜の気が散る」
「……」
笑顔でそんなことを。
「
「それならわからないよう、魔法で邪魔できるが」
「やる気ないでしょ」
頷いた。
「あの女が応援すれば喜ぶのでは」
指したのは南。
「戦う相手を応援してどうするの」
「始まりますよ」
フォディーナの言葉通り、
「あれは刃を
「ううん、本物」
「大丈夫。怪我はするけど、大怪我まではいかないし、竜王達が見ているのに、とどめを刺すのは」
「……」
笑顔でさらりと。
ラビアも見ていたが、
「ん?」
反対側の屋根に何か。
「竜って
くすくすと笑う声。
「それなら、お前達は竜ではないのか」
屋根にいるのは二人。一人は真っ黒なローブを頭からかぶり、顔は見えない。一人は何もかぶらず。二十歳ほどの若い男。真っ白の長い髪を一つに結んでいる。右は赤、左は青の色違いの瞳。
「君は?」
若い男は無邪気な笑顔で首を傾げている。
「人に名前を
「うん」
悪意のない笑顔。
「そうか。それで、ここで何をしている」
「何をしていると思う」
笑顔で向かってきた。
隠しもせず舌打ち。他の者も同じ気持ちだろう。
竜王様の傍に一人残し、それぞれ剣、槍、拳を振っていた。
「北竜王様がその男に襲われた!」
耳を疑う言葉。
試合していた三将は、飛び出してきた男を囲む。男は笑っている。狂ったように。
「苦しくない、苦しくない、苦しくない。これが竜の血」
苦しくない? 竜の血? よく見ると男の口周りは赤く汚れて。
「まさか」
北竜王様が襲われ、襲った男の口周りは赤い。瞳は黒。竜ではない。その黒い瞳で周りを見て、
「まだ、竜がいる」
歪んだ笑み。
「
「ああ」
「わかっています。ここは任せても」
白夜、
男は細い。東竜王と南竜王の三将が囲んでいても、北竜王様を襲った。不意打ち、だろう。北竜王の三将は北竜王様の傍。南、東も一人を竜王様の傍に。
男の体が爆発、したように見えた。実際爆発しておらず、男の体から、無数の黒い蛇が。太いものもいれば、小さなものも。
向かってくる蛇を持っている剣で斬る。斬って、次の蛇を斬る。その次と斬っていた。いたが、蛇は減らない。どころか、斬ったところから再び蛇の頭が。
「なんなのこれ。きりがないよぉ~」
東西南北の三将で唯一の女性、
「大丈夫か!」
見ると、東竜王の三将の一人が蛇に
さらに蛇は太く、数も増え。一人が竜に姿を変えたが、無数の蛇にからみつかれ。さらには人の姿で戦っている竜の邪魔にも。
南の
「本体を叩く。手伝え!」
そうすることが早い。命令口調は気に入らないが。
炎、水、風、土が舞う。しかし、周りの蛇を倒しても再生が早い。
「ちっ、竜の回復力か」
誰かが。
人の身になっても頑丈だ。しかも回復は早い。ラビアに言わせれば、これも魔力のおかげ。魔法使いは治癒魔法というものを使い、傷を癒すが、竜はその魔力で、自動回復? しているのでは、と。その竜の血を取り込んだから、回復が早いのか。
そのネズミは大人しくしているのか。
これを起こしているのは人間。ここに入れる者は限られている。だから油断していた。
「うわっ」
「今度はなんだ」
襲ってくる蛇を斬る、かわしながら。竜になった者は不利を
「男がふってきた」
「はあ?」
「こっちは女」
「はあ?」
「ちっ、俺もそっちが」
「
「……ラビア?」
ラビアは細い、
蛇はラビアにも襲い掛かり。だが触れる前にばらばらに。
ラビアは小さく舌打ち。男は笑顔で剣を繰り出し。さらに、
「
新たな者が。声は男だが、頭から黒いローブをかぶっており、はっきりわからない。
「ええ~、なんでぇ」
ラビアに剣を振っている男は笑いながら軽く。
「いいから、退くぞ!」
黒ローブの者は必死。
「これもいるし、この程度なら」
指しているのは蛇達。
「その女は本気を出していない! 出されれば」
本気を出していない? 確かにラビアは涼しい顔。周囲の温度も下がったような。ではなく、蛇が凍りついていく。
あれだけ苦戦していた。
「う、そだろ」
三将達は驚き。
「へえ、すごいすごい」
男はラビアと距離を取り、手を叩いて。
「すごいね、君。君も竜? あ、竜は金の瞳、だっけ。精霊? ハーフ? まさか魔族?」
「そういうお前は」
冷静。いや、冷たい声。今まで聞いた覚えはない。
「聞いているのは、ぼくなんだけど」
離れている黒ローブの者は盛大な舌打ち。
「退くぞ。その女にかまうな!」
「ええ~、もっと遊びたいよ」
男は子供のように頬を
「そんなに言うってことは、この子のこと知っているの?」
「その女は」
三将達は動かず。しかし警戒は
「その女は、東の魔女。最強の魔女だ」
苦々しく。
全員の視線がラビアに。おそらく竜王様達も。
注目を
「最強? 最強なの、彼女が」
男は興味津々といった様子で見ている。
「そうだ。最も強い魔女。なぜここにいるか知らないが、我々の力では。わかったのなら、退くぞ!」
最強の魔女。東の魔女についてはこちらでも聞いている、届いてきている。
西の魔女の孫がいる
「へぇ~、ふうん。最強、ね。だったら、これを受けたらどうなるかな」
男が剣を持っている右手を上げる。その腕、手、剣に炎が。
「っ」
息を
「行くよ」
男は剣をラビアに向けて振り下ろす。炎はラビアに向かい。
炎がラビアを襲う、包む。
「ねえねえ、これでぼくが勝ったら、ぼくが最強」
子供のように無邪気に。
「馬鹿を言うな。退くぞ」
「ええ~、だってあの炎は」
「サラマンダーの炎、か」
女の声が響く。炎はラビアの周囲を渦巻き。服、髪の一本すら燃えていない。
「まじか」
誰の呟きか。
炎を放った男は目を見開いている。
「返すぞ」
言葉通り、炎は竜、蛇のように男へと向かう。
「えっ」
反応が遅れ、炎が男を襲う。
「ウンディーネの力を使え!」
黒ローブの者は叫びながらも、大量の水を出し。あれも魔法だろう。詳しくはわからない。
返ってきた炎にぶつけるが、炎の勢いは弱まらず。
炎が落ち着くと、男はその場に座り込み。あれだけの炎を受けたのに生きて。無傷ではなく大火傷を負っている。
ラビアが男に近づいていく。
「あ、れ」
男は不思議そうな声。よく見ると、両手が震えている。なぜ震えているのか、わかっていないのか。
「サラマンダー、ウンディーネ、ノーム。お前達、何をやっている」
男はさらに震え。
「まさか、東の魔女殿がいるとは」
突然、ラビアの背後に黒い
間近から振られる剣。しかし、ラビアの姿はその場から消え、離れた場所に現れる。
「それが恐怖だ」
「恐怖」
座り込んでいる男は繰り返し、
「今は勝てない。
黒ローブの者が座り込んでいる男の傍に。ラビアは左腕を真横に振る。
風を切る音。凍っている蛇が見えない何かに
鎧の者は剣を持っていない左手を前に。
「さすが、東の魔女殿。完全には防げなかったか」
ラビアは白夜達の目には見えない魔法を放った。相手は何かして防いだのだろうが、何をして防いだのかわからない。前に出していた左手の鎧の一部は壊れ。そして、男と黒ローブの者がいない。見回すが、どこにもいない。
「七十点」
ラビアは小さく息を吐き、長い髪を払っている。こんな場だが、彼女の周りだけ空気が違う、絵になるような景色。
「上手く気を引き、あの二人を逃した。突然背後に現れたこと、自分の有利になるよう空間を作った」
「手厳しい。私としては九十点なのですが」
「それなら、そこから出られれば、百点をくれてやる」
「出る?」
「お前の周りに空間を作った。そこから出られれば百点だ」
「ほう。一瞬で、気づかれず作り上げるとは」
空間?
「ああ、それはおまけだ。せいぜい頑張れ」
ラビアはひらひらと手を振り。
つまり、あの跳ね返っている場所が空間、とかいうもの。
黒い球は当たると鎧を
「で、お前はいつまでそうしている」
ラビアは腕を組み、地面を見て。
「そうか、永眠させてほしいか」
「待てぃ」
地面から声。いや地面と同じ色をした何かが。
「ワタシ、ノーム。とっても偉い精霊。土の精霊のトップ。とっても偉い」
「その偉い精霊が何をしている」
「……」
冷たい目と声。ここからでは何と話しているかは。しかし本人の言葉では土の精霊ノーム。
「お、お前こそ、何している。あれ、あれ、瞬殺できるだろう」
ラビアが見たのは鎧の者。
「いたぶる趣味はない。やるなら苦しまず、瞬殺。聞いて正直に話さないだろう。だったら、弱らせて。って話を
地面へと視線を戻す。
「で、なぜここにいる。まあ、話さなくても予想はできる。
「ま、まぬけ、まぬけ言うな! 何度も言うが、ワタシはとっても偉い、土の精霊ノーム」
「ほぉう」
「……」
ラビアのさらに冷たい視線。偉いと言うが、負けているような。
「これもどうにかしないと」
見たのは広範囲で凍りついている蛇。
ラビアが軽く剣を振ると、
「だ、大丈夫なの」
「サラマンダーとウンディーネは、あれに取り込まれているんだな」
「あ、ああ。ワタシが取り込まれた時、ウンディーネの力を使っていた。その後サラマンダーを取り込んだのだろう」
「ウンディーネとお前は人に友好的だからな。そこをつかれたか」
ラビアは顎に左手をあて。
「シルフは」
「家に来た」
「はぁぁ! あいつぅ、ひとりだけ安全な場所にぃ」
「警戒心が強かったのだろう。さて」
右手に剣、左手は細い腰にあて、
「お前達は何者だ。答えたら見逃さんこともない」
「はあ! あいつらは
「傷つけたのは、それだろう」
剣で
「まあ、何かした、中に入れたのはこいつらだろうが」
鎧の者へと視線を戻す。
「まったく、
「運がなかっただけだろう」
「貴女に、ここを落とさせればよかった」
「んなこと、できるわけ」
「できる。お前達、竜が知らないだけ。東の魔女殿の実力を」
声を低く、冷たくし、
「それをやれば私は竜から罪人扱いされるな。下には町もある。人からも」
ラビアは小さく肩をすくめ。
「はぐらかさず、教えてもらおう。あの男はなんだ」
「さあ、なんでしょうね」
「……」
全員が注目。そこにいたのは、金色の竜。透明な
「おい」
声もなく、金色の竜を見て。
「おい!」
その声に全員がはっとする。
「あれはお前達の仲間か」
金色の竜は暴れ。
「い、や。あんな竜は」
「違うんだな」
「……」
目は金色の竜に
「どっちなんだ、はっきりしろ」
「仲間ではない」
「あれは我らの仲間ではない」
「ああ」
つまり、倒せと。
意味を理解した南竜王の二将も剣を構え直す。
「あの男、お前が逃した、サラマンダーとウンディーネを取り込んだ男は何者だ」
金色の竜は答えず、暴れ。
「そうか。答えてくれなくとも、方法はある」
暴れる幅が
「空間越しに炎を出した、か」
剣を振ると、炎は真っ二つ。
「ここの竜とは関係ないようだし、
剣を構え、振る。ただそれだけなのに、金色の竜は吹き飛び。
「……」
細い腕、細い剣であそこまで吹き飛ぶものなのか。硬い
「ふむ。なかなかの剣だな。竜を傷つけられた」
「いや、お前なら魔法で瞬殺」
左肩に茶色の毛をした小動物が。
「聞きたいことがあると言った。瞬殺したらできないだろう」
余裕の足取りで金色の竜に近づいていく。
竜は頭を上げ。
いくつもの雷が突然降ってくる。
「っ」
眼前は真っ白に。
雷も落ち着き、視界もはっきり。
「逃げられた、か」
ラビアの言う通り、金色の竜の姿はない。地面はあちこち焦げ、氷の欠片が散らばっている。建物の
「あ、たす、け」
凍らされ、倒れている男が手を伸ばしている。肩の小動物は背中側に下り。
ラビアは冷たい
「東の魔女様は見向きもしないって、か」
若い、人の年でいえば十代後半の女性が、去ろうとしていたラビアの背に向け。小動物は前面に移動している。
「やめろ」
「だって本当のことじゃないですか。確かに、この場は乱しましたけど。そいつだって理由が」
「やめろ!」
「やめなさい!」
倒れている男を診ている男と廊下に出てきた女性が叫んでいる。ラビアは小さく笑って。
「何が、おかしい」
女性はむっと。
「その男は純粋な竜の子供、しかも女の子に苦しむ魔法、呪いをかけた。いくつも」
他の三将も反応。
「それだけではないだろう。竜の子供だけでなく、動物、人にも。今まで何人かけた。かけた者も同じように助けを求めたのでは。助けたか? それとも自分だけ助かろうと。ああ、竜の子供が嘘だと思うのなら、聞いてみればいい。あちこちの医師に診てもらったそうだ」
あの親子。娘は半年寝たきり。
父親は日に日に回復していく娘の報告を、嬉しそうに。
「フィリ」
女性の名前だろう。男は注意するように呼び。呼ばれた女性は唇を
「治して、
ラビアは馬鹿にしたように。
「東の魔女様」
廊下にいた女性も庭に出てくる。こちらは二十代後半から三十代前半に見える。西の魔女の孫も出てくる。孫は笑顔で。
「いらしていたのですね」
「西の魔女に頼まれた」
小動物は背中に移動。ぶら下がり。
「おばあちゃんに」
「西の魔女様に」
「お前らが来るのなら、断ればよかった」
小さく息を吐き。
「どのような」
「娘が竜に
「……」
「ああ、依頼されていた娘は見つけて帰した。他にも何人か。だが一ヶ所だけ。他はどうなっているか」
意地の悪い笑み。
わかって言っている。東西南北の竜王様が
「東の」
「おい」
治療していた男を押しのけ、
「魔女ぉ!」
倒れている男が右手を突き出すと、真っ黒い大蛇が現れ。
「リディス様!」
押しのけられた男がラビア、いや西の魔女の孫を見て。傍にいる女性も孫をかばうように。ラビアは小さく笑い。
大蛇はラビアの周りをくるりと回ると、姿を狼に変え、放った男に向かい牙をむく。
治療していた男は舌打ち。傍にいた女性の手を引き、離れる。狼は男の右肩に
「し、師匠」
女性は男にしがみつくように。
「返したんだ」
「返した?」
「
男は苦々しげに。
「さすが東の魔女」
冷たい目、嫌悪の目で見ている。
「大事な未来の魔女を巻き添えにしてもよかったのか」
ラビアは勝ち誇った、馬鹿にした目。
「とはいえ、何を護っているのやら」
「なん、だと」
男の傍にいる女性は眉を吊り上げ。
「そう言うのなら、これが見えているのだろうな、当然」
ラビアが指したのは孫。
「はあ、あんたこそ何を言っている」
女性は
「フィリ」
傍の男は女性の右肩に手を置き。フィリ、というのが女性の名前か。
「っ、だって、そうでしょう、師匠」
男は女性、フィリの師、のようだ。茶色の髪と同じ色の鋭い目。三十代半ば、に見える。
「やめろ。お前の勝てる相手じゃない」
「でも、師匠だって気に食わないでしょう。あの女は」
「やめなさい!」
ラビア、孫の傍にいる女性が怒鳴る。
「好きに言わせればいいじゃないか。それだけあれらの目が節穴なのだろう」
「なっ!」
「やめろ」
師は弟子を止め。
「魔女様」
傍の女性は困ったように。
「何が、見えている。お前の目には、何が映っている」
「師匠!」
「認めるのか」
男は歯がみして「ああ」と頷き、孫の傍にいる女性も「私からもお願いします」と頭を下げている。
ラビアが指を鳴らす。
「へ?」
孫の間の抜けた声。傍の女性は息を
「え~と、あの、いきなり暗くなったんですけど」
孫ののんびりとした声。
その彼女の周りにはよくわからないものが。蛇、
「あの~」
あんなものに囲まれて、よく平気で。
再び指を鳴らす音。孫を覆っていたものは消え。いや、可視化した。他の者にも見えるように。見えなくなっただけで、彼女の周りには。
「で、お前達は何から誰を護っている。それとも竜になすりつける、肩代わりさせるか。そのために手を組んだ?」
「な、に、を、何を言っている! お前が作った幻かもしれないだろ!」
弟子は叫び。ラビアはわざとらしく目を丸くし、小さく笑う。
「何がおかしい」
「フィリ、黙っていろ」
「でも、師匠」
「黙っていろ。これ以上節穴だと言われたくなければ」
「幻と本物の区別もつかないのか」
呆れたラビアの声。
「魔女様」
傍の女性も呆れ半分。もう半分は
「偉そうに言うのなら、わかっていたのだろう。なんとかできるのだろう。それとも」
馬鹿にした目。
「フィリ」
師は弟子を止めている。
「ああ、わかっていた! わたし達でなんとかする!」
ラビアは笑い。師は弟子を叩き、ラビアと孫の傍にいる女性は顔を手で覆っている。
「この、馬鹿が!」
「だって師匠」
「これで東の魔女の手は借りられない。あれをお前が、俺達がなんとかしなければならなくなった」
「は? でもあれくらい」
ラビアは肩を小さく震わせ、笑い続けている。
「本当に見えているか、あれが。そして誰がやっているのか、わかっているか」
「っ」
「その女がやると言ったんだ。そちらがやるしかない。たとえ同じ弟子がやっているのだとしても」
弟子は歯がみ。
「東の魔女。こっちでも聞いている」
「
「最強の魔女。どれほどの腕か」
真紅がちらりと見たのは北竜王の三将の一人。ラビアを挟む形。いや東西南北、囲む形。
「
「
剣を構え、二人が動く。
「っ」
いきなり体が重く。地面に。
「魔女様!」
女性の叫び声。
「手を出してきたのは向こうだ。私は身を護っただけ」
「って、なんで、あたしまでぇ~」
顔を上げると、庭にいる三将、全員が地面に。立っているのは師弟、孫、女性、ラビア。
「連帯責任」
「なんで、俺まで」
「まだ元気そうだな。もっと重さを加えるか」
さらに体が重く。茜は悲鳴をあげ、
「真紅くんのばかぁ~、あやまれぇ~」
「魔女様!」
「おい、やめろ!」
それぞれが声をあげていた。
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