第19話 ジャンケン
暗い。真っ暗だ。ああ、夢の中か? そうか、超統領になったのも全部夢だったのか……。
僕は、逆にほっとしていた。誰かが身体を揺らしているぞ。寝ぼけた感じで、うっすらと目を開けた。目の前に居たのは、あの学校の夢世界に居た女子学生の一人だぞ。実芭さんだったかな? 否、顔は同じだけど耳が大きい。これは、確かエルフという伝説の種族だぞ……。僕が目覚めたのに気付くと、その茶髪のエルフは微笑んだ。
「お目覚めぇー。おはようのキスしてよ」
「ええっ?」
僕が驚いたリアクションをすると、彼女は大笑いをしだした。どうやら、からかわれたな。まぁ、怒っても仕方がないので、照れ笑いをするだけであった。
僕の身体は、超統領の時の姿に戻っている。周りを見回してみると、どうやら木々に囲まれた場所のようだ。
「楽しそうだけど、新婚ごっこをしてる暇は無いの。超統領。否、ミドレン。デモネードの心の悪の
とんがり帽子を被り、魔法使いの格好していた森リエ。そんな名だった女子に注意された。いつの間に着替えたのか? しかし注意されて、超統領の面目無しだな。
聞いて分かったが、驚く事に森リエは、モーレンだったのだ。先程の場所は、僕の魂の前世の一つだったようだ。デモネードの心の悪を無くす為に漆黒ドアに入ったつもりが、無限に繰り返される魔の時空の中に閉じ込められるとこだった。あの前世の魂は未熟そうな世界だからな。そうなれば惑星ブラーフは、終わりであろう。
あとエルフの実芭さんは、シャリーだったのも驚きだ。じゃあ、もう一人の彼女は? 多分これだなと名前が浮かんだ。
「君の名前は、
「えっ? 美樹だよ……」
想像と違ったようだ。美樹に悲しい顔をされてしまい、その場が白けた空気になるのだった。
さてと、どうしたものかと思っていると、木々の間の向こうの方から物音がするじゃないか。音は、だんだんとこちらへ近づいて来る。獣の
音をさしていた原因が僕達の前に姿を現した。男ばかりの五人組だ。どう見ても正義のヒーローという感じじゃない。革の鎧を着た
そう考えている間にも男達は、にやけた顔をし、せせら笑いながら目の前に来た。それは、僕の好きな笑顔じゃない。とにかく会話してみるか。僕は、大男に話しかける事にした。
「こんにちわ。僕は、ミドレンです。道に迷ってしまって……ところで、僕達に何か御用ですか?」
「お前をボコボコにして、女どもを頂く用だ。それとも素直に渡せば、お前は見逃してやってもいいぞ。どっちがいいのかを、女どもに聞いてみるがいいぜ」
欲望を隠さずにストレートな要求だな。流石は、デモネードの心の中の存在する悪の一つだ。しかし従う訳にはいかない。僕は、直ぐにモーレンに相談をした。男達は生身でないので、戦っても問題ないらしい。それでも僕は、平和的にジャンケン勝負を提案することにした。それを提案すると、意外に大男が勝負を受けてくれた。よし。いざ勝負だ!
「ジャン、ケン? ぐはあああ!」
僕の掌でパーを出した直後に、大男の拳を握ったグーパンチの一撃が僕の左の頬を直撃したのである。僕は、叫びながら、横に倒れた。周りにいた男達は笑っている。対照的に美樹は、悲鳴を上げて騒いでいるようだ。
僕は、殴られた頬を押さえながら立ち上がる。痛いな。これが殴られた痛みか。今まで、こんな経験は無かったからな。お陰で、分かったよ。殴られただけでこの痛みだ。銃で撃たれたり、ミサイルで攻撃されたら? どれだけ痛くて、苦しいんだよ。愛する人達にそんな苦しい思いを……。
「させれるかよー!」
そう叫ぶと伸ばした右手で全力で大男の頬を叩いた。その瞬間に大男の首から鈍い音がする。余りの威力に首の骨が耐えれる限界を超えたのだろう。大男は、首がふにゃふにゃになり、その場に倒れた。
掌を広げて左右に振って、パーだからジャンケンの勝ちだと、さり気なく他の男達にアピールする。まぁ、勝てるのは、パーだと聞いていたのだけれど……。
男達は、戦意を喪失したらしく、
少しすると大男の姿はその場から消えて無くなった。すると、ショック状態だった美樹も落ち着きを取り戻したようなので、取り敢えずは男達の逃げた方向に進んで行く事にしたのだ。
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