第16話 デモネードと魔王
忙しい日々だと年月の経過は早いものだ。僕が超統領になってから13年が経過していた。僕なりに、経済発展のために新技術開発の援助政策の成功と農業を発展させての輸出増大、それによる税収の増加。バイオ燃料と自然エネルギーの生産の増大による輸入エネルギー費用の削減も成果があった。そして、貧しい民への補助金などを行う政策もした。がむしゃらに全力で働いた。他の立候補が出ない為に、選挙費用が無いから、僕の給料とボーナスは半額にした。そのためか、サンブック国民に認められて、支持率も高い。
ホワレーン経信者は、基本的に犯罪をしないので、警察と軍隊を統合した。経費の削減に成功。軍事面は、中立国となるを基本とし、外交で各国と良好な関係になるように努力した。これにより、軍事費を抑える事に成功。
政治家として、充実していた。ホワレーン教徒でない一部の民から軍事政策の甘さを指摘をされていたが、それでも不安など無かったのだ。
*****
その日の超統領官邸は、ざわついていた。
僕の執務室に女性二人が慌てて駆け込んでくる。それは、モーレンとシャリーなんだけど。
「超統領、シレーン共和国の超統領に、デモネードが就任しました」
「そうか。ついにあの男が……」
超統領の護衛兼秘書官に就任していたモーレンの報告に僕は、意気消沈した。デモネードについては、シレーン共和国にいる義理の兄さんからの情報を聞いている。元軍人で、性格は凶暴。上官への態度も悪く、部下へのパワーハラスメントとセクシャルハラスメントは日常茶飯事の男だったと。信仰心など皆無の奴は、ホワレーン教徒で部下思いの
「デモネード政権は、甘くないわよ」
「ああ、そうだな。なぜだか?
「……」
モーレンは、無反応で厳しい顔をしている。彼女は、昔から予知夢をたまに見る事がある。子供の頃から驚かされたものだ。それ故に超統領の護衛としては、良い人材なのだ。
最近になって彼女は、この国が危なくなる悪い予知夢を見たようだ。シレーン共和国とサンブック国の両方の脅威となる男が現れたのだとモーレンは助言してくれている。何か恐ろしい魔王を召喚していると言うのだが、どういうことなのか?
「魔王とは、何なのか……」
「その事で新情報を入手よ。魔王とは、新兵器のことね。その兵器は、起爆装置で魔鉱石を圧縮させて大爆発させる物を搭載させた飛来する恐ろしい兵器なのよ。兵器名は、デスギフートと呼んでいるらしいわ」
シャリーの報告に僕は絶望しかけたが、彼女の報告書を読んで気を取り直した。それには、デスギーフトの設計図のデータを手に入れたとあったのだ。さすがは、超統領の護衛兼
だが、別の苦悩が直ぐに生まれた。こんな大量破壊殺人兵器を製造していいのだろうか? 超統領とは、泥を被る役目なのではないのか? とモーレンとシャリーに愚痴を漏らした。モーレンは、目を閉じて沈黙だ。
「泥を被っても、泥の中でホワレーンの花を咲かせれば、サンブックの華となるかもね……知らんけど」
おいおいシャリーよ。知らんけどは余計だなぁ。まったく、何処の言葉だよ……。
しかし、これからは、悩み続ける事になりそうだな。これが夢であって欲しいと思っていた。
*****
僕は、シレーン共和国のデモネード超統領の対応策を考えて、奴の事が頭から離れない日々を送った。昼は勿論だが、夜も眠れないくらいであった。そんな気持ちの晴れない日が続く。今日も、そんな一日が始まると思っていたら、朝早くに超統領官邸の執務室にシャリーがやって来る。何か有ったな?
「超統領、ついにデモネードの悪政が始まったわよ」
「報告してくれ」
シャリーの部下、シレーン共和国滞在の諜報員の報告によれば、デモネードが、芸能活動と文学と娯楽書物禁止法を制定したとの事だった。これにより、芸人は職を失った。映画の上映禁止と演劇の公演も禁止。小説や漫画本、絵本は、燃やされたようだ。あの男は、シレーンの民の娯楽と表現などの自由を確実に奪っている。なんて奴なんだ! しかし、法律で許された本もあるとの事だ。どんな本なのかな?
「その本はとは、なんだ? デモネード写真集か?」
「違うわね……。エッ、エロティクな本……よ」
少し顔を赤らめて、恥ずかしそうに小声でのシャリーの報告。エロティクな本か。民の欲望を利用する方法。これは飴と言う事だな。デモネードは、飴と鞭を使うとは、抜け目の無い男だ。それをシャリーに言うと、シャリーが何だかムキになり、飴と鞭は無いとの事だ。何だと言うのか?
「もう、分かりの悪い超統領ね! SMプレイ本は無いわよ!」
「えっ、鞭に反応?」
鞭に反応かよ! 不謹慎な発言だったかな? とか不安になって損したよ。鞭の意味が違うよシャリー。それに口に
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