第13話 魂ランク上級

 ラキとして生まれた世界。猫耳として生まれた事は試練と思っていた。でも逆だったのだ。猫耳であるが故に運命の出会いがあり、お笑いの道へ行けた。そこで成功する事が出来たし、愛する人となる女性を守れたのだ。幸運を招く猫の耳だったんだ。

 そして、笑いの力で人々を笑顔にして、心を和ませた事と人名を救った事。これで徳を積めたし、心を愛で満たす事も出来たんだ。


 さて、次の世界は、魂ランク上級の最終段階だ……。壮大な宇宙。その宇宙の銀河系の中に光合系銀河が存在した。そして、その中の惑星の一つにブラーフが有る。それは、太陽系にある第三惑星と似ている。惑星の環境や人間と他の生存する生物などは、ほぼ同じだった。

 

 遥か昔、ブラーフに偉大なる如来が誕生された。偉大なる如来は、守護神の加護により衆生を守るために、正しい教えを説いて広められた。そして完成したのが、ホワレーン経典である。この教えは、惑星に存在する国々に広まり、信じる人々をホワレーン経信者と呼ばれた。信者の中には、偉大なる如来になる事を志す者達も存在した。その者達は、守護神の加護を強く得られて、時には奇跡的な現象を起こす事もある。その者達を菩薩と呼んだ……。



 *****


 惑星ブラーフの中の数ある国の一つ、サンブック国に僕は生まれた。生まれた家は、商人の家だった。凄く裕福というわけでないが、生活に困ることを感じたことは無かった。

 そんな家で育っていたのである。変わりのない日々を暮らしていた。そして、今日も朝がやって来た。


「ほら、ミドレン早くしなさい。もう出発する時間よ。父さんも、とっくに待っているんだから」


「はぁーい」


 せかす母の声に僕は、気のない返事で答えた。慌ててパジャマから出かける用の服に着替える。

 父と母は、この惑星ブラーフの古来から信仰されているホワレーン経の熱心な信者なんだ。

 今日は、ホワレーン経のサンブック国で一番偉い人である、大房主ビッグボウズ に僕が紹介される日なのだ。まだ子供で宗教的なものに何の興味もない僕。それとは、反対に父と母の喜びようったら……。今まで見たことがない。


「お待たせ」


 僕は、駆け足で母の所に駆け寄る。そして、母と一緒に父が待っていた自動の電動馬車に乗り込んだ。遥か昔は、馬が引いて動かしていたみたいだが、僕が生まれた時代は、足が車輪の機械の馬が引っ張る仕組みの大好きな乗り物なのだ。


「さぁ、しゅっぱーつ!」


「ミドレンは、これに乗ると元気だな」


「ほんとね」


 父と母の微笑みと共に電動馬車は、目的地の大寺院だいじいん に向けて走り出すのだった。



 *****


 大寺院の中に入ると少女が二人が立っていた。見たところ、年齢は僕と同じ位だな。父と母は、少女に挨拶をして、手を振り奥に歩いて行く。僕も挨拶をしないとね。


「おはよう」


「ミドレン君、おはよう。私は、シャリー。よろしく」


「おはよう。私は、モーレンよ。ミドレン君」


「えっ! 名前を知っているの? 二人に何処かで前に会ったかな?」


 僕が驚くと二人は、クスクスと笑い出した。何だろう。でも僕も会った事は無いと思うけど、懐かしい様な気持ちになってくる。


「会った事は無いよ。あのね、モーレンが君の名前や来る事を教えてくれてたのよ。驚く事もね。ミドレンは、大切な人に成るんだって。そうよね、モーレン?」


「そう。運命なの」


「そうなんだ……。おっと、そろそろ僕は行かないと。またね」


 何の事かは、よく分からないな。けど友達には、なれそうだ。手を振ると、二人も手を振ってくれからね。そして僕は父と母を追いかけた。



 *****


「お久しぶりです、大房主ビッグボウズ 様」


「おお、これは、ニコマール御夫妻。久しぶりじゃのぉ」


 白い顎鬚あごひげをはやした小柄な、お爺さんに父と母がかしこまって、挨拶をした。なるほど、このお爺さんに会いに来たのか。そう感じながらも、ボーっとしていた。


「ほら、大房主ビッグボウズ 様にミドレンも御挨拶をしなさい」


「ミ、ミドレンです」


 父に則され、そう言って慌てて挨拶をすると大房主ビッグボウズ 様、は、まじまじと僕の顔を見ていた。僕は、蛇に睨まれた蛙だ……と思いたくなる程の威圧感のある眼差しだった。


「ふぉっふぉっふぉ。そうか、ミドレンか。良い子じゃのぉ。よろしくな」


 厳しい眼差しが直ぐに笑顔になり、手で頭をなでてくれた。その様子を見て、父と母も安心した様子だった。


「うん。よろしく!」


 そう元気良く言うと、父が直ぐに慌てふためいた様子に変化した。


「よろしくお願いしますだろ。大房主ビッグボウズ 様、どうもすみません。商売が忙しいもので、ろくにしつけなどもしてませんので……」


「ふぉっふぉっふぉ。いやいや、気にしなさんな。良い子じゃ。将来この子は、わしを超えるんじゃね?」


「えっ?」


大房主ビッグボウズ 様の思いがけない言葉に父も母も驚いた表情をしていたのを今でも憶えている……。

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