第11話 芸能活動と休日

 俺達のお笑いコンビのバナナ猫は、最初の活動は、お笑い番組のオーディションを受けに行ったりしていた。しかし、それだけだと有名になるのには時間がかかっている。今日もプロダクション会社、いわゆる事務所に来たけど、やる事が無い。自分のデスクの席に座ってコントのネタを考えていると、バナヨの兄である社長に社長室に呼ばれた。そして行くと、そこに社長と一緒に居たのは有名で売れている芸人だったのだ。


「あ、あなたは、ヘッドフラワーガーデンさん!」


「どもー、おフラワー。君がラキ君だね。僕は、ここの社長に破格の契約金を貰って、このプロダクション会社に移籍したからね。会社内では講師も兼ねてるから。ヨロフラワー」


「そういうわけだ。これからは、第二計画を発動する。ラキ達は、ヘッドフラワーガーデン司会の番組にレギュラーで出るんだ。親会社が提供の番組だから頑張るんだぞ」


「はい。社長、ありがとう。頑張ります!」


 これからはバナナ猫として、人々を笑顔にしていくための本格的な活動が開始されるのだ。俺の心は燃えている。いつかは、ヘッドフラワーガーデン師匠を超える芸人になるんだ! そう決意していた。



 *****


「ねえ、ちょっとラキ……こらっ!」


「おわっ!」

 

 バナヨに怒鳴られて、思わず叫んでしまった。バナヨは、呆れた顔をしている。


「どうした? バナヨ。いきなり怒鳴るとビックリするだろ。ここは、舞台やスタジオじゃないんだからな」


「だって、ラキったら、ずっとライオンを眺めているんだもん」


 俺とバナヨは、夫婦になった。お笑いコンビのバナナ猫を結成してから、早くも十年が経過。大抵はバナヨと一緒にいるんだ。恋人になり、結婚するのは自然な流れだったなぁ。否、俺は、ずっと前から好きだったけど、恋愛感情から逃げてただけだな……。

 俺達は仕事で、テレビのレギュラー以外にもショッピングセンターや遊技場での営業活動をしてきた。学園祭などもあった。その甲斐もあって知名度も上がっている。忙しい日々の中、最近の趣味は、バナヨとの動物園観覧に来ることだった。


「ライオンを見ていると俺は、懐かしい思いを感じるんだ」


「それは、私もだけど……」


 突然に俺と手を繋いだバナヨ。俺も離れたくない。そう切ない思いになり、手をしっかりと握る。


「相変わらず仲がいいわね。お二人さん」


 背中から突然に声を掛けられて、振り向く。そこには、女性猿人が動物園に似合わないスーツ姿で爽やかな笑顔で立っている。それは、懐かしい顔だ。


「あっ、君は、もしかして? 同じ高校の演劇部員だった……」


「ルネだよね? ラキ、ルネだよぉ。同じ演劇部だったもんね。久しぶり。元気にしてた?」


「うん。元気だよ。ラキとバナヨは、元気だよね。テレビを見てるから分かるわ。ラブラブなのもね」


 そこに居たのは、高校時代の同じ演劇部員だったルネだ。思わぬ再開に俺とバナヨは笑顔になる。それから手を繋いでいるのを見られて、俺は照れ笑いに変わっていたのだ。久しぶりに再会したので、ゆっくりと語り合う事にしようと提案があり、動物園の一画いっかく にある喫茶コーナーに向かう事にしたのだった。

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