第55話 みんなでサウナ!


「ようやく……ようやく、エノアのあられもない姿が見られると思ったのに……」


 ――ログハウスのお風呂場。

 そこでは、ルーナが不機嫌そうに俺をじっと見つめていた。


「……何、この邪魔な布は?」

「これはサウナウェアだよ。でも、水着みたいにお風呂もそのまま入れる服なんだ」


 俺はルーナ、フェリ、ロマリアにサウナウェアを着てもらっていた。

 そして、もちろん俺も。

 サウナウェアは水着ほどの露出はない。

 だから、ルーナはともかくロマリアやフェリもそこまで恥ずかしくはないだろう。

 速乾性が高く、汗も吸収してくれる。

 このお風呂に注がれている【魔法ドラム缶風呂「スチーム・オアシス」】の効果でお風呂に浸かるだけで身体の汚れは無くなるから身体を洗う必要もないし、この格好でも十分だ。

 ついでに、のぼせや頭痛を防いだり、髪や頭皮・耳を保護する為のサウナハットも用意した。

 俺は、みんなで一緒に入ろうとしていた理由を説明する。


「サウナに入ると、ステータスが向上する強力なバフがかかるんだ。東の砦に行く前に、念のためみんなも入っておいた方が良いと思って。でも、入り方が分からないと思うから俺も一緒に――」


 俺の話を聞きながら、ルーナはシクシクと泣くフリをする。


「酷いよっ! 私は『エノアの裸が見たい』っていう純粋な気持ちでいたのに、エノアにそんな下心があったなんて!」

「どう考えても……ルーナの方が下心……」

「あ、安心したような、少し残念なような……」


 ロマリアとフェリはため息を吐く。


 俺は、浴場に備え付けてあるサウナに鑑定を使った。


【神器級サウナ「12の試練」】

 注意事項:

 ・飲酒後、極度の疲労時、発熱時は利用を控える。

 ・こまめに水分補給をして、脱水症状や熱中症にならないよう注意する。

 ・貴金属類を持ち込まない。

 ・入室時、あらゆる時間制限付きのバフは解除され、装備の効果も無くなる。

(サウナから出たら元に戻る)


 効果:

 ・『整う』一連の流れを1セット繰り返す事に一時的にステータスが上昇する。

(最大で12回まで)

『整う』の流れ。

 5分以上、サウナに入る。

    ↓

 30秒以上、16~24度の水風呂に肩まで浸かる。

    ↓

 5分以上、風に当たってリラックスする。


 ここまでを1セットとする。

 2セット目以降は対象者のサウナの温度が50度ずつ上がり、サウナに中にいる時間が1分ずつ増えていく。


 ――とまぁ、これがサウナのバフを受けるのに必要な工程だ。

 全ステータスが上がるだけあって、食べるだけとは違い手間も時間もかかる。

 2セット目でいきなり50度も上がってしまうので実質的に1回が限界だと思うけど……。


「みんな、水分は十分にとった?」

「さっき、みんなで飲んだから大丈夫……」

「暑いのなんてへっちゃらだよ~!」

「ど、どきどきします……」

「辛くなったら出てね! 無理は禁物!」


 俺はみんなと一緒にサウナの部屋の中へ。


 サウナの扉を開けると、もわっとした温かい蒸気が顔に広がり、自然と体がほぐれていくのを感じる。

 内部は落ち着いた木の香りに満ちており、柔らかな光が壁に埋め込まれたランプからぼんやりと空間を照らしている。

 床や壁、天井にはヒノキの木材が使われており、その淡い木目が見ていて落ち着く。

 座席は段になっていて、木製のベンチは滑らかに磨かれており、どこに座っても快適だ。

 石の壁からほんのり漂う温かみと、木の優しい香りが相まって、心までリラックスさせてくれるようだ。

 そして、座席の前の壁には時計とタイマーが用意されていた。

 これらが電気で動いてるのか、魔力で動いているのかは分からないけど。


(今朝食べた、エラスムスの肉の効果でいくらかの火炎耐性がみんなにあるはずだけど、このサウナの効果で時間制限付きのバフは無効にされている……)


 どうやら、食事バフによるズルはできないみたいだ。

 自分の忍耐力で頑張るしかない。


「それじゃあ、今から始めるよ」


 俺はタイマーを5分に設定して開始した。


 ――――――――――――――

【業務連絡】

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