第54話 ロマリアを変装させよう!

 ――レイナがロマリアを連れて行ってから僅か数分後。


 レイナは自分と同じように胸元を大きく露出させた浴衣を着た青髪の女の子を連れてきた。

 長い髪は綺麗に纏められて雅なかんざしが刺さっている。

 青髪の子は顔を真っ赤にしてモジモジしながら不安そうに俺の顔にチラチラと視線を送る。


 あまりの綺麗さに、俺は思わず見とれてしまう。

 ――いや、でもこの恥ずかしそうな表情と綺麗な瞳は……。


「も、もしかしてロマリア……?」

「「えー!?」」


 ルーナとフェリは驚きの声を上げる。

 そりゃそうだ、俺だって最初は全くの別人だと思ってしまった。

 レイナは得意げに胸を張る。


「わっちのスキルは『遊び人』。髪の色を変えたり、その人の雰囲気を弄ることができるのさ。あんなに控えめだった子が立派な遊女みたいになっただろう?」

「す、すごーい! キラキラしてロマリアだと思わなかった!」

「これがお化粧……ロマリアが都会の女に……」


 凄く雰囲気が変わってしまった……お化粧って凄いんだな。

 というか、ロマリアもルーナもフェリもお化粧しなくても元々これだけ可愛いのってやっぱりおかしいよね……。

 街を歩いていても、通行人がみんな振り返ってたし。


 ロマリアは顔を赤くしながら両手を握る。


「は、恥ずかしいですが……これなら、エノア様のお役に立てますよね!」

「確かにこれならロマリアだって分からないだろうけど……」

「大丈夫さ、ウィシュタル家の者なら遊女を侍らせてる位が自然だよ」

「俺、まだ10歳なんですけど……」


 ロマリアの恰好を見て、俺は考え直す。


「あの、レイナさん。せっかく変装させてもらって申し訳ないのですが、せめて『使用人』の恰好にしてくれませんか?」

「そうかい、もちろん構わないよ。メイド服なんか簡単に手に入るしね。でも、この姿も悪くはないだろう?」


 俺はレイナにだけこっそりと伝える。


「その、胸元を見せたくなくて……砦には男の人も沢山いると思うので……」

「ぷっ、あはは。分かったよ、お嬢ちゃんは幸せ者だね。こんなに大事に思ってくれる人が居て」


 レイラさんはロマリアの浴衣をちゃんとしめなおす。


「使用人の姿にするなら化粧は全部落とさないとね、衣装も持ってくるから少し待ってな」


 それを聞いて、ルーナが元気よく手を上げる。


「あっ、じゃあその間にお風呂に入ろうよ! エノアのログハウスをどっかに建ててさ!」

「確かに、それなら化粧もついでに落とせるね。レイナさん、どこかに広いスペースはありませんか? 家が一軒建てられるくらいの」

「それなら、近くにウチの組の敷地があるよ。丁度良いね、その場所で待ってておくれ。ロマリアのお嬢ちゃんを変装させる道具を持ってきて、馬車を手配するからさ」


 ルーナは意地悪そうな表情で俺の頬を人差し指でつつく。


「エノアも私たちと一緒にお風呂に入っちゃいなよ~。うりうり~」

「そうだね、3人が良いなら一緒に入るよ」

「またまた恥ずかしがっちゃって――って、えぇ!? い、一緒に入るの!? 言った!? 今、そう言った!?」


 俺の返事にフェリとロマリアが目を見開く。


「エノア……今の言葉もう取り消せない……」

「エ、エ、エノア様がお望みでしたら……!」

「あっ、ちょっと待って! 違っ――」


 俺の言葉の意図を説明をさせてもらう前に、俺は両腕を3人にガッシリと掴まれてレイナさんの組の敷地まで連れていかれる。


「ロックさん、ありがとうございました~」

「お、おう……気を付けてな」

「はい、ロックさんもお元気で~……」

「なんだありゃあ……」


 3人の女の子たちに引きずられていく俺を、ロックは冒険者ギルドのカウンターでグラスを磨きながら不思議そうに見送っていた。


 ――――――――――――――

【業務連絡】

 お風呂に入り過ぎじゃないか、と思うのですが、お風呂回はいくらあっても良いと古事記にも書かれていますので、ご了承ください。

 引き続き、よろしくお願いいたします!

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