第50話 えっちな感じになってる!


 ――翌朝。


 昨夜、意識を回復させた俺は朝まで休むと完全に体力が回復した。

 これでキャンプスキルも使えるし、身体も動かせる。


 昨夜のルーナ、ロマリア、フェリの3人の様子はと言うと……。


「ベッドは一つしかないから、仕方がないね♪」

「そ、そうですね! あ、も、もちろん床で寝ろって言われましたら私は床で寝ますのでっ!」

「ダメ……ロマリアも私たちと一緒に寝る……」


 ということで、3人とも俺にピッタリとくっついて寝ていた。

 ずっと看病をしてくれていたロマリアに、俺の為に山の中を走り回ってくれたルーナやフェリもクタクタだったようで朝までぐっすりだ。


 早朝にルーナの大きなお腹の音が鳴って、それで全員目が覚めた。


「あはは、ごめんごめん」


 ルーナが少しだけ恥ずかしそうに頭をかく。


「身体が動かせるようになったから、俺が朝食を作るよ」

「わーい! エノアが倒れてから何も食べてないから腹ペコだよ~!」

「えぇ、どうして!?」

「そりゃー、必死だったもん。食べるのも忘れてたし、エノアが無事なのを見たら安心して眠くなっちゃった。まぁ、私は役立たずだったんだけどさ……」

「私も……ご飯のことなんか忘れてた……」


 どうやら、想像以上に心配をかけてしまっていたらしい。

 

「じゃあ、とりあえずすぐに食べられるモノを作るね」


 俺はそう言って、部屋のテーブルにまな板を出してエラスムスの肉を切る。

「トゥルーカット」のおかげで肉は生のまま食べられるので、せっかくならそのまま食べてみよう。

 これなら腹ペコのみんなを待たせることもないからね。

 俺は鑑定を使いながら、包丁を巧みに動かし、肉を薄くスライスする。

 切り口が美しく光り、肉の表面に細かい霜降りが浮かび上がる。

 自分で作りながら、よだれが出てきそうだ。


 スライスしたドラゴン肉をキャンプスキルの製氷機で作った氷の上に並べ、温度を保ちながら、素材の鮮度を保つ。

 少しだけこだわって、お肉が綺麗に見えるように盛り付けをした。

 添える薬味には、ネギ、本わさびと白胡椒の実、ピンク塩、特製の醤油ベースのタレを準備し、肉の旨味を引き出すための軽い味付けを施す。


「これが、『リブロース』、『サーロイン』、『ヒレ』だよ。メインディッシュが出来るまではこれを食べて待っててね」

「凄い……お肉の形がお花みたい……」

「な、生のお肉って食べられるんですか!?」

「普通はダメだから気を付けてね。俺が作ったのは大丈夫。ルーナには大きいブロック肉を用意したよ、はいこれ」

「わーい! いただきまーす!」


 俺が「トゥルーカット」で切り出した大きな肩ロースの塊を、ルーナはタレも何も付けずにかぶりつく。


「美味し~! これは食べなれてるよ!」

「あはは、ルーナにとっては生肉はいつも通りか」

「ううん! エノアが作ってくれたからいつもよりずっと美味しいよ!」

「ありがとう、良かったらその醤油ダレも付けてみて」


 俺が勧めると、ルーナはお肉に醤油ダレを付けてからパクリと口をつける。


「……! エノア、天才! 凄い凄い!」

「ありがとう、やっぱりお醤油は偉大だね」


 目を輝かせて、ルーナはお肉にかぶりつく。

 醤油が喜ばれると、異世界に来たって感じがするよね。

 その横で、ロマリアとフェリも醤油ダレにお肉を浸して食べ始めた。


「お、美味しいです! お肉が舌の上で溶けてしまいました!」

「凄い……ただの生肉とは違う……」

「ちゃんと部位で分けてるし、切り方も工夫してるからね。ルーナはそのままかぶりついちゃうけど……」

「タレの横に沢山用意してあるのは何なのですか?」

「それは薬味だよ。ちょっとずつ味見していって、気に入ったのをお肉と一緒に食べてみてね」


 俺の言葉を聞いて、ルーナは目を光らせる。


「この黒い液体がすっごく美味しかったから、他のもきっと最高だよね! じゃあ、次はこの緑色のをたっぷり付けて食べよ~!」

「あっ――! ちょっと、ルーナ! それは――」


 俺が制止する前にルーナはその鮮やかな緑色の薬味を山盛りにお肉に載せて食べてしまった。

 そう……天然物の本ワサビを。


「――◎△$♪×¥●&%#?!」


 そして、声にならない声を上げて勢いよく跳び上がる。


「ルーナ様!? 大丈夫ですか!?」

「凄い悲鳴……何て言ってるのか分からないけど……」


 俺は急いでマヨネーズを用意した。


「ほら、これを口に入れて! ツーンとするのが少しはマシになるから!」


 ルーナは慌ててマヨネーズの容器を握り、顔中をマヨネーズまみれにしながら口に含んだ。

 大きく息を吐いて、ルーナは瞳に涙を浮かべる。


「あ~、舌が痛いよ~! それに、ドロドロになっちゃった~」


 瞳を潤ませて顔を真っ赤にし、舌を出しながら白いドロドロが顔中に付いたルーナが俺に泣きつく。


「ワ、ワサビは辛いから気を付けてね……」


 俺は変な想像をしないように邪念を振り払いつつ、濡らしたタオルを手渡した。


――――――――――――――

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