第46話 ルーナさん嫉妬してます?

「これ、しびれ茸のエキスです。ドミニクがまた暴れようとしたら使ってください」


 俺は透明な液体の入った小瓶を裏社会の方の1人の女性に渡す。

 浴衣を着崩したような恰好のその綺麗な女性は瓶に向けて手を伸ばす……

 そして、瓶を持つ腕ごと引っ張って俺を胸元に引き寄せた。


「……信じられないねぇ。こんなに小さな子がドミニクを追い詰めたなんて」

「あの……えっと……」

「坊や、本当に感謝するよ。わっちはルイス組の組長、レイナ・ルイスだ。これで連れ去られた子を取り返す手がかりが掴めた」


 そう言って、レイナは自分の胸元をクイと引いて隙間を開けると小瓶を差し込んで収納する。


(俺と同じ収納スキル……ではないよね、お見事)


 俺はつい、その胸元から目を背けるとルーナが瞳をカッと見開いてこちらをジーっと見ていることに気が付いた。

 何あれ、怖い。


「コイツに連れ去られたのがわっちの娘でね。ちょうど、坊やと同じくらいの年齢なんだ。冒険者ギルド内にいる時は手を出せないし、逃げ足が速いからね、困っていたんだよ」


 ルーナが「なんだ、人妻か……」と呟いてホッとしたようにため息を吐いている。

 いったい、何と戦っているんだ……。


「極道とは無縁の生き方をさせてあげようと自由にさせていたんだけど、逆に正義感の強い子に育ってねぇ……。どうやら、ドミニクの悪事を見過ごせずに突っかかっちまったらしい」


 心配そうな表情で「無事だと良いんだけど……」とレイナは付け加える。


「しかし、東にある見張りの砦か……国にたてつくことになっちまうけど、私は娘を取り戻すためにカチコミをかけるつもりだ」


 それを聞いて、俺はレイナの手を強く握った。


「俺に任せてください! レイナさんの娘、絶対に救い出します!」


 しかし、レイナは驚いた様子で首を横に振る。


「そ、そんなことまではお願いできないよ! 坊やはドミニクを捕らえてくれただけでわっちとしては返しきれねぇ程の恩人なんだ!」

「俺は元々、他の仲間を助けるために東の砦に乗り込むつもりなんです。俺は無所属で身軽ですから、大丈夫です。いざとなったらキャンプをしながら山暮らしもできます」


 国家にたてついてしまった裏社会の人間が生きていくのは難しいだろう。

 せっかく再会できても、一家離散なんて事もあり得る……。

 ならば、俺が行くべきだ。

 それに、俺は元ウィシュタル家の人間。

 この件は、俺の手で片をつけるべきだろう。


 レイナは散々困ったような表情で考え込むと、ため息を吐く。


「坊やみたいな小さい子に頼るのは心苦しいけど……本当にいいのかい?」

「もちろんです!」

「こりゃ、頭が上がらないね。わっちに出来ることなら何でも協力するから、言っておくれ」

「あ、頭は下げないでください! その……危ないので……!」


 俺は自分の顔を両手で覆って、レイナがお辞儀をするのを止める。

 そんなにはだけた浴衣で屈んじゃダメですよ……!


 レイナは袖で口元を覆ってクスクスと笑う。


「あらあら、お可愛いことで」

「――もうお話は済みましたか?」


 なぜか敬語のルーナが満面の笑みで俺の腕を掴んでいた。

 掴む力が強くて、少しだけ痛い……。


 ――――――――――――――

【業務連絡】

 ハッピーハロウィン!!

 本日、『ギルド追放された雑用係の下剋上』(漫画50話)の更新日です!

 最新話はニコニコ漫画で読めますので、もしよろしければ読みに行ってみてください~!


 作品のフォロー&☆3つ評価がやる気に繋がります!

 引き続き、よろしくお願いいたします!

 <(_ _)>ペコッ

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