第45話 復讐完了!

 急に態度を豹変させたドミニクに対して俺はため息を吐く。


「ロマリアに謝れ、誠心誠意な。話はそれからだ」


 俺の言葉を聞き、ドミニクは手足が縛られた状態のままロマリアに向けて頭を下げた。


「あ、謝る! お前にしたことは全て! そ、そうだ! 俺はアランに言われてやってたんだ! 本当は傷つけたくなんてなかったんだよ!」


 ……この後に及んでも保身の為の嘘か。

 俺は呆れ返る。

 ロマリアは瞳に涙を浮かべてドミニクに強い口調で言った。


「ダ、ダメ……です! 許せません! それに、貴方はエノア様を傷つけようとしました!」


 俺はあらかじめ、ロマリアに『決してドミニクを許さないよう』にお願いしておいた。


 ロマリアは優しいから自分がどんなに酷い事をされようが許してしまうかもしれないけれど、コイツがロマリアにしたことは絶対に許せない。

 ロマリアは『俺を傷つけようとしたことを許さない』って付け加えてるけど……まぁ、それもロマリアらしくて良いか。


 ロッドは太い腕を組む。


「そういう訳だ、大人しく借金取りの皆さんと一緒に行くんだな」


 すると、ドミニクはニヤリと笑った。


「はっ、馬鹿が! どうして借金取り達が俺を捕らえに来なかったと思う? 俺のことが捕まえられないからだ! スキル、『縄抜け』!」


 スキルを発動した瞬間、ドミニクを拘束していた手足のロープが外れた。

 そして、窓のそばに跳びのく。


「俺が観念したと思って、隙を見せたな! あばよ、俺のスキルは『盗賊』だ。このままテメーらを撒いて逃げるなんざヨユーで――」


 勝ち誇った表情で雄弁に語る途中で、ドミニクは急に両膝を床につけた。

 まるで、糸が切られた操り人形のように。


「……は? なんだ、何かおかしいぞ……力が入らねぇ……」

「すげぇな、本当に効いてるぞ。エノア」


 俺はリュックからキノコを出す。

 山菜取りの途中で見つけて鑑定した毒キノコだ。


【痺れ茸】

概要:

 身体の筋肉を弛緩させる毒素を持っているキノコ。

 茹でてから冷やして、もう一度茹でると成分がお湯にしみ出す。


「ドミニク、お前が寝てる間に口の中にコレのエキスを入れさせてもらった。しばらく身体は動かせないよ。意識はハッキリしてるだろうけど」


「く、くそっ! 待て、分かった! 金は働いて返す! 絶対に逃げたりしねぇ!」

「大した説得力だな。だが、今の一部始終をゲストの皆様方は見ていたようだぜ?」


 いつの間にか、ロッドの後ろには明らかに堅気ではない雰囲気の方々が集まっていた。

 その中の一人が、ロッドの耳元でボソボソと伝える。


「良かったな。ドミニク、お前が心配しなくてもどうやら借金を返せるそうだ」

「ど、どうやって……俺に何をさせるつもりだ……!?」


 ドミニクの顔色はみるみるうちに青く変色していく。


「それはお前の方が詳しいんじゃないか? ましてやお前は不幸な事にだからな。『殺して下さい』と懇願するようになってからが本番らしいぞ」

「ま、待て……! 俺はテメーらとは違って、D級冒険者で――むごご!」


 ロッドの後ろに居た人間の一人が慣れた様子で手早くドミニクに鉄製の口枷を着ける。


「ドミニク、今のはお前が自分で舌を噛み切れる最後のチャンスだったんだが……最後まで自分の小せぇプライドを誇示するだけだったか」


 ドミニクは身体を抑えつけられると、別の人が先端が赤く焼けた鉄の棒を取り出した。

 俺は即座にロマリアの目と耳を、そしてルーナはフェリの目と耳を塞ぐ。


 ドミニクの肩にその鉄の棒が押し付けられた――。


「ン"ン"ン"ン――!!?」


 焼き印を入れられ、くぐむった声でドミニクは白目をむいて絶叫する。

 口枷の隙間から血が流れ、失禁していた。


 俺は目を背けてはいけないと思った。

 ロマリアも、これと同じ痛みを受け続けてきたはずだから。


――――――――――――――

【業務連絡】

 ほのぼのスローライフは……どこ?

 投稿遅れてすみません、引き続き頑張ります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る