第44話 徹底的な復讐を!


「うん……? 俺はいったい……つっ!? なんだ、顔が痛ぇ!」


 数分後、ドミニクが目を覚ました。

 逃げ出せないよう、手足はロッドがロープで縛っている。


「あれだけキツい一撃を食らったのにもうお目覚めか、流石はD級冒険者だ」


 そう言いながら、ロッドがドミニクの胸ぐらを掴んで上体を起こす。

 周囲は俺とルーナたちが取り囲んでいる。

 ロッドはドミニクに告げた。


「お前の負けだ、ドミニク。無様な姿だったぜ?」

「……は? そうだ、俺はそのガキと決闘をして……。俺が負けた……だと?」

「あぁ、一撃でな。さて、約束はしっかりと守ってもらう。エノア」


 俺はドミニクに問う。


「ドミニク、ウィシュタル家が奴隷を囲っている場所はどこだ? お前がロマリアに酷い事をした場所だ」


 俺の質問を聞いて、ドミニクはへらへらとした様子で語った。


「あぁ、そんな事か。別に教えてやっても良いぜ? この国から東に9キロほど行った砦の中だ」


 ロッドはあごに手を添えて考える。


「東の砦……見張りの関所がある場所だな。一般人は入れない場所だが」

「ウィシュタル家が見張りの兵士に金を渡してるのさ。国王様があんな場所にわざわざ行くこともねぇからな。バレねぇって訳さ」

「ロマリアもそこに連れて行かれてたのか……」

「商品としての価値が無くなった奴隷はエラスムス霊山に廃棄されるらしいぜ。お前も廃棄寸前くらいボロボロだったのに、こんなにイケたツラしてるって知ってたらもっと使ってやってたのによ」


 ドミニクはゲラゲラと笑う。


「ハッ、何怖い顔してんだよ? 奴隷を使うのは特に問題ねぇだろ?」


 ドミニクは挑発でもするかのようにロッドに笑いかける。


「確かに、奴隷の使用を取り締まる規則はウチにはねぇな」

「だったら、さっさと俺を解放――」

「しかし、ドミニク。奴隷で遊ぶってのは大金がかかるんだろ? その上、お前は最近大した依頼もこなしてねぇ。今回の決闘みたいに後先考えないお前のことだ、金はどっかから借金でもしたんじゃねぇのか?」


 ロッドの問いかけに、ドミニクは不機嫌そうな表情に変わった。


「テメェには関係ねぇだろうが。それに、依頼ならこれからこなしていけば良い。……そうだ、エラスムス霊山のドラゴン討伐の依頼があっただろ? あれさえ達成すりゃ全て返せる」


 ロッドは首を横に振る。


「お前なんかじゃドラゴンは倒せねぇよ。それで、親切な俺はお前が気絶している間にちょっと裏社会の金貸し達に連絡を入れてやったんだ『今、ウチでドミニクが大人しくしてるんだが遊びに来ないか?』ってな。お前も金を返しに行く手間が省けて良いだろ?」


「――は? 何を勝手な事してやがる」


「そしたら、お前に会いてえってお友達がわんさか集まって来てよ。隣の部屋で仲良く待機してるぜ? どうやら気が合うみてぇでよ、お前をどうするか楽しそうに話してた」


 ドミニクは少し顔色が悪くなりながらも反論する。


「おいおい、ギルドマスターがこんなことして良いのか? 冒険者っていうのは半グレばかりだぜ? こんな事が知られたらみんなお前のギルドから去っちまうぞ?」


「あぁ、だからエノアの決闘に一枚噛ませてもらった。お前、全員の前で宣言しただろうが、『負けたら何でも言うことを聞いてやる』ってよ。つまり、お前がどうなろうがエノアとの決闘の結果だと冒険者たちは納得するのさ」


「お、俺が証言してやるよ! お前は最低のギルドマスターだってな!」


 ロッドはため息を吐く。


「お前がもうシャバに出てこれる事はねぇよ。お前、ウィシュタル家に子供を売ったろ? それが、誰の子かも知らずによ」


「――は? ま、まさか……」


「裏社会の人間は裏の仁義を通す。当然お前は奴隷なんか以上の苦しみを与えられるだろうな」


「おい……おいおいおい、ふ、ふざけんな! なぁ、ガキ――エノア! コイツ勝手なこと言ってるぜ! 助けてくれよ!」


 明らかに余裕が無くなった表情のドミニクが俺に助けを求めてきた。


 ――――――――――――――

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